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河村尚子の成熟への道 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.3@紀尾井ホール 2019.4.25

軽い気持ちで聴き始めた河村尚子が弾くピアノ・ソナタ・プロジェクトですが、1回目は“疾走”、2回目は“パトス”と毎回、驚嘆する演奏が続きます。今回はいよいよ、後期のソナタにさしかかります。しかも難しいプログラムです。で、今回も驚嘆しました。それほど気合いを入れずに聴きに行きましたが、ええっ!こんなにうまくなったのか!と絶句です。とりわけ、後半に弾いた第29番 変ロ長調 Op. 106「ハンマークラヴィーア」の第3楽章の中間以降の成熟した演奏の深みのある表現、さらに第4楽章の圧倒的な迫力に脱帽です。実はベートーヴェンのピアノ・ソナタの中では、この「ハンマークラヴィーア」はsaraiの苦手の曲ですが、今日はこの大作の素晴らしさを初めて体感させてくるような最高の演奏でした。後期の3曲とも比肩できる内容に思える素晴らしさを味わわせてもらいました。

前半の2曲もとても美しい演奏でした。ですが、これは想定内の演奏。既に彼女なら、これくらいは弾くだろうと思っていたレベルの演奏。もちろん、これほどの演奏は相当の弾き込みを要したことは想像できます。文句ない演奏でした。ある意味、ロマンを感じさせる繊細な演奏でした。

後半は前半の2曲とは一変して、冒頭から、鍵盤を叩きつけるような凄まじい演奏。大変、気魄に満ちた演奏。ミスを恐れない突っ込んだ演奏ですが、それでいて、ミスがない凄い演奏です。長大な第1楽章もあっという間に終わります。短い第2楽章も切れの良い演奏です。そして、少し間を空けて、第3楽章の静謐な演奏が始まります。緊張して聴いていると、中間あたりで突如、何とも言えない高揚感に満ちた美しい表情の音楽が始まります。まさにベートーヴェンの後期特有の味わい深い表情の音楽です。河村尚子の成熟ぶりがまざまざと感じられます。誰がこれほどの高みに上り詰めた演奏ができるでしょう。哀切極まりない極上の音楽です。美の世界を味わい尽くせました。
第4楽章は徹底して対位法にこだわった音楽ですが、河村尚子はスケール感のある切れのよい演奏で弾きこなしていきます。そして、コーダの和音がピタッとはまって、最高のしめくくり。後期のソナタ群に共通するフーガの幕開きを高らかに告げるかのような圧倒的な演奏でした。

11月のこのシリーズの4回目、ラストの後期の大傑作の3曲は途轍もない演奏になる予感がします。後期のピアノ・ソナタと言えば、日本人ピアニストでは田部京子という大天才が素晴らしい演奏を聴かせてくれていますが、河村尚子も肉薄した演奏を聴かせてくれそうです。

先走って言えば、河村尚子がここまでのベートーヴェンのピアノ・ソナタを弾いた以上、次は、シューベルト、シューマン、ブラームスというドイツ本流のピアノ作品をチクルスで挑戦してもらいたいものです。田部京子のシューベルト・プラスに続け!!

今日のプログラムは以下です。

  <オール・ベートーヴェン・プログラム>

  ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 Op. 81a「告別」
  ピアノ・ソナタ 第27番 ホ短調 Op. 90

   《休憩》

  ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 Op. 106「ハンマークラヴィーア」

   《アンコール》

    ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 Op. 81a「告別」より、第3楽章


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

 エミール・ギレリス 
  ピアノ・ソナタ 第26番「告別」 1974年12月 ベルリン セッション録音
  ピアノ・ソナタ 第27番 1974年12月 ベルリン セッション録音
  ピアノ・ソナタ 第29番「ハンマークラヴィーア」 1982年10月 ベルリン セッション録音

予習ではありますが、このところ、エミール・ギレリスの演奏を名演鑑賞会として聴いています。透明感のある美しい響きと見事なテクニックの演奏にはほれぼれと聴き入ってしまいます。もちろん、アラウのベートーヴェンも大好きなので、第27番だけは比較して聴いてみました。アラウの重厚な響きもドイツ的な感性を感じさせる見事な演奏ですが、ギレリスの演奏はどの曲も安定感があります。ギレリスが標準の定番で、アラウはその至芸を楽しめる曲では最高という感じでしょうか。もちろん、録音も含めるとアンドラーシュ・シフの演奏がそれに割ってはいります。いやいや、そんなに限定できませんね。ポリーニ、ケンプ、ゼルキン、グルダ、リヒテル、ホロヴィッツ、ソロモン、イーヴ・ナット等々、見事な演奏が目白押しです。とても全部はなかなか聴けません。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       河村尚子,

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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