美しきヴィニツカヤの飛翔・・・リットン&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.5.28
後半のプログラムのチャイコフスキーはなかなか微妙なところ。問題は第1楽章。久しぶりに聴く都響のアンサンブルは以前にも増して、素晴らしい響きです。今日の都響は2枚看板のコンサートマスターの四方恭子と矢部達哉のダブルコンマスですからね。弦が素晴らしいのは当然として、今日は金管が絶好調で鳴り響いています。日本のオーケストラでこれほどの金管の響きを聴いた覚えがないほどです。じゃあ、素晴らしい音楽だったかと言うと、そこが問題。チャイコフスキーの音楽のロシアの憂愁、すなわち、やるせなさが感じられません。それにこの曲ではマーラー的な複数声部が有機的に絡み合った重層的な構造の音楽が聴きたいところですが、各声部は美しくても有機的な結合はあまり感じられません。これって、予習で聴いた天下の大名演とも言えるバーンスタイン指揮の演奏が凄過ぎて、それが耳に残っているせいかもしれませんけどね。それにしても、今日の演奏を聴いて、それは違うだろうと頭のどこかがささやき続けています。繰り返して言いますが、今日の演奏はとても美しかったんです。その上で何かが違うんです。ところが、第2楽章にはいり、楽章の後半になると、音楽が頭にすっとはいってくるようになります。うーん、心に感じるものがあります。なかなか素晴らしいのではないかと感じ方が変わってきます。第3楽章は文句なしに弦のピチカートが素晴らしくて、ますます、音楽的な調和に満ちてきます。第4楽章、これは素晴らしい。冒頭の爆発的な祝祭音楽が響き渡り、なかなかの高揚感です。素晴らしい演奏に聴き入っているうちに、やがて、コーダに突入します。凄い突進力です。アンサンブルも見事で最高の響きです。コーダの最後でぐっと一段テンポを上げて、白熱のフィナーレ。凄い高揚感ですが、やはり、第1楽章のことが頭から離れず、微妙な満足感。終わりよければ、すべて良しの気分には正直なれませんでした。それでも久しぶりに聴いた都響の素晴らしい合奏力には脱帽です。指揮者次第ではやはり、日本最強のオーケストラかもしれませんね。アンドリュー・リットンの指揮もよかったのですが、あのバーンスタインのスコアの深い読み方と比べてしまうと、厳しいところがあります。
今日のプログラムは以下です。
指揮:アンドリュー・リットン
ピアノ:アンナ・ヴィニツカヤ
管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:四方恭子
バーバー:管弦楽のためのエッセイ第2番 Op.17
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26
《アンコール》 チャイコフスキー: 「四季」より、3月 ひばりの歌 アンダンティーノ・エスプレッシーヴォ ト短調
《休憩》
チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 Op.36
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のバーバーの管弦楽のためのエッセイ第2番を予習したCDは以下です。
マリン・オールソップ指揮ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 2004年
女性指揮者のマリン・オールソップの演奏は初めて聴きましたが、バーバーのあまり演奏されない曲を集めたCDアルバムは貴重であるばかりでなく、美しい演奏を聴かせてくれます。
2曲目のプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を予習したCDは以下です。
ミハイル・プレトニョフ、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団 2002年9月 モスクワ、国立音楽院大ホール
プレトニョフにとって、ドイツ・グラモフォンへの初めての協奏曲録音となったアルバムですが、プレトニョフは落ち着いた演奏で実に知的なアプローチをしています。このスリリングな曲にしては、ちょっと物足りないところもあります。
3曲目のチャイコフスキーの交響曲第4番を予習したDVDは以下です。
レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル 1975年4月22~24日、エイヴリー・フィッシャー・ホール(リンカーン・センター) ライヴ収録 DVD
バーンスタインはチャイコフスキーを若い頃から得意としていて、晩年の録音もあります。このDVDを見ると、まだ若々しいバーンスタインの姿で、実に熱い指揮です。まるでマーラーを振っているような感じです。演奏はこれがチャイコフスキーの交響曲第4番の真の姿と思わせるような深い解釈のもと、ニューヨーク・フィルを鼓舞しながら、最高の演奏を聴かせてくれます。これこそ、天下の大名演と言えるでしょう。saraiは子供の頃からバーンスタインのファンでしたが、またまた、バーンスタインに魅了されました。これから、バーンスタインの演奏をまた聴いてみたくなりました。
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