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写楽展(前編)@東京国立博物館 2011.5.18

昨日は上野の東京文化会館で都響の定期演奏会でしたが、どうせ上野に行くのなら、上野で開催中の美術展でもみようかと思い、東京国立博物館の写楽展に行くことにしました。ところが開催時間が17時までなので、急いで家を飛び出しました。上野駅には16時過ぎに着きましたが上野公園を抜けていくと、現在、大噴水のあたりが大工事中でぐっと遠回りになり、結構時間がかかります。まずは入口で写楽展のチケットを購入。二人で三千円とは高いですね。


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東京国立博物館の敷地内にはいっても平成館は奥のほうにあります。


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で、入館したら16時20分くらい。もう閉館まで40分ほど。お蔭でまあまあ空いてはいましたが、それでも人気らしく、どの絵の前にも人が張りついています。
はいるとまずはプロローグというコーナーで代表的な写楽作品がピックアップされています。見たことのあるものもそうでないものもありますが、写楽の作品は特徴的ですから、見応えあります。ここはいくつかピックアップされているだけですが、それでも写楽をこれだけまとめて見る機会も初めてです。ゆっくり鑑賞したいところですが、閉館時間も迫っているので、さっと見ながら、次のコーナーへ。
次は「写楽以前の役者絵」のコーナーです。このあたりはあまりピンとくる作品はありません。北斎すらも先程の写楽に比べると少なくとも役者絵ではインパクトに欠けます。もっともじっくりと見る時間がなかったので、ちらっと見た印象に過ぎません。
次は「写楽を生み出した蔦屋重三郎」のコーナーです。ここには喜多川歌麿の美人画がずらっと並んでいます。役者絵とは関係ありませんが、さすがに歌麿の美人画には魅了されます。写楽の大首絵とは違い、狭い版画の画面に女性の全身像が描かれていますが、簡略な表現の顔でさえ、そのモデルの魅力・個性が十分に描き込まれていて、その画力の素晴らしさに感嘆します。10枚程度ですが、それだけでも大変な迫力です。フランス印象派に影響を与えたのもうなづけます。デフォルメと細密表現のバランスの素晴らしさには脱帽です。写楽展とはいえ、蔦屋つながりで歌麿まで見せてもらい、嬉しい誤算です。
次は「写楽とライバルたち」のコーナーです。同じ役者ごとに写楽と他の作者の作品を並べ、比較できるようになっています。ライバルたちといっても、基本的には対抗馬は歌川豊国です。写楽は約10カ月間の制作期間を第1期から第4期までに分類されます。特に第1期は大首絵という画面いっぱいに役者の顔を描いた作品が多く、迫力満点です。豊国は一貫して全身像を細密に表現しており、これも見事な役者絵です。ただ、並べて比べると、版画の画面の狭さもあって、思いっきり個性的に描いた写楽の大首絵の迫力は素晴らしいものがあります。じっくり見ると豊国の全身像も構図や細かい表現など、とても素晴らしいのですが、写楽には何といっても勢いがあります。新しいスターという感じですね。写楽も第2期以降は全身像がほとんどになり、やや勢いに欠けるところもあり、そのあたりになると、豊国の画面構成力に比べて、なかなか微妙なところです。
続いて、版の違いの展示があり、写楽の同じ版画を別の版で2枚並べて違いを見るというコーナーもあり、なかなか興味深いです。もちろん、版によって、色ずれや色の違いもありますが、素人目には、出来の悪い版であったにせよ、写楽は写楽。その芸術的価値が落ちるとは思えませんでした。西洋画の世界でも保存状態によって、絵が鑑賞しづらいことはあっても決して芸術的価値が下がることはないのと同じことに思えます。
これで前半が終わり、以降、後半は「写楽の全貌」という、この展示会のメインというところになります。
写楽の第1期から第4期まで、全作品(4点を除いて)を一挙に公開です。これは凄い企画ですね。版画だからできた企画でしょうが、以前の雪舟展と同様に滅多に見られるものではありません。
さて、第1期から見ていきましょう。デビューを飾った大首絵の28枚です。いずれも傑作揃いです。ある意味、デビュー仕立ての絵師の怖いもの知らずの勢いがあります。絵を描く技術以前に奔放なマインドが素晴らしい。なかでも代表的な7枚を見ていきましょう。

三代目坂田半五郎の藤川水右衛門です。


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三代目沢村宗十郎の大岸蔵人です。


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三代目瀬川菊之丞の田辺文蔵女房おしづです。


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四代目松本幸四郎の山谷の肴屋五郎兵衛です。


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初代市川男女蔵の奴一平です。


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三代目大谷鬼次の江戸兵衛です。


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市川蝦蔵の竹村定之進です。


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どうです。これぞ、写楽って感じですね。個性的ではありますが、芸術的完成度の高さにも驚きます。
役者の演じる役どころだけでなく、生の人間が見え隠れしています。これ以上、何を描けるのか?
それが第2期以降の課題です。
第2期は大首絵はほとんどなくなり、全身像が中心です。写楽らしさもありますが、固い表現のものも多くなっています。それでも柔らかい曲線で素晴らしい構図のものもあります。過渡期という感じですね。
第3期は全身像の素晴らしい表現のものとなっています。絵を描く技術も大幅にアップしています。ただ、上手過ぎて、第1期のような勢いがなりを潜めたことも事実です。作品群の質は高く評価すべきでしょう。
第4期は・・・・。方向感を失った感じでしょうか。本当はここから真の芸術を目指していくべきところだったのではと思わざるを得ません。この先、写楽がどう芸術家として進んでいったのか、見たかったのはsaraiだけではないでしょう。
10カ月というのは芸術家の活動期間としてはあまりに短過ぎましたね。

次の記事に続く・・・



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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07/08 15:53 じじい@

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久々のコメント、ありがとうございます。
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06/18 12:46 sarai

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