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静謐極まりないリゲティ ジャン=ギアン・ケラス、トマーシュ・ネトピル&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.11.29

今日はチェコの精鋭指揮者のトマーシュ・ネトピルに期待大です。ネトピルは8年前にパリオペラ座(ガルニエ宮)でヤナーチェクの《カーチャ・カバノヴァ》を聴いて以来ですが、そのときの彼の指揮の素晴らしかったことが今でも耳に残っています。そのときのブログ記事を読み返すと、ネトピルの指揮でヤナーチェクのオーケストラ曲を聴いてみたいと書いていました。今回の来日で別の読響の公演でヤナーチェクの《シンフォニエッタ》を演奏したようです。ああ、聴きたかった!

ともあれ、まずはモーツァルトの歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲でコンサートが始まります。いやはや、これが素晴らしかった。ネトピルの的確な指揮のもと、読響のアンサンブルが透明な響きでパーフェクトな演奏。非常に感銘を受けました。この曲は今年の9月にルツェルン音楽祭でクルレンツィス指揮ムジカエテルナの途轍もない演奏を聴いたばかりですが、今日のネトピル&読響も優るとも劣らない素晴らしい演奏を聴かせてくれました。

次はオーケストラの定期演奏会では異例のチェロの独奏です。共演のチェロ奏者、ジャン=ギアン・ケラスの希望で、リゲティのチェロ協奏曲に先立っての無伴奏チェロ・ソナタ。リゲティはハンガリー出身のユダヤ人作曲家で、1956年のハンガリー動乱の後、ハンガリーの多くのユダヤ人と同様に亡命して、ウィーンに移住しました。ウィーンに移住後、リゲティはシュトックハウゼンを始めとした、西側の現代音楽に影響されることになります。無伴奏チェロ・ソナタは亡命前のハンガリー時代の作品で、まだまだ、穏やかな作品です。ケラスのチェロは彼の人柄と似合わしく、優し気な演奏で、実にインティメットで静謐な演奏です。短い作品ですが、リゲティの若き日の名作、しっかりと堪能させてもらいました。

そして、チェロ協奏曲です。これは西側に亡命した後の1967年の作品です。ピアノ記号が8つも並ぶ超弱音で独奏チェロが持続音を弾き始めます。そして、次第に響きが豊かになるとともにオーケストラもチェロの響きと融合しながら、静謐な音の空間を形成していきます。ケラスのチェロは決して激することなく、あくまでも優し気な静謐な響きを保ちます。リゲティ特有の宇宙空間を漂うかのような幽玄な音響空間が静かに静かに広がっていきます。そして、最後はまた無に帰することになります。リゲティの音楽は静寂に始まり、静寂に終わります。こういうリゲティの作品が演奏されるのにサントリーホールは最も適しているかもしれません。何故って、世界でも最高級の聴衆が作り出す静寂の空間はサントリーホールだけだからです。演奏者と聴衆が作り出すのが音楽であることがまた実感できました。

休憩後の後半はネトピルのお国もののスークのアスラエル交響曲です。指揮よし、オーケストラよしですが、作品自体の魅力がもう一つ。抒情性にあふれて、民族色もありますが、いずれもそこそこの感じ。師匠のドヴォルザーク、弟子のマルティヌーには音楽性で及ばないようです。それにしても、読響のオーケストラ能力の高さには今日も舌を巻きました。一流指揮者が振ると、鉄壁です。ネトピルももっと上のポジションを狙える逸材です。チェコ・フィルはフルシャとネトピルのどちらが掌握することになるんでしょうか。ネトピルはオペラのピットのほうが似合うかもしれません。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:トマーシュ・ネトピル
  チェロ:ジャン=ギアン・ケラス
  管弦楽:読売日本交響楽団 白井圭(コンサートマスター(ゲスト))

  モーツァルト:歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲
  リゲティ:無伴奏チェロ・ソナタ
  リゲティ:チェロ協奏曲
   《アンコール》バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番より、サラバンド

   《休憩》

   ハ短調 Op.27

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトの歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲を予習したCDは以下です。

 オットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1964年 セッション録音

クレンペラーがモーツァルトを振ると、なんだか重くなりそうな感じですが、そんなことはありません。実に軽快で颯爽とした見事な演奏でした。


2曲目のリゲティの無伴奏チェロ・ソナタを予習したCDは以下です。

 ピーター・ウィスペルウェイ 2008年8月、オランダ、オンデル・デ・リンデン ライヴ録音
 
ウィスペルウェイはバッハの無伴奏と同様にこのリゲティも見事に弾きこなしています。


3曲目のリゲティのチェロ協奏曲を予習したCDは以下です。

 ジャン=ギアン・ケラス、ピエール・ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン 1992年10月、パリ、IRCAM-Studio スタジオ録音
 
若きケラスが巨匠ブーレーズとコンビを組んで録音したアルバムです。やはり、ブーレーズの演奏という色彩が濃いものです。ケラスはもっともっと熟成して今日に至ります。


4曲目のスークのアスラエル交響曲を予習したCDは以下です。

 イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 2014年10月2-3日、プラハ

ビエロフラーヴェクが亡くなる2年半ほど前に録音した貴重なアルバムです。さすがの演奏です。
 


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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