デュッセルドルフK20州立美術舘:エルンストのシュールな作品群、そして、ミロ、クレーの超傑作
デュッセルドルフDüsseldorfのK20州立美術舘K20, Kunstsammlung Nordrhein-Westfalenで20世紀の名画を鑑賞中です。
マックス・エルンストの《愚か者》です。1961年、エルンスト70歳頃に制作された作品です。エルンストは老境に至ってもユーモラスな彫刻作品を創り続けます。作品の意図は己に向けたものか、世間に向けたものか、それともいずれにも該当するのか。何となく、同じ年齢層に達したsaraiには、その屈折したアーティストの気持ちが分かるような気がします。少し、エルンストへの尊敬の念が沸き起こる感じです。

ジョアン・ミロの《夜の女たちと鳥たち》です。1945年、ミロ52歳頃に描かれた作品です。白い背景の上に何とも楽し気な光景が描かれています。ミロの傑作の一枚です。

マックス・エルンストの《愛のカルマニョール》です。1926年、エルンスト35歳頃に描かれた作品です。カルマニョールと言うのは、フランドル風にギャロップで踊られる輪舞のことです。フランス革命 (1789年) のとき,バスティーユが陥落した際にパリで踊られた事実が知られています。黒い男と白い女が踊り狂う様子が表現主義風に描かれています。

マックス・エルンストの《最初の明確な言葉》です。1923年、エルンスト32歳頃に描かれた作品です。シュールレアリスムの作品です。女性の手が右の窓の開口部から手を差し伸べています。彼女は2本の交差した指の間に赤いボールをつまんでいるので、滑り落ちる恐れがあります。ボール自体は、壁の2本の釘の上を通り、壁の左端にある狭い壁の部分から細い「絹」の糸にぶら下がっています。このバッタのような生き物は、手のちょっとの緩みのせいで、指を開いてボールを落とすと、それがバッタを引き裂くことになります。明解なシーンですが、実にシュールです。

マックス・エルンストの《エディプス I》です。1934年、エルンスト43歳頃に制作された作品です。父親を殺し母親と結婚したギリシア神話のエディプス (オイディプス) 王をテーマにしていますが、そんなに深刻なイメージの作品ではありません。むしろ、エディプス・コンプレックスという
精神分析の用語をイメージした、男子が母親に性愛感情をいだき,父親に嫉妬する無意識の葛藤感情を想起させます。あくまでも無邪気なユーモラスな性格の彫像です。

パウル・クレーの再登場です。《黒い領主schwarzer Fürst》です。1927年、クレー48歳頃に描かれた作品です。邪悪な王様(ヒットラー?)を描いたものかもしれませんが、あまりに芸術的に昇華した傑作になっています。漆黒の表現がとても美しいですね。

マックス・エルンストの《揺らぐ女》です。1923年、エルンスト32歳頃に描かれた作品です。シュールレアリスムの作品ですが、表現主義的な傾向もあります。「揺れる女」は人間とオートマトンの間の存在として描かれています。超現実の世界でのみ、存在できる自由な半人間の形態です。おぞましくもあり、超越的でもあります。

マックス・エルンストの《我々の後の母性》です。1927年、エルンスト36歳頃に描かれた作品です。エルンストにとって、芸術創作の初期から、鳥は重要な要素でした。この作品では、鳥と人間の遷移状態、すなわち、鳥人間(ロップロップLoplop)が幻想的な画面に描かれています。これも彼のシュールレアリスムの世界です。鳥人間が抱く子供の姿はある意味、聖母子に通じるのでしょうが、ファンタジックともグロテスクとも言えます。世界が病んでいるのか、画家自身が病んでいるのか、捉えがたい世界です。

K20州立美術館の20世紀美術コレクションでエルンストも重要な存在です。何故ならば、彼もナチスに退廃芸術の烙印を押され、辛酸を味わったからです。退廃芸術のすべからくがこの美術館ではレゾン・デートルの位置を占めます。過去の清算なしには未来がないからです。また、クレーの1点が登場しましたが、いよいよ、クレーの傑作群が最後の輝きを放ちます。ご期待作品ですが、
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