FC2ブログ
 
  

新年は意欲的なプログラムでスタート 下野竜也&読売日本交響楽団@サントリーホール 2020.1.15

今年初めてのコンサートはやっぱりサントリーホール。昨年最後のコンサートもサントリーホールでした(みなとみらいホールのジルヴェスターコンサートは除いて)。昨年はサントリーホールに23回通いました。ほぼ月2回のペースですね。

ともあれ、今日のコンサートは実に意欲的なプログラム。ショスタコーヴィチを除けば、あまり、コンサートで取り上げられない作曲家、ジョン・アダムズ、モートン・フェルドマン、ソフィア・グバイドゥーリナという面々です。にもかかわらず、サントリーホールがそうガラガラというわけではないのが、東京のクラシックファン人口の層の厚さです。

最初のショスタコーヴィチのエレジーは、歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」の第1幕でタイトルロールのカテリーナが歌うアリアをもとに弦楽四重奏用の作品にしたものです。実に哀愁あふれる作品です。今日はそれが弦楽合奏で演奏されました。2017年のザルツブルク音楽祭でこの歌劇を聴いた記憶が鮮明に蘇ります。昨年末に亡くなったヤンソンスの素晴らしい指揮でした。今日の演奏はしっとりと抑えた演奏で静謐な雰囲気が醸し出され、オペラとはまた違った感銘を与えてくれました。終盤の第2ヴァイオリン、チェロ、ビオラの首席のソロの3重奏は美しく、印象的なものでした。コンミスの日下紗矢子がリードした第1ヴァイオリンの密やかな合奏も見事で魅了されました。下野竜也の丁寧でよく考えられた音楽作りが光った一品です。

次はポスト・ミニマルの旗手であるアメリカの作曲家ジョン・アダムズのサクソフォン協奏曲。人気の若手サクソフォン奏者、上野耕平の登場です。ポスト・ミニマルの音楽は音型の厳密な反復のミニマル音楽を自由なロマン的要素を加えたものですが、この曲はミニマル音楽とサクソフォンのジャズ的な要素をかけ合わせた斬新なものです。上野耕平の見事なサックスが炸裂した素晴らしい演奏でしたが、それを認めた上で、もっとフリージャズ的な奔放さも聴きたかったというのが正直な感想です。終盤の熱い盛り上がりには興奮させられましたけどね。

休憩後の後半の2曲はいずれも日本初演という意欲的なプログラム。
まずはアメリカの作曲家、モートン・フェルドマンのOn Time and the Instrumental Factor。先ほどのポスト・ミニマルや最近のロマン的傾向の調性を感じさせる現代音楽とは一線を隔する厳しい音楽です。調性どころか、無調の音列的な要素も排除し、ただただ、音の響きと無音を繰り返し、スタティックな音場を現出させるのみ。これを退屈と見るか、修行の道と思うか、難しいところです。甘い傾向に流れがちの最近の現代音楽へのアンチ・テーゼとしては、刺激的ではあります。演奏自体は読響の優秀なアンサンブルの美しい響きが素晴らしいものでした。ただ、下野竜也のきっちり拍を刻む指揮は視覚的にはちょっと面白くない感じ。演奏上は必要なんでしょうが、どうにかならないものかな。まあ、見なければいいんですけどね。

最後は近年、その名を聞くことが多くなったロシアの作曲家ソフィア・グバイドゥーリナの《ペスト流行時の酒宴》の日本初演です。実はグバイドゥーリナの音楽を聴くのは初体験なんです。今日の演奏にはいたく刺激を受けました。冒頭の金管のモティーフが全曲に渡り、登場しますが、その変幻自在ぶりに次第に心を惹かれていきます。終盤の高潮とあっけない結末に心躍るものがありました。これまで聴いた経験のない方向性の音楽に強い興味を感じさせられました。ところで曲の後半に電子音楽(テープ音楽)がオーケストラの響きに重なってきます。とても短いフレーズが何度も流れます。指を折って、カウントしましたが、プログラムの解説通り、16回登場しました。このテープ音が違和感なく、オーケストラの響きに和しているのに驚きます。サイモン・ラトルやヤンソンスがこの曲を何度も取り上げているのが何となく理解できました。今後、世界のオーケストラの定番曲のひとつになるかもしれませんね。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:下野竜也
  アルトサクソフォン:上野耕平
  管弦楽:読売日本交響楽団 日下紗矢子(コンサートミストレス)

  ショスタコーヴィチ:エレジー(シコルスキ編の弦楽合奏版)
  ジョン・アダムズ:サクソフォン協奏曲
   《アンコール》テュドール:クウォーター・トーン・ワルツ

   《休憩》

  フェルドマン:On Time and the Instrumental Factor(日本初演)
  グバイドゥーリナ:ペスト流行時の酒宴(日本初演)

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のショスタコーヴィチのエレジーを予習したCDは以下です。

 アレクセイ・ウトキン指揮(およびオーボエ) エルミタージュ室内管弦楽団  2004年10月 2005年2月 モスクワ演劇学校、ロシア放送局第5スタジオ、モスクワ セッション録音

独奏オーボエと弦楽合奏のための編曲版です。オーボエが歌うように演奏しています。美しい演奏です。


2曲目のジョン・アダムズのサクソフォン協奏曲を予習したCDは以下です。

 ティモシー・マカリスター(Sax)、デイヴィッド・ロバートソン指揮セント・ルイス交響楽団 2013年10月5-6日 パウウェル・ホール、セント・ルイス
 
作曲された年に早くも録音されたものです。ジャズっぽいサクソフォンの演奏が光っています。


3曲目のフェルドマンのOn Time and the Instrumental Factorを予習したCDは以下です。

 ブラッド・ラブマン指揮ベルリン・ドイツ交響楽団 2009/10年録音

この曲の初録音盤です。演奏の良し悪しは判断できません。


4曲目のグバイドゥーリナのペスト流行時の酒宴を予習したCDは以下です。

 マリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団 2011年10月21日 アムステルダム、コンセルトヘボウ ライヴ録音
 
昨年末に亡くなったヤンソンスのコンセルトヘボウ管 首席指揮者勇退記念リリースのライヴ放送録音集1990-2014(CD13枚、DVD1枚)の中から、聴きました。ショスタコーヴィチを始め、ロシアものの演奏は見事でしたが、この演奏もそのひとつ。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!








関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR