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知的で静謐、かつ日本人的な味わい・・・宮田大&小泉和裕&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.7.16

音楽には色々な形があります。豪快で熱い演奏、緻密さを極めるような演奏、音楽性に満ちた演奏、等々、いずれもその道を極めれば、聴衆をうならせることができるでしょう。そして、今日の演奏はタイトルに書いたように知的で静謐な演奏、誤解を恐れずに言えば、伝統的な日本人の精神性に基づく、深い味わいの音楽でした。そこには興奮も熱狂もありませんが、まるで能楽でも聴いているような奥深い精神の緊張感に満ちていました。かくのごとく感じたのは、後半のブラームスではなくて、前半のドヴォルザークでした。こういう味わいのドヴォルザークは初めて聴きました。きっと、日本人でなければ表現できず、日本人でなければ味わうことができないでしょう。民俗音楽の代表的な作曲家とも言えるドヴォルザークですが、ボヘミアや訪問地のアメリカの音楽がベースであっても、こうして異国の日本のテースト、文化というフィルターを通した演奏が可能であること、それもとびっきり、高いレベルでなしうることは驚くべきことではないでしょうか。再現芸術という形をとる音楽の無限の可能性を再認識させられました。

少し、中身に立ち入ってみましょう。まずは独奏チェロの宮田大の熟成した音楽を賞賛すべきでしょう。ともすれば、若いチェリストならば、熱い共感に満ちたドヴォルザークの音楽を表現することが多いわけですが、宮田大はその若さにもかかわらず、実に知的で精緻、そして熟成した音楽を聴かせてくれます。知的でありながら、決して、冷たくはならず、熱い心は内に秘めたような、見事な演奏です。精神の深いところでは日本人の心がいい意味で息づいています。その宮田大のチェロをサポートする小泉和裕の見事な指揮には脱帽の感に至ります。協奏曲の指揮でここまでのレベルの音楽を聴いたことはありません。そもそも、何と彼は暗譜で指揮しています。どれほどスコアを読み込んだんでしょう。そして、彼がオーケストラで表現する音楽は独奏チェロの宮田大の音楽を独奏者以上に理解していると言っても過言でないほど、単なるサポートではなく、独奏チェロの表現をさらに敷衍・拡大し、深い味わいをもたらします。その指揮者の指示を見事に表現する都響のアンサンブルも見事です。聴きどころ満載でしたが、第2楽章の独奏チェロと木管の絡みが素晴らしくて、深い味わいに満ちていたことだけを書くにとどめます。
協奏曲での独奏者と指揮者の在り方は様々ですが、今日のように指揮者が独奏者の意図・表現を高みから見据えて、音楽的にアウフヘーベンしたかのような統合的な境地に至るということは信じられないような体験でした。しかもそれが日本文化に根差したような音楽表現とはね・・・。

となると、後半のブラームスへの期待も高まります。日本人的な表現のブラームスというのも想像はできます。しかし、演奏水準は高かったものの期待したような意味での演奏ではありませんでした。まあ、都響の素晴らしいアンサンブルで、ブラームスの中でも好きな作品である交響曲第2番が聴けただけで満足ではありました。

今日はドヴォルザークのチェロ協奏曲での宮田大の素晴らしく個性的な演奏、そして、それ以上に個性的で深い味わいの表現を聴かせてくれた小泉和裕の指揮に強い感銘を受けました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:小泉和裕
  チェロ:宮田大
  管弦楽:東京都交響楽団  コンサートマスター:矢部達哉

  ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104 B.191

   《休憩》

  ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のドヴォルザークのチェロ協奏曲を予習したCDは以下です。

 ピエール・フルニエ、ジョージ・セル指揮ベルリン・フィル 1962年6月 ベルリン、イエス・キリスト教会 ハイレゾ
 
昔から聴いている演奏。今回、ハイレゾで聴き直しましたが、昔、アナログのLPレコードで聴いていた音を思い出しました。心にしっくりとくる演奏です。ちらっとロストロポーヴィチ&カラヤン盤を聴こうという気持ちもありましたが、この曲はこれでよし。


2曲目のブラームスの交響曲第2番を予習したCDは以下です。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1967年1月6日 クリーヴランド、セヴェランス・ホール

素晴らしい演奏ではありますが、なんだか、心の収まるべきところにきっちりとは入りません。やはり、ハイティンク&ロンドン交響楽団の冒頭を聴いてみましたが、ブラームスはこうでなくてはとの感があります。フルトヴェングラー&ベルリン・フィルは別格の演奏です。通常はハイティンクで決まりでしょう。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai

DCHは私も毎週末、楽しみに聞いています。
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03/01 19:22 aokazuya

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大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
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10/07 08:57 堀内えり

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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

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クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai
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