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デュッセルドルフK20州立美術舘:エルンスト、ダリ、デュビュッフェ、ジャコメッティ、フォンタナ、そして、最後はピカソ

2018年8月14日火曜日@デュッセルドルフ/13回目

デュッセルドルフDüsseldorfのK20州立美術舘K20, Kunstsammlung Nordrhein-Westfalenで20世紀の名画を鑑賞中です。

この美術館の主役であるパウル・クレーの晩年を代表する作品たっぷりと堪能させてもらいました。では、最後の20世紀美術を楽しませてもらいましょう。


マックス・エルンストの《穀物の芽のある風景》です。1936年、エルンスト45歳頃に描かれた作品です。これは風景画として描かれていますが、もちろん、具象的な風景ではなく、シュールレアリスムの風景が描かれています。風景は目の前に広がっており、同時に極端なクローズアップビューでの風景になっています。澄んだ空の前で、そのシルエットはなだらかな斜面とそびえ立つ峰で広がっています。それらの地球の形成物、渦巻く層は、解剖用ナイフによってまるで露出されたかのごとく描き出されています。対角線上に置かれているのは、1920年代初頭からマックス・エルンストが絵に描いてきたバッタのような生き物の1つです。昆虫の四肢の1つから、人間の手が成長します。動物から人間へ、人間から植物へ、植物から動物へのこの流れの変化は、画面の至る所で観察することができます。画面の最下層はすべての発芽の繁殖地であるようです。この風景画では、なじみのない、予期せぬ存在、植物やフォルムが変容することでエルンストの内面に形成されている形而上の風景を画面上に露わにしています。

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サルバドール・ダリの《擬人化された引き出しのあるチェスト》です。1936年、ダリ32歳頃に描かれた作品です。女性の胸は引き出しの開かれたタンスになっていて、彼女自身の内面をさらけだそうとでもしているようです。一方、この作品はまるで過去の時代の大画家の額縁に収められている絵画のような体裁を為しており、実際に描かれた画面とのギャップが際立っています。この作品は次に展示されている彫刻作品と対をなしています。

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サルバドール・ダリの《引き出しのあるミロのヴィーナス》です。1936年、ダリ32歳頃に制作された作品です。無論、ルーヴル美術館にあるギリシャ彫刻《ミロのヴィーナス》を元にした作品です。胸や腹部にある引き出しは開けられそうになっており、ミロのヴィーナスの内面の秘密が暴露されようとでもしているかのごとくです。シュールな作品ですが、よく考えてみると、ダリのロマンティシズムも吐露していますね。

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ジャン・デュビュッフェの《ジャズバンド・ブラック・シカゴ》です。1944年、デュビュッフェ43歳頃に描かれた作品です。デュビュッフェはある意味、異端の芸術家です。ルネッサンス以降の美しい芸術(Beaux-Arts)に対して反文化的ともいえる、精神の深淵の衝動が生のままでむき出しに表出されているアール・ブリュット(生の芸術)を提唱しました。その芸術はアンフォルメル(非定形の意味。1950年代に盛んになった前衛美術運動)を基礎としています。
この作品は、まるで子供がジャズバンドのメンバーの姿を幼稚に描き出したかのように描かれています。美のイメージを表出しようとする従来の美術の歴史から逸脱しようとした作品です。人が根源的にモノを描きたいという衝動こそが絵画の原点であると訴えているようです。

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ジャン・デュビュッフェの《晴れた日曜日》です。1947年、デュビュッフェ46歳頃に描かれた作品です。1947年の冬以来、デュビュッフェはサハラ砂漠のオアシスを頻繁に訪れました。彼の外国文化の集中的な研究の期間は2年以上かかりました。サハラ砂漠の風景は彼に空間の新しい感覚を与えました。その結果、この作品では、感覚的な経験による素朴で子供のような要素が、原始的で、非常識な、または芸術のない壁の落書きの表現と組み合わされています。このようにして、デュビュッフェは彼の芸術に、オリジナルの、洗練されていない、そして自発的の広い要素を取り入れました。これらの要素は彼の手の下で日曜日の詩的な魅惑的な描写に変容します。

