今年のヨーロッパ遠征・・・手術も完全治癒! そして、予習も終盤・・・内田光子のモーツァルトのピアノ協奏曲に向けて
ところで、緊急入院、緊急手術し、1週間で退院して、早、2週間が経ちました。今日は手術で切除した盲腸(虫垂)の病理検査結果が出るので、2週間ぶりに懐かしい病院を訪れました。予約時間よりも30分も早く到着しましたが、すぐに診察室に呼ばれて、入院時の主治医と久しぶりの対面。主治医の先生は笑みを浮かべながら、病理検査結果の表示されたPCの画面を見せてくれます。切除した盲腸は腐れていただけで、悪性の様子はなかったということで、30秒も経たずに一件落着。それだけではと思ったのか、先生は「一応、傷の状態を診ておきましょう」とのこと。さっと、お腹の手術痕を見て、問題ないねとのことです。saraiが「では、これで完全治癒ですね?」って言うと、その通りと言うことです。これで旅の障害はすべて無くなりました。レッツゴー!
退院後、続けていた食事制限などの節制も基本、解禁。もっとも、そうしてよいと先生に言われたわけではありません(笑い)。勝手な自己判断です。
で、夕食は・・・ジャジャーン、久しぶりのワインで乾杯! あては海鮮とマッシュルームのアヒージョ、そして、生マグロの刺身。健康って、いいですね!
そして、3週間ぶりに湯船に漬かりました。入院中はもちろん風呂なしで、退院後もシャワーだけでした。2週間後にはオーストリアの温泉に浸かりますが、その前祝いみたいなものです。
さて、今日もオペラ・コンサートの予習です。
ウィーン・コンツェルトハウスで聴く内田光子&マーラー・チェンバー・オーケストラのモーツァルトのピアノ協奏曲の夕べの予習です。
ここは内田光子の演奏で聴くべきところですが、その素晴らしい演奏は散々、聴いています。その上で、saraiの愛する最高の演奏を聴きます。予習というよりも楽しみです。
曲目が第19番 K.459と第20番 K.466とくれば、これは最愛のピアニスト、クララ・ハスキルの名演奏がたくさん残っています。
まず、第19番 K.459はハスキルの全録音8枚の中で最も録音と演奏の素晴らしい1枚がこれ。
1959年2月19日、パリ(シャンゼリゼ劇場) コンスタン・シルヴェストリ指揮フランス国立管弦楽団
これは最高の1枚です。何とステレオ録音です。音質もこれ以上ないほどの素晴らしさ。平林直哉氏の最高の仕事に感謝です。シルヴェストリ指揮のフランス国立管弦楽団はモーツァルトにしては少々、硬い印象ではありますが、立派な演奏と言えるでしょう。そして、ハスキルのピアノは非常に明確。やはり、純度の高い響きで格調ある演奏です。ハスキル・ファンとしては感涙ものと言える素晴らしい演奏と録音です。ハスキルを代表する1枚と言えます。どうして、世の中で評判にならないのか、とっても不思議です。第3楽章のハスキルの妙技、そして、それに触発されるかのように白熱するオーケストラ。これぞ、協奏曲と言える演奏に酔いしれるのみです。大変、感動します。会場から沸き起こる拍手と一緒に拍手します。まさにその場でライヴで聴いた思いになります。saraiの愛聴盤です。
次は第20番 K.466。名曲中の名曲ですね。ハスキルは11枚も録音を残しており、どれも素晴らしい演奏ばかりです。いずれもハスキルのファンならば、聴き逃せない演奏ばかりですが、とりわけ、1956年のカラヤン、1956年のミュンシュ、1959年のクレンペラーとのライヴ録音は素晴らしいの一語に尽きます。1954年のフリッチャイとのセッション録音、1954年のパウムガルトナー、1960年のマルケヴィッチも捨て去りがたい魅力に満ちています。やはり、ハスキルのピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466は大袈裟に言うと、人類の文化遺産の最高峰です。この中でsaraiの一番のお気に入りはこれ。
