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現代のヴィルトゥオーゾ、シューマンの狂気に肉薄 アンドレイ・ガヴリーロフ ピアノ・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷ホール 2019.6.30

いやはや、まさか、saraiの地元で幻とも思えるアンドレイ・ガヴリーロフの演奏が聴けるとは思っていませんでした。それもかぶりつきで伝説的なピアニストの演奏が聴けました。11年ぶりの来日公演なんだそうです。今回、首都圏では、今日のコンサートだけなんだそうです。やはり、このピアニストはたまが違います。破格の演奏を聴かせてくれました。シューマンもムソルグスキーもアンコールも圧倒的な演奏でした。爆演とも言えますが、その一言で片付けられないような凄い演奏。やりたい放題の演奏ですが、それが実に音楽性に満ちているのは、ガヴリーロフの魂の燃焼が聴く側の我々に伝わってくるからでしょう。彼の演奏は常に全力投球。手抜きは一切なし。演奏の途中で肩で息をしているほど、思い切り、音楽にのめりこむような感じです。

前半のシューマンは最初の《蝶々》から、ガヴリーロフの個性が浮き彫りになったような演奏。節回しが独特です。魅惑的で面白い演奏にぐっと惹き付けられます。
圧巻だったのは、交響的練習曲。まさに題名通り、交響的な演奏です。終始、鍵盤を叩きまくり、しかも、ペダルを踏み続けるので、凄まじい音響の嵐です。その大音響の先にシューマンの秘めたような狂気まで露わになります。時折、音響の嵐が静まり、シューマンの抒情的なロマンも際立ちます。第9変奏(フィナーレの前の曲)でもそういうロマンが感じられますが、その底には潜在的な狂気も感じます。なるほど、シューマンは若い時から、後の狂気を内在していたのですね。そういうことを感じさせるほど、ガヴリーロフの一見、自由奔放なピアノは深い音楽性に裏打ちされています。フィナーレでは一変して、そういう狂気は吹き飛ばすような祝祭に満ちた音楽に昇華します。なんとも素晴らしいシューマンでした。こういうシューマンの演奏もあるんですね。最高の交響的練習曲を聴かせてもらいました。あの美しい遺作変奏曲が聴けないのは残念でしたが、確かに今日の演奏には遺作変奏曲はふさわしくないような気がします。シューマン自身が編纂した今日の1852年改訂版が真の交響的練習曲であることを納得させてくれるような演奏でした。

後半は展覧会の絵。ヴィルトゥオーゾの演奏はこういうものだという見本のような演奏です。1960年以前のリヒテルやホロヴィッツの演奏が現代によみがえったような凄まじい演奏です。いや、むしろ、それ以上かもしれません。リヒテルの1958年のソフィアでのライヴ録音を思い出します。まあ、あれほど、自分を失った演奏ではなく、テンポも突っ込んでいませんから、燃焼した演奏とは言え、どこか冷めた自分を持ち続けた演奏ではありました。実際、コケティッシュな部分では笑みを浮かべながら、聴衆の様子を窺う余裕さえありました。バーバ・ヤガーからキエフの大門に至る終盤の高揚にはとても興奮させられました。やはり、展覧会の絵はこうでなくっちゃね。

演奏を終えて、聴衆の万雷の拍手に応えるガヴリーロフの嬉しそうな笑顔、そして、スポーツ選手のようなガッツポーズが印象的。ヴィルトゥオーゾにして、自由人。ある意味、ホロヴィッツみたいですね。そして、アンコール。saraiが期待していたショパンのノクターンです。CDで聴いたとおりの異端の演奏。彼にしか表現できないような自在な音楽。中間部の豪快な演奏にはまたしても驚かされます。これでアンコールはお終いかと思っていたら、何と、プロコフィエフを演奏してくれます。これは何とも凄いプロコフィエフでした。プロコフィエフが若いときにこんな曲を書いたのも凄いですが、演奏するガヴリーロフの超絶技巧と音響の凄まじさ、それに高い音楽性にただただひれ伏すのみです。このプロコフィエフが今日の最高の演奏でした。戦争ソナタを是非とも聴かせてもらいたいものです。気絶するような演奏になるんでしょう。

