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モーツァルトはオペラだけじゃない 内田光子&マーラー・チェンバー・オーケストラ@ウィーン・コンツェルトハウス 2019.9.26

ちょうど2週間前にここでクルレンツィス&ムジカエテルナの演奏でモーツァルトのオペラを聴いたばかり。その後、スイス、フランスと旅してきて、今日また、ここに戻ってきました。そして、また、モーツァルト。モーツァルトはオペラが最高ですが、忘れちゃいけないのが、ピアノ協奏曲。現代のモーツァルトのピアノのオーソリティの内田光子の演奏を聴きます。前半のK.459はピアノの響きがもう一つでしたが、後半のK.466はピアノの響きが美しく響き渡り、最高の演奏。それ以上に素晴らしかったのは内田光子の指揮。深くて鋭いオーケストラの響きと考え抜かれた音楽表現で聴くものを魅了します。ピアニストの内田光子よりも音楽家の内田光子が光ります。第1楽章冒頭の抑えた弱音での表現にははっと驚かされます。妙にデモーニッシュな表現で演奏されることが多いですが、音楽家、内田光子の優れた音楽性ではもっと密やかで精神性に満ちた表現になります。伸びやかで思い切りのよい表現も見事です。第2楽章にはいると、美しく抒情に満ちたピアノとオーケストラの相互作用が密になります。美しいだけでなく、深い精神性にも満ちています。第3楽章は晴れやかな音楽がテンポよく展開されます。ピアノの指の回り具合も十分で聴き映えします。感動に満ちた音楽が上り詰めたところで終了。

マーラー・チェンバー・オーケストラの23人の弦楽器奏者で演奏されたR.シュトラウスのメタモルフォーゼンも終始、悲しみ色に満ちていて、胸が締め付けらる思いに駆られます。第2次世界大戦の終わり間近に書かれた、この作品は西欧文化のオワリを告げるような内容です。爛熟した文化はこのときを境として、別のものに変容していったのかもしれません。曲名がそのことを象徴しているかのごとくです。今日の演奏は何かに取り憑かれたように熱い思いに駆られたものでした。指揮者なしでもこういう演奏ができるんですね。

今日の公演内容は以下です。

 ピアノ&指揮:内田光子
 管弦楽:マーラー・チェンバー・オーケストラ

 モーツァルト:ピアノ協奏曲第19番ヘ長調 K.459
 R.シュトラウス:メタモルフォーゼン (指揮者なし)

  《休憩》

 モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466

  《アンコール》モーツァルト:ピアノソナタ第15番 ハ長調K.545より第2楽章 アンダンテ


予習の内容は以下です。(以前書いた内容のデッドコピーです。既に読まれたかたは読み飛ばしてくださいね。)

ここは内田光子の演奏で聴くべきところですが、その素晴らしい演奏は散々、聴いています。その上で、saraiの愛する最高の演奏を聴きます。予習というよりも楽しみです。
曲目が第19番 K.459と第20番 K.466とくれば、これは最愛のピアニスト、クララ・ハスキルの名演奏がたくさん残っています。
まず、第19番 K.459はハスキルの全録音8枚の中で最も録音と演奏の素晴らしい1枚がこれ。

 1959年2月19日、パリ(シャンゼリゼ劇場) コンスタン・シルヴェストリ指揮フランス国立管弦楽団

 これは最高の1枚です。何とステレオ録音です。音質もこれ以上ないほどの素晴らしさ。平林直哉氏の最高の仕事に感謝です。シルヴェストリ指揮のフランス国立管弦楽団はモーツァルトにしては少々、硬い印象ではありますが、立派な演奏と言えるでしょう。そして、ハスキルのピアノは非常に明確。やはり、純度の高い響きで格調ある演奏です。ハスキル・ファンとしては感涙ものと言える素晴らしい演奏と録音です。ハスキルを代表する1枚と言えます。どうして、世の中で評判にならないのか、とっても不思議です。第3楽章のハスキルの妙技、そして、それに触発されるかのように白熱するオーケストラ。これぞ、協奏曲と言える演奏に酔いしれるのみです。大変、感動します。会場から沸き起こる拍手と一緒に拍手します。まさにその場でライヴで聴いた思いになります。saraiの愛聴盤です。