1959年9月8日、ルツェルン音楽祭 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団(AUDITEハイレゾ) カデンツァ:ハスキル
前に聴いていたURANIAのCDも音質こそ悪いですが、素晴らしい演奏でした。しかし、新たにAuditeのダウンロード販売で入手したハイレゾ音源はまるで奇跡のように素晴らしい音質で、オーケストラもハスキルのピアノの響きも素晴らしく磨きあがっています。とりわけ、ハスキルのピアノの高域のピュアーな響きと低域の深みのある響きは感涙ものの素晴らしさ。AUDITEのルツェルン音楽祭のハイレゾ音源シリーズでは、フルトヴェングラーのシューマンの交響曲第4番も見事に蘇りましたが、これはそれを上回る出来です。この演奏で聴くハスキルの音楽は一段と芸術上の高みに上った感があります。潤いのある、磨き上げられたようなピアノの響きで哀感のある音楽を奏でていきます。まさに輝くような演奏に引き込まれてしまいます。第2楽章の深い詩情にあふれた演奏には絶句するのみです。第3楽章もパーフェクトな響きで音楽が進行します。これこそ、ハスキルのモーツァルトを代表する名演奏です。クレンペラーもさすがに立派にオーケストラを鳴らしています。名指揮者と組んだときのハスキルは一段と輝きを増します。第1楽章の冒頭はいかにもデモーニッシュな雰囲気のオーケストラ演奏ですが、ハスキルの品格の高いピアノが入ってくると状況が一変します。あの名匠クレンペラーもハスキルの品格に合わせた演奏に切り替えます。モーツァルトの音楽の純粋さを際立たせるようなピアノとオーケストラがこの名曲の本質を奏でていきます。これこそ、真のモーツァルトの音楽であることを実感させてくれます。
ウィーン・コンツェルトハウスの内田光子&マーラー・チェンバー・オーケストラのモーツァルトのピアノ協奏曲の夕べでは、2曲の名曲の間に、R.シュトラウスの晩年の傑作、メタモルフォーゼンが演奏されます。不思議なプログラムです。予習では今まで聴いていなかった演奏を選びます。これまで聴いた中ではフルトヴェングラーとクレンペラーが双璧の演奏でした。今日はこれ。
1967年8月、ジョン・バルビローリ指揮ニューフィルハーモニア管弦楽団
カップリングされているのは、名演奏で有名なマーラーの交響曲第6番。しかし、このメタモルフォーゼンも素晴らしい演奏。戦後20年ほど経った時点での戦勝国側のイギリスのメンバーによる演奏ですが、まさに戦争には勝者も敗者もなく、残されたのは悲しみだけという厳然たる真実を告げるかのような魂の演奏です。カラヤン&ベルリン・フィルの美しいけれども、どこか空々しい演奏とは一線を画す演奏に思えます。
メタモルフォーゼンを聴き終えて、内田光子の知的なプログラム構成に思いを巡らせます。共通項は“悲しみ”です。モーツァルトの音楽はピュアーな表現の持つ悲しみ。R.シュトラウスは父親の影響もあって、モーツァルトの音楽を音楽を再興しようと、「ばらの騎士」などの名曲を作り上げましたが、それは悲しみではなく、ウィーン風の軽みに満ちたものでした。しかし、晩年はこのメタモルフォーゼン、4つの最後の歌、カプリッチョ、ダナエの愛などで透徹した悲しみを表現するようになりました。およそ、150年を隔てたモーツァルトの音楽とR.シュトラウスの音楽を“悲しみ”で繋ぎ合わせようというのが、内田光子の思いだと考えましたが、その答えはコンサートで聴きとりましょう。
予習も終盤に入り、残り、2日分になりました。もっとも、予習はもっともっとすべきでしたが、時間がね・・・。
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