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ゆるぎない安定感と流麗なバッハ:イギリス組曲第1番~第3番ほか The Bach Odyssey Ⅸ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2019.10.1

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の9回目。今回と次回(10月4日)でイギリス組曲全曲演奏という嬉しい機会です。前回のトッカータ全曲演奏を聴いて、今日はほぼ半年ぶりのアンジェラ・ヒューイットのバッハ演奏です。イギリス組曲全曲を聴くのは初めてです。楽しみにしていました。

で、今回の演奏ですが、アンジェラ・ヒューイットが今、旬の時を迎えていることを確信させる見事な演奏。イギリス組曲はその名前が示すように、フランス組曲、パルティータと並ぶ、アルマンド、クーラント、サラバンド、ブーレ、ジーグなどの舞曲を連ねた組曲の形をとったもので、saraiがバッハの音楽の形式の中でも特に好む形式です。割に若いときの作品ですが、若さゆえの勢いや様式感を探るような多様性があり、不発の曲や楽しく、面白い曲、哀感の漂う曲などが混在している印象です。

冒頭の第1番は曲としてはバッハらしからぬ、まとまりを欠く感じですが、アンジェラ・ヒューイットの演奏はゆるぎない確信に満ちた堂々たるもので、その流麗な流れには、音響的に聴き映えがします。まあ、退屈と言えば、退屈ですが、ここはヒューイットの妙技と素晴らしい響きに体を委ねます。

第2番は一転して、格調の高い名演奏に強い感銘を覚えます。前奏曲のテンポの早い演奏に驚かされますが、そのテンポで一気に弾き切るテクニックは素晴らしいです。それに新鮮でダイナミックでもあります。アルマンド以降はテンポも落ち着き、深く心に浸透するような音楽が流れます。ピアノがファツィオリのせいか、以前のヒューイットの演奏とは一線を画し、オリジナリティと格調の高さが印象的です。よほど譜面を読み直したのではないでしょうか。表層的な演奏とは次元が異なる演奏です。イギリス組曲ではない別の音楽を聴いているような錯覚に陥るほどです。サラバンドの深い抒情性、颯爽としたジーグ、素晴らしい演奏に絶句します。ただし、saraiの受容力を超えた演奏でもあり、CDに再録音してもらって、じっくりと聴き直したい感じです。

後半の最初はまったく聴いたことのない組曲ヘ短調BWV823。楽譜の残存する3曲のみでバッハの真作であるかどうかも議論があるそうです。このうち、最初の2曲、前奏曲とサラバンドは単純な作品ながら、なかなか、面白い作品で、ヒューイットの演奏も素晴らしいです。初めて聴いたとは思えないのが、かえって、真作らしくないのかもしれませんが、ともかく、聴いていて楽しい演奏でした。3曲目のジーグはとてもバッハの作品には思えないものですね。

次はイギリス組曲第3番。これは前奏曲のダイナミックな演奏から惹き付けられます。アルマンドもクーラントも流麗でゆるぎない安定感に満ちた素晴らしい演奏。サラバントはかみしめるような思いに満ちた、ゆったりした圧巻の演奏。続くガヴォットは実に軽やかな魅惑的な演奏で耳に楽しいばかり。最後のジーグはフーガの精神にあふれた壮麗さにあふれた演奏で全曲を締めくくります。素晴らしい演奏に感銘を受けました。

最後は前奏曲とフーガ イ短調BWV894。どこか懐かしさを秘めていながら、テンポの早い勢いのある演奏で、とても聴き映えがします。フーガもそれほど対位法を感じさせない小気味のよい演奏で、フィナーレは華やかに高潮して終わります。

ともかく、イギリス組曲の第2番と第3番が圧巻の素晴らしさでした。3日後の残り3曲も楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅸ

 イギリス組曲第1番イ長調BWV806
 イギリス組曲第2番イ短調BWV807


 《休憩》


 組曲ヘ短調BWV823
 イギリス組曲第3番ト短調BWV808
 前奏曲とフーガ イ短調BWV894

《アンコール》

 ラモー:新クラブサン組曲またはクラブサン曲集第2集(第4組曲)より第5曲ファンファリネット


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDを軸に聴きました。

 バッハ:イギリス組曲等
  アンジェラ・ヒューイット 2003年頃 ヘンリー・ウッド・ホール、ロンドン ピアノ:スタインウェイ

バッハのイギリス組曲は少し前のスタインウェイでの演奏です。第2番と第3番と第6番は見事な演奏。曲によっては物足りない演奏もあります。実演ではきっと、最高の演奏を聴かせてくれるでしょう。ファツィオリでどんな響きになるかも楽しみです。


来年の2回のコンサート、バッハ・オデュッセイ11と12は次のようなプログラムになります。これで4年間にわたるバッハ・オデュッセイも大団円です。もちろん、saraiもチケットの優先予約を申し込みましたよ。

バッハ・オデュッセイ11 2020年5月25日

 4つのデュエット BWV.802-805
 18の小前奏曲 BWV.924-928,930,933-943,999
 幻想曲とフーガ イ短調 BWV.944
 フランス風序曲ロ短調 BWV.831
 イタリア協奏曲ヘ長調 BWV.971

バッハ・オデュッセイ12 2020年5月27日

 フーガの技法 BWV 1080




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ジャンル : 音楽

       アンジェラ・ヒューイット,

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昨日投稿した記事の一部に誤りがありました。ドイツ騎士団の中庭はパスしないで、ちゃんと見ていました。追記・修正しました。申し訳ありません。

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えりちゃさん、saraiです。お久しぶりです。

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