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バルトリとクルレンツィス、世紀の共演@ルツェルン音楽祭 2019.9.13

チェチーリア・バルトリとクルレンツィスの初共演とのことです。歴史に残る公演に立ち会えただけでも嬉しく思いますが、その演奏たるや、驚異的なものでした。不世出の希代のメゾ・ソプラノのバルトリは常に驚異的な超絶技巧の歌唱を聴かせてくれるので、とりたて、今日の歌唱だけを讃えるものではありません。一方、クルレンツィスの天才はいつも別次元の音楽を聴かせてくれます。その二人が共演するとどうなるか・・・結果は最高のものでした。互いがリスペクトし合いつつも、己の音楽を貫きとおし、天才同士ならではの未曽有の音楽を作り出しました。先に演奏したのはクルレンツィス。壮麗かつ精度の高い音楽を展開します。冒頭のキリエは初めて聴く音楽のような新鮮さと活力に満ちて、新たなモーツァルト像を提供してくれます。続くカンタータ 「悔悟するダヴィデ」でも、深い音楽性に満ちた合唱で始まります。そこへ初共演のバルトリが加わります。最初は彼女がクルレンツィスに息を合わせます。しかし、彼らの音楽性は基本的に同じ基盤に立っているような気がします。基本的に静謐な弱音をもとに音楽を組み立てて、ここぞというところで一気に音楽を爆発させます。ですから、無理のない形でお互いを意識し過ぎずに個性的な音楽をそれぞれ展開していきます。そもそも、天才指揮者クルレンツィスは共演相手が勝手気ままに演奏してもぴたっとオーケストラをつけていくことは、コパチンスカヤのヴァイオリンでも実感しています。ましてや、百戦錬磨のバルトリは個性的なアジリタを展開しつつもアンサンブルはしっかりと合わせていきます。曲が変わるたびに次第に自在な音楽が響き合い、強烈な個性を帯びた最高級の音楽が展開されていきます。クルレンツィスはいつか、後ろに下がり、アンサンブルの基盤をささえ、バルトリが思いっきり、歌唱していくという構図が出来上がっていきます。バルトリがメゾの曲だけでなく、ソプラノの曲も楽々と歌い込んで、しかも並みのソプラノ歌手では真似のできない骨太の歌唱を展開していく様に驚嘆するのみです。ドンナ・エルヴィーラのアリアをこんな風に歌った歌手はいまだかって知りません。フルトヴェングラーのもとでドンナ・エルヴィーラを歌ったシュヴァルツコップを凄いと思っていましたが、バルトリは別次元の歌唱。コロラトゥーラならぬアジリタの歌唱が素晴らしいです。圧巻だったのは最後のコンサートアリア。こんなにアジリタが炸裂する歌唱は初めて聴きました。凄い!! そして、感動はまだありました。アンコールの「エクスルターテ・ユビラーテ」の《アレルヤ》はやりたい放題のアジリタ尽くし。バルトリ・ワールドを満喫しました。バルトリ抜きの曲目でのクルレンツィスはどれも音楽的な精度を磨き抜いたモーツァルトを聴かせてくれました。明日以降のモーツァルトの予告編ですね。まったく、クルレンツィスはモーツァルト像を新たに書き換えてくれました。恐るべし、クルレンツィス。そして、素晴らしきかな、バルトリ。

今日のプログラムとキャストは以下です。

ムジカエテルナ(ピリオド楽器オーケストラと合唱団)
テオドール・クルレンツィス(指揮)
チェチーリア・バルトリ(メゾ・ソプラノ)
ミンジェ・レイ(テノール〉

オール・モーツアルト作品

キリエ ニ短調Kyrie in D minor, K. 341 (386a)
カンタータ 「悔悟するダヴィデ」より Excerpts from the cantata Davide penitente, K. 469
 第1曲 合唱とソプラノ「私は弱々しい声で主を呼びました」 Andante moderato ハ短調 Coro : Alzai le flebili voci
 第2曲 合唱「神の栄光を歌おう」 Allegro vivace ハ長調 Coro : Cantiam le glorie
 第3曲 アリア(ソプラノ)「不毛の悩みは遠ざかり」 Allegro aperto ヘ長調 Aria Soprano II : Lungi le cure ingrate