次は第20番 K.466。名曲中の名曲ですね。ハスキルは11枚も録音を残しており、どれも素晴らしい演奏ばかりです。いずれもハスキルのファンならば、聴き逃せない演奏ばかりですが、とりわけ、1956年のカラヤン、1956年のミュンシュ、1959年のクレンペラーとのライヴ録音は素晴らしいの一語に尽きます。1954年のフリッチャイとのセッション録音、1954年のパウムガルトナー、1960年のマルケヴィッチも捨て去りがたい魅力に満ちています。やはり、ハスキルのピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466は大袈裟に言うと、人類の文化遺産の最高峰です。この中でsaraiの一番のお気に入りはこれ。

 1959年9月8日、ルツェルン音楽祭 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団(AUDITEハイレゾ) カデンツァ:ハスキル

 前に聴いていたURANIAのCDも音質こそ悪いですが、素晴らしい演奏でした。しかし、新たにAuditeのダウンロード販売で入手したハイレゾ音源はまるで奇跡のように素晴らしい音質で、オーケストラもハスキルのピアノの響きも素晴らしく磨きあがっています。とりわけ、ハスキルのピアノの高域のピュアーな響きと低域の深みのある響きは感涙ものの素晴らしさ。AUDITEのルツェルン音楽祭のハイレゾ音源シリーズでは、フルトヴェングラーのシューマンの交響曲第4番も見事に蘇りましたが、これはそれを上回る出来です。この演奏で聴くハスキルの音楽は一段と芸術上の高みに上った感があります。潤いのある、磨き上げられたようなピアノの響きで哀感のある音楽を奏でていきます。まさに輝くような演奏に引き込まれてしまいます。第2楽章の深い詩情にあふれた演奏には絶句するのみです。第3楽章もパーフェクトな響きで音楽が進行します。これこそ、ハスキルのモーツァルトを代表する名演奏です。クレンペラーもさすがに立派にオーケストラを鳴らしています。名指揮者と組んだときのハスキルは一段と輝きを増します。第1楽章の冒頭はいかにもデモーニッシュな雰囲気のオーケストラ演奏ですが、ハスキルの品格の高いピアノが入ってくると状況が一変します。あの名匠クレンペラーもハスキルの品格に合わせた演奏に切り替えます。モーツァルトの音楽の純粋さを際立たせるようなピアノとオーケストラがこの名曲の本質を奏でていきます。これこそ、真のモーツァルトの音楽であることを実感させてくれます。


ウィーン・コンツェルトハウスの内田光子&マーラー・チェンバー・オーケストラのモーツァルトのピアノ協奏曲の夕べでは、2曲の名曲の間に、R.シュトラウスの晩年の傑作、メタモルフォーゼンが演奏されます。不思議なプログラムです。予習では今まで聴いていなかった演奏を選びます。これまで聴いた中ではフルトヴェングラーとクレンペラーが双璧の演奏でした。今日はこれ。

 1967年8月、ジョン・バルビローリ指揮ニューフィルハーモニア管弦楽団

カップリングされているのは、名演奏で有名なマーラーの交響曲第6番。しかし、このメタモルフォーゼンも素晴らしい演奏。戦後20年ほど経った時点での戦勝国側のイギリスのメンバーによる演奏ですが、まさに戦争には勝者も敗者もなく、残されたのは悲しみだけという厳然たる真実を告げるかのような魂の演奏です。カラヤン&ベルリン・フィルの美しいけれども、どこか空々しい演奏とは一線を画す演奏に思えます。


メタモルフォーゼンを聴き終えて、内田光子の知的なプログラム構成に思いを巡らせます。共通項は“悲しみ”です。モーツァルトの音楽はピュアーな表現の持つ悲しみ。R.シュトラウスは父親の影響もあって、モーツァルトの音楽を音楽を再興しようと、「ばらの騎士」などの名曲を作り上げましたが、それは悲しみではなく、ウィーン風の軽みに満ちたものでした。しかし、晩年はこのメタモルフォーゼン、4つの最後の歌、カプリッチョ、ダナエの愛などで透徹した悲しみを表現するようになりました。およそ、150年を隔てたモーツァルトの音楽とR.シュトラウスの音楽を“悲しみ”で繋ぎ合わせようというのが、内田光子の思いだと考えましたが、その答えはコンサートで聴きとりましょう。




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ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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