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指揮者は透明人間! アレクサンドル・ガテ&ダヴィド・グリマル&レ・ディソナンスLES DISSONANCES@フィルハーモニー・ド・パリ 2019.9.24

フィルハーモニー・ド・パリ(Philharmonie de Paris)に初見参です。素晴らしくお洒落で音響的にもよいホールです。オーケストラのコンサートには大き過ぎず、ちょうどよいサイズですね。サル・プレイエルの古ぼけたホールとは隔世の感です。
演奏はフランスのヴァイオリニスト、ダヴィド・グリマルDAVID GRIMALが主宰する室内アンサンブル、レ・ディソナンスLES DISSONANCESの演奏のつもりでした。しかし、実際にはこの室内アンサンブルを核に拡大した大編成のオーケストラの演奏でした。それでも指揮者なし。こんな大編成のオーケストラで指揮者のいない演奏は初めて聴きました。なんか変な感じで、そのことが演奏中にも気になります。いっそのこと、不肖、saraiが指揮台に立ってしまおうかと思うほど、違和感があります。今やクルレンツィスのようなカリスマ指揮者が台頭する時代に逆戻りですが、その一方、こういう試みもあるのが、ヨーロッパの底深い文化的土壌なのかと思ってしまいます。演奏開始のキューは演奏パートの首席奏者が体で示しています。最初のワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲とイゾルデの愛の死は低弦で始まるので、不意を突かれた形になります。冒頭のトリスタン和音の後、パウゼがはいりますが、よく指揮者なしで乱れることなしに演奏できるものです。アンサンブルはよく揃って見事な響きですが、必ずしも一糸乱れずという感じではありません。まあ、そういうことを目指しているんではないと思います。この曲はかって、フルトヴェングラーが素晴らしい録音を残していますが、それは彼の音楽思想を表現したものでした。そういう天才が音楽を思想として表現するものをこれまで聴いてきたわけですが、指揮者なしだということは単に音符を正確になぞるだけになってしまうのではないかという懸念もあります。今日の演奏は後期ロマン派の濃厚な香りを感じさせるものではありましたが、どこかすぽっと抜けているものもあるように感じて、そこのところはこう表現したい・・・saraiが指揮台に立って棒を振りたくなってしまいます。しかし、そのように聴衆一人一人が指揮者の立場で音楽を聴くというのが、この試みの狙いなのかもしれません。完全燃焼には至りませんでしたが、音響的には素晴らしい演奏でした。

2曲目のR.シュトラウスのオーボエ協奏曲は素晴らしい演奏でただただうっとりとしてしまいました。これほどの演奏は聴いたことがありません。その立役者はーボエ独奏のアレクサンドル・ガテAlexandre Gattetです。まさにR.シュトラウスの音楽そのものという完璧な表現。変な例えですが、シュヴァルツコプのソプラノでR.シュトラウスを聴いているようなものです。4つの最後の歌をオーボエで聴いているような思いに駆られます。そして、オーケストラに指揮者がいないので、オーケストラが変な自己主張をせずにオーボエの支え役にまわっているのが好感できます。それにしても第2次世界大戦勃発後から亡くなる1949年までの10年ほどのR.シュトラウスの音楽のいかに素晴らしいことか。絶頂期のシュトラウスの音楽の残照がほのぼのと光っています。オペラでは《ダナエの愛》、《カプリッチョ》、歌曲では《4つの最後の歌》、管弦楽曲では《メタモルフォーゼン》、そして、この《オーボエ協奏曲》。いずれもアイロニーに満ちた作品ばかりで聴いているものの胸をしめつけるような魅力があります。今日のオーボエのガテはそういう魅力を完璧に表現していました。これが聴けただけでもこのコンサートに足を運んだ甲斐がありました。

後半のシェーンベルクの交響詩《ペレアスとメリザンド》は若きシェーンベルクが後期ロマン派の爛熟した作品を完成させたものですが、その音響美は下手な音楽解釈は不要なもので、今日のような指揮者なしには適した作品に思えました。徹頭徹尾、濃厚なロマンがその音響的な美しさから香り立っていました。素晴らしい演奏に魅了されました。こういう演奏表現もあるんですね。

キャスト、演奏曲目は以下です。

 指揮者:なし
 オーボエ:アレクサンドル・ガテAlexandre Gattet
 管弦楽:レ・ディソナンスLES DISSONANCES コンサートマスター:ダヴィド・グリマルDAVID GRIMAL

 ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」前奏曲とイゾルデの愛の死(器楽版)
 R.シュトラウス:オーボエ協奏曲
  《アンコール》 超絶的なオーボエ独奏曲(曲目不詳)

 《休憩》

 シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》


予習は以下の通り、何故か、お好みでないカラヤン指揮ばかりになってしまいました。

 ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」前奏曲とイゾルデの愛の死
  ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィル、ジェシー・ノーマン 1987年8月、ザルツブルク音楽祭ライヴ

 R.シュトラウス:オーボエ協奏曲
  ローター・コッホ、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1969年9月、ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音

 シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》
  ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1974年1月、2月 ベルリン セッション録音


「トリスタンとイゾルデ」前奏曲とイゾルデの愛の死は素晴らしい演奏です。久しぶりにこの演奏を聴きましたが、とても美しい演奏です。カラヤンは後期ロマン派にその美質を活かします。

R.シュトラウスのオーボエ協奏曲はローター・コッホの安定した演奏とその表現力が見事です。R.シュトラウスを得意とするカラヤンも晩年のシュトラウスの穏やかな諦念を美しく表現します。素晴らしい演奏です。この曲でここまでの演奏は初めて聴きました。名曲ですね。

シェーンベルクの交響詩《ペレアスとメリザンド》は美しい演奏ですが、どこか、空々しく聴こえます。これはカラヤンの演奏を聴いたのは失敗でした。ロバート・クラフトを聴けばよかったと後悔します。しかし、時間切れでもう予習時間はありませんでした。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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