歌劇『皇帝ティートの慈悲』より、
 第1幕第4曲 行進曲March from La Clemenza di Tito, K. 621
 第1幕第5曲 合唱「保ちたまえ」Serbate, oh Dei custodi from La Clemenza di Tito, K. 621 (Chorus)
 第2幕第19曲 ロンド「この今のときだけでも」(セストのアリア)Deh per questo istante solo from La Clemenza di Tito, K. 621 (Sesto’s aria)
 序曲Overture to La Clemenza di Tito, K. 621
 第1幕第9曲 アリア「私は行く」(セストのアリア)Parto, parto, ma tu ben mio from La Clemenza di Tito, K. 621 (Sesto’s aria)

  《休憩》

歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より、
 序曲Overture to Don Giovanni, K. 527
 第21b曲 ドンナ・エルヴィーラのレシタティーヴォとアリア「あの恩知らずの人は私を裏切った」In quali ecessi, o numi … Mi tradi aus Don Giovanni, K. 527 (Donna Elvira’s aria)

歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』より、
 序曲Overture to Così fan tutte, K. 588
 第2幕第29曲「もうすぐ腕に抱かれ」(フィオルディリージとフェランドの二重唱)Fra gli amplessi in pochi istanti from Così fan tutte, K. 588 (duet for Fiordiligi and Ferrando)

フリーメイソンのための葬送音楽Masonic Funeral Music in C minor, K. 477 (479a)
劇唱「どうしてあなたを忘れられようか」とロンド「恐れないで、愛する人よ」Concert aria Ch’io mi scordi di te … Non temer, amato bene, K. 505

  《アンコール》

モテット「エクスルターテ・ユビラーテ」 K.165 (158a).より、第3楽章 アレグロ ヘ長調 《アレルヤ》


さて、今日の予習は以下の演奏を聴きました。

キリエ ニ短調 K. 341 (386a)
 モンテヴェルディ合唱団、イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、指揮:ジョン・エリオット・ガーディナー 1986年11月30日、ロンドン、セント・ジョンズ教会

カンタータ 「悔悟するダヴィデ」より K. 469 第8曲 不毛の悩みは遠ざかり
 チェチーリア・バルトリ、ウィーン室内管弦楽団、ジョルジー・フィッシャー(指揮) 1993年3-4月、モーツァルトザール、コンツェルトハウス、ウィーン

歌劇『皇帝ティートの慈悲』より、
 第1幕第4曲 行進曲
 第1幕第5曲 合唱「保ちたまえ」
 第2幕第19曲 ロンド「この今のときだけでも」(セストのアリア)
 序曲
 第1幕第9曲 アリア「私は行く」(セストのアリア)

 セストのアリア2曲
  チェチーリア・バルトリ、ウィーン室内管弦楽団、ジョルジー・フィッシャー(指揮) 1990年、モーツァルトザール、コンツェルトハウス、ウィーン

 その他のオーケストラ曲、合唱曲
  RIAS室内合唱団、フライブルク・バロック・オーケストラ、ルネ・ヤーコプス(指揮) 2005年 セッション録音

歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より、
 序曲
 第21b曲「あの恩知らずの人は私を裏切った」

  バルトリの録音が見つからなかったためにパス。

歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』より、
 序曲
 第2幕「もうすぐ腕に抱かれ」(フィオルディリージとフェランドの二重唱)

  バルトリの録音が見つからなかったためにパス。

フリーメイソンのための葬送音楽 K. 477 (479a)
 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団、ラファエル・クーベリック(指揮) オットー・クレンペラー追悼コンサート 1974年1月14日 ロイヤル・フェスティヴァル・ホール、ロンドン ライヴ録音
 