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アルベルト・ジャコメッティの《立つ裸婦》です。1958年、ジャコメッティ57歳頃に描かれた作品です。ジャコメッティはシュールレアリスムの作家として出発しましたが、第2次世界大戦後は針金のような細い人体彫刻の作品を多く制作します。サルトルはこれを実存的芸術と評しました。この作品でも、ブラシのストロークの下に厳格な軸で正面を向く50代後半の女性の肖像画は実存主義的と評されるものの系列に含まれるものでしょう。女性の凝縮した姿が実存の強い意志を示しているかのごとく、印象的です。

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ジャン・デュビュッフェの《ルネ・ドルーアン:開いた手》です。1946年、デュビュッフェ67歳頃に描かれた作品です。ルネ・ドルーアンRené Drouinは、絵を売りたくないというデュビュッフェを説得して、初めて彼の画廊で1944年10月20日から約1か月「ジャン・デュビュッフェの絵画とデッサン」展を開催した画廊経営者です。その結果、数日で展示された全作品が完売しました。この作品はその2年後にルネ・ドルーアンをモデルに描かれた作品です。デュビュッフェを受け入れてくれたドルーアンの受容的な姿を描いたのでしょうか。

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ジャン・デュビュッフェの《鉄の風景》です。1952年、デュビュッフェ73歳頃に描かれた作品です。風景は常にデュビュッフェを魅了してきました。大きなパネルの上に厚塗りのこげ茶色の大地は高く盛り上がっていて、白っぽい天国の色調に保たれたもっと小さいゾーンと織り交ぜられています。もちろん、この風景はデュビュッフェの内面に存在する架空の風景です。これも創造への精神的な衝動によって作られた、従来型の美を拒否する作品と言えるでしょう。

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ルーチョ・フォンタナの《空間概念 期待》です。1965年、フォンタナ66歳頃に描かれた作品です。イタリアを代表する前衛芸術家、ルチオ・フォンタナの作品です。実は一色に塗られたキャンバスに切れ目を開けた作品は1000点近く制作され、いずれも《空間概念 期待》という同じ題名が付けられています。作品は従来の絵画の限界を突き破り、画面の世界に切れ目を開けることで、閉鎖された絵画平面から、切れ目を通じて、宇宙空間につながることを《期待》するという画家のコンセプトに基づいています。切れ目こそが画家の《期待》なのです。鑑賞する者も切れ目から無限の宇宙への飛躍を念じましょう。

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この美術館の常設展示の最後はパブロ・ピカソの《座る裸婦》です。1933年、ピカソ52歳頃に描かれた作品です。シュルレアリスムの時代に描かれた作品です。キュビズムの面影も残しています。モデルは当時の愛人のマリー・テレーズ・ワルテルでしょうか。まるで妊娠しているように丸みを帯びていますが、マリー・テレーズ・ワルテルが妊娠するのは2年後の1935年です。むしろ、聖母子像と捉えたほうがいいのでしょうか。

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これで遂にK20州立美術館の常設展示を見終わりました。結局、1時間ほどで鑑賞できました。久しぶりに充実した素晴らしい美術館です。クレーの膨大なコレクションを始め、ベックマン、キルヒナー、マルク、カンディンスキーなどの、ナチスご指定の退廃芸術作品もずらっと並んでいます。これは敗戦後のドイツ人の良心の証しとして、再収集された作品だそうです。ドイツは戦後、色んな意味でみそぎをしてきました。同じ敗戦国として、ドイツを見習うべきことが多いと思っていますが、必ずしも日本がそういう方向に向かっているように思えないのはとても残念だと常々、感じています。
ともあれ、この美術館にはsaraiと配偶者には、とても美味しい作品ばかりが並んでいます。これほど質の高い作品を所蔵する美術館を見たのはアムステルダムの市立美術館以来です。大変、感銘を受ける作品ばかりでした。
さて、美術館の1階ロビーに下りましょう。そこでも何か特別展をやっているようです。



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ジャンル : 海外情報

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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