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飛翔する詩情、シューマンの幻想曲 田部京子@浜離宮朝日ホール 2019.7.26

この田部京子のシューベルト・プラスというコンサートシリーズも今回で第5回となり、既にシューベルトの遺作ソナタ3曲も弾き終わり、田部京子の演奏もシューベルトからシューマンへシフトしている感があります。シューマンの謝肉祭は素晴らしい演奏でしたし、前回の交響的練習曲はもう一つの出来ではありましたが、遺作変奏曲は素晴らしく美しい演奏でした。そして、今日はいよいよ期待の幻想曲です。いつか、幻想曲とクライスレリアーナを聴きたいと念願していたら、早くも今日、幻想曲が聴けます。田部京子がCDもまだ出していない作品です。

うーん、田部京子のシューマン、最高! 第1楽章、第2楽章と素晴らしく輝きに満ちたロマンティックなシューマンの演奏が続きます。しかし、本当に素晴らしかったのは、第3楽章です。深い、深い詩情に満ちた、その演奏を聴いていると、心が自由になり、高く飛翔してしまいそうです。終盤はさらに精度も純度も高まって、シューマンの若き心の感動が伝わってきます。最高の幻想曲を聴きました。次回のシューベルト・プラスのコンサートでは、シューマンの《子供の情景》が聴けます。これは田部京子が既に録音していますね。既に録音したものでは、アラベスクとパピヨンが残っている筈ですが、是非、このシリーズで愛するクライスレリアーナも弾いてほしいものです。
ところで田部京子の幻想曲が最高と書きましたが、ザルツブルク音楽祭で聴いたアンドラーシュ・シフの幻想曲も素晴らしかったんです。シフの幻想曲の第3楽章では、《愛》を感じました。それぞれの個性です。

前半のベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番《悲愴》はしっかりした演奏でしたが、田部京子だったら、もっと弾けるでしょうという感じ。saraiの集中力も欠けていましたけどね。シューベルトのピアノ・ソナタ第13番はさすがの演奏。田部京子のシューベルトは素晴らしいの一語。シューベルトの人懐こい優しさにあふれた演奏です。こういうシューベルトも好きです。シューベルトもこの何年か後には遺作ソナタの深い世界に入るということが信じられない感じではあります。

今日も田部京子は音楽の神に選ばれた天才ピアニストぶりを遺憾なく発揮し、シューベルトと同じ最高のレベルでシューマンを聴かせてくれました。日本には最高のシューマン弾きが二人もいて、日本人のsaraiは幸運を感じています。その二人とは、田部京子と伊藤恵です。これからも彼女たちのシューマンをたくさん聴かせてもらいましょう。


今日のプログラムは以下です。

  田部京子シューベルト・プラス 第5回

  ピアノ:田部京子
 
  べートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番ハ長調 Op.13
  シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番イ長調 Op.120 D664

  《休憩》

  シューマン:幻想曲ハ長調 Op.17

  《アンコール》
   グリーグ:抒情小曲集より、ノクターン Op.54-4
   シューマン:『子供の情景』Op.15より、第7曲『トロイメライ』


次回はシューベルトの晩年の傑作、アレグレットが登場します。聴き逃がせませんね。残す晩年の作品はいよいよ、3つの即興曲だけですね。シューマンの《子供の情景》も演奏されます。これも待ちに待ったものです。saraiが大好きな作品です。若きブラームスの書いたピアノ・ソナタ第3番は田部京子がまだ録音していない筈です。この熱くロマンティックな作品を田部京子がどう弾くのかも楽しみです。
   

最後に予習について、まとめておきます。

べートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番を予習したCDは以下です。

 エミール・ギレリス 1980年9月 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音

ギレリスのセッション録音のベートーヴェンはすべて、素晴らしい演奏です。この《悲愴》ソナタも同曲演奏の録音の中ではピカ一です。


シューベルトのピアノ・ソナタ第13番を予習したCDは以下です。

 田部京子 1999年3月30日~4月2日 豊田市コンサートホール

もう20年ほど前の録音ですが、今日の演奏と同様に郷愁に満ちた満足できる演奏です。


シューマンの幻想曲ハ長調を予習したCDは以下です。

 スヴャトスラフ・リヒテル 1980年 ブダペスト ライブ録音

音質は今一つですが、リヒテルらしくスケールの大きな演奏です。それにじっくりと落ち着いた演奏です。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       田部京子,

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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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