劇唱「どうしてあなたを忘れられようか」とロンド「恐れないで、愛する人よ」 K. 505
 チェチーリア・バルトリ、アンドラーシュ・シフ、ウィーン室内管弦楽団、ジョルジー・フィッシャー(指揮) 1990年、モーツァルトザール、コンツェルトハウス、ウィーン

(以下の内容は既に書いたものです。今回も自分の文章をパクりました。ごめんなさい。)
以上のようにバルトリの歌唱を中心に聴きましたが、おそらく、真ん中の休憩前、前半の最後に歌われるセストのアリア「私は行く」はクラリネットと絡んでの絶唱です。バルトリならではのアジリタも素晴らしく、この1曲を聴くだけでも、このコンサートを聴く甲斐があると思いました。それに今回はクルレンツィスとの初めての共演という期待もあります。後半の最後のコンサートアリアK.505も素晴らしい歌唱。アンドラーシュ・シフのベーゼンドルファーの美しいピアノの響きも素晴らしいです。今回のリサイタルでは、モダン・ピアノではなく、フォルテピアノの演奏になるんでしょうね。saraiとしては、誰か有名ピアニストがサプライズ登場して(バルトリつながりではシフ、クルレンツィスつながりではメルニコフ)、モダン・ピアノで演奏してくれたほうが嬉しいのですが・・・。
カンタータ 「悔悟するダヴィデ」 K. 469については、第8曲 不毛の悩みは遠ざかり だけがバルトリの歌唱で録音されていました。若い頃のバルトリは今以上の澄み切った美声で、とてもバルトリとは分からないような歌唱でびっくりです。セストのもう一つのアリアもアジリタがないせいか、すっきりと美しい歌唱です。ほぼ30年前の歌唱ですからね。

バルトリが歌わないクルレンツィス&ムジカエテルナの演奏は、既に聴き終えた歌劇『ドン・ジョヴァンニ』と歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』以外はクルレンツィス&ムジカエテルナの録音が見当たりません。で、なるべく、ピリオド奏法の録音を聴きます。キリエK.341はガーディナー他のものを聴きましたが、荘重な演奏です。クルレンツィスはもっと軽快な演奏になるのかな。歌劇『皇帝ティートの慈悲』は名匠ルネ・ヤーコプスの演奏。断片的に聴いたわけですが、素晴らしい演奏です。傾向的にはクルレンツィスと似た傾向の演奏と受け止めました。フリーメイソンのための葬送音楽は名指揮者の追悼によく演奏されるんですね。フルトヴェングラーの葬儀の際はヨッフム指揮のベルリン・フィル、カール・ベームの追悼コンサートではヨッフム指揮のウィーン・フィル、そして、今回聴いたのはオットー・クレンペラーの追悼コンサートをクーベリックが指揮したものです。いずれも巨匠ゆかりのオーケストラが他の巨匠に指揮されるという類似点があります。この曲はそういう位置づけの曲なのですね。クーベリックの指揮は見事です。あまり、彼のモーツァルトは評価されていないようですが、とても素晴らしいです。そう言えば、クーベリックはクララ・ハスキルとの幻に終わったモーツァルトのピアノ協奏曲全集というのがありました。二人は熱望していましたが、クーベリックがデッカ所属、ハスキルがフィリップス所属という壁に阻まれて、実現しませんでした。それどころか、彼らのモーツァルトの共演はまったく録音として残されていません。全集が実現していれば、音楽史上、輝くべき成果になったことは間違いありません。結局、彼らの共演はシューマンとショパンの協奏曲だけが残されています。もちろん、素晴らしい演奏です。ともかく、クーベリックのモーツァルトはいいです。



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ジャンル : 音楽

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ウィーンは初めてです、ザルツブルクへ日帰りの小旅行もしてみたいと
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たまらんさん、saraiです。

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