現代にこのようなピアニストがいるのは驚異です。ポゴレリッチとかファジル・サイとか、異才もいますが、ガヴリーロフの破格さは比類のないものだと思いました。こんな凄いピアニストが聴けて、幸運でした。ザルツブルクでグリゴリー・ソコロフを聴いたとき以上の感銘を受けました。


この日のプログラムは以下の内容です。

 ピアノ:アンドレイ・ガヴリーロフ

  シューマン:蝶々 Op.2
  シューマン:交響的練習曲 Op.12 <1852年版>

  《休憩》

  ムソルグスキー:展覧会の絵

  《アンコール》

    ショパン:夜想曲第4番 ヘ長調 Op.15-1
    プロコフィエフ:4つの小品 悪魔的暗示 Op.4-4


最後に予習について触れておきます。

1曲目のシューマンの蝶々は以下のCDで予習をしました。

  田部京子 2007年12月5日 浜離宮朝日ホール ライヴ録音
  伊藤恵 1990年1月23-25日 田園ホール・エローラ(松伏町中央公民館) セッション録音

日本を代表するピアニスト二人がシューマンを得意にしているのは嬉しいです。いずれも素晴らしい演奏。海外のピアニストを含めても、出色のシューマンです。田部京子の詩的な表現、伊藤恵のドイツ的な重厚な演奏、最高のシューマンです。


2曲目のシューマンの交響的練習曲は以下のCDで予習をしました。

  田部京子 1999年8月10-13日 群馬 笠懸野文化ホール セッション録音
  伊藤恵 2000年1月12-14日 ベルフォーレ(坂東市民音楽ホール) セッション録音

二人のシューマンはここでも素晴らしい演奏。伊藤恵はシューマニア・シリーズ13枚のCDで素晴らしいシューマンのピアノ独奏曲の全曲を聴かせてくれます。田部京子はシューマン・アルバムは2枚だけですが、珠玉の演奏です。


3曲目のムソルグスキーの展覧会の絵は以下のCDで予習をしました。

  アナトール・ウゴルスキ 1991年 ハンブルク セッション録音

展覧会の絵と言えば、リヒテルとホロヴィッツの歴史的な演奏に尽きてしまいますが、彼らの豪快な演奏の対極にあるようなウゴルスキのクリアーな演奏も見事です。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       ガヴリーロフ,

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横浜在住ながらチケットがとれずに宗次ホールまで遠征したものです。私も全く同じ意見です。既成概念を打ち破り凄まじくロック。全力で生きているかと問われるような音楽でした。途中で泣きました。これが解る人って少ないんだろうなあと思っています。特にちんまりと型にはまった綺麗さを求める日本人は。ギトリスと重なる音楽性を感じました。また来日してくれないかなあ‼️

ありがとうございます

通りすがりの人さんへ

saraiです。返信遅れてすみません。いやいや、ガヴリーロフに期待している人たちが会場に詰め掛けていました。主催者とお話ししたら、ギャラが安くても、まだ、日本で演奏することを示すためにコンサートを開いたそうです。ということは、大変、大うけでしたから、また、日本に来てくれるかもしれません。今度は戦争ソナタか、ノクターンが聴きたいですね。シューマンももっと聴きたいですが・・・。いずれにせよ、嬉しいコメント、ありがとうございました。

是非とも

また来てほしいですね~( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆
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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai

DCHは私も毎週末、楽しみに聞いています。
・スーパースターには、ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲルトの名も挙げたいところです。
・清水直子さん後半のみ登場、D

03/01 19:22 aokazuya

金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai
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