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庄司紗矢香の妙なる響きに感動・・・ペンデレツキ&東京都交響楽団@サントリーホール 2019.6.25

庄司紗矢香が表現するペンデレツキの音楽の世界。とても素晴らしいです。作曲者自身が指揮している目の前で堂々と心のありったけをぶつけるような演奏を繰り広げる姿は感動的です。日本人には難しかった自己表現が見事に実現しています。譜面を置いての演奏でしたが、この作品を完璧に自己の音楽として表現しきっていることは見て取れました。作品との程よい距離を持ったバランスのよい演奏でした。よい意味で無機的な雰囲気もあり、抒情的な一面も捉えて、あるときは熱い推進力もあるという、実に多彩な表現です。考え抜いた結果なのでしょう。美しいヴァイオリンの響きをベースにしていましたが、あまりメローになり過ぎないような配慮も働いていたように思えます。もっと美しく響かせることもできたでしょうが、あえて、厳しい表現も見せていました。初演者のアンネ=ゾフィー・ムターは明快で美しい演奏でしたが、庄司紗矢香は彼女なりに一線を置いた表現でこの作品の新たな解釈を聴かせてくれました。ペンデレツキのこの作品は近年に作曲されたヴァイオリン協奏曲の中では大変、魅力的なものですが、庄司紗矢香の演奏で一層、その魅力の幅を広げたような気がします。今後、このヴァイオリン協奏曲は演奏機会が増えていきそうな予感がします。

前半の庄司紗矢香の演奏ですっかり、満足しましたが、後半のベートーヴェンの交響曲第7番は予想以上の会心の演奏。先日、ジョナサン・ノット指揮の東京交響楽団の素晴らしい演奏を聴いたばかりですが、今日の演奏はそれに勝るとも劣らない演奏。ペンデレツキの指揮も見事でしたが、都響のモダンで切れの良い、完璧なアンサンブルが凄かったと思います。やはり、これが今日的なベートーヴェン演奏の規範なのでしょう。室内オーケストラを思わせる一糸の乱れもない完璧なアンサンブルでの古典的な演奏。ロマンやスケール感という要素は排除して、極力、譜面に忠実に演奏する・・・その中でベートーヴェンが描き出そうとしたオリジナルな音楽表現を目指すというものです。自身が作曲家であるペンデレツキだからこそ、こういうベートーヴェンの実像に回帰するような演奏が可能なんでしょう。時を置かずして、日本のオーケストラでこのベートーヴェンの傑作の素晴らしい演奏が続けて聴けて、大変、幸せです。

今日は前半は現代音楽、後半は古典派の音楽でしたが、ペンデレツキはどちらもその音楽が底面ではつながっていることを分からせてくれるような演奏を聴かせてくれました。久しぶりに都響のサントリー定期に足を運びましたが、素晴らしいコンサートに出会えました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:クシシュトフ・ペンデレツキ、マチェイ・トヴォレク(平和のための前奏曲のみ)
  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  管弦楽:東京都交響楽団  コンサートマスター:矢部達哉

  ペンデレツキ:平和のための前奏曲(2009)[指揮/マチェイ・トヴォレク]
  ペンデレツキ:ヴァイオリン協奏曲第2番《メタモルフォーゼン》(1992-95)
《アンコール》 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 ハ長調 BWV1005より第3楽章 ラルゴ

   《休憩》

  ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 op.92


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のペンデレツキの平和のための前奏曲は予習すべきCDが入手できず、予習していません。


2曲目のペンデレツキのヴァイオリン協奏曲第2番《メタモルフォーゼン》を予習したCDは以下です。

 アンネ=ゾフィー・ムター、クシシトフ・ペンデレツキ指揮ロンドン交響楽団 1997年

これはムターのこれまで聴いたCDでも最高の演奏です。その深い音楽表現に感動しました。ヴァイオリンの響きのあまりの美しさにも魅了されました。究極の名演です。ムターがこの曲の初演者であるからとかは関係ないレベルの音楽の完成度です。ムターの音楽家としての知性の高さにも驚愕しました。


3曲目のベートーヴェンの交響曲第7番を予習したCDは以下です。

 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団 1971年

この曲はいまさら予習の必要もありません。あくまでも楽しみとして聴きました。フルトヴェングラーを除くと、このジュリーニ指揮シカゴ響の演奏がsaraiの一番のお気に入り。最高の演奏です。録音も素晴らしいです。この頃のジュリーニはマーラーの第9番やシューベルトの第9番など素晴らしい録音揃いです。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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