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庄司紗矢香の空前絶後のショスタコーヴィチに驚愕! サロネン&フィルハーモニア管弦楽団@東京芸術劇場 2020.1.28

物凄い演奏! 終始、緊張感高い演奏に集中させられました。庄司紗矢香の表現する魂の声にただただ、共感するのみです。第1楽章は暗く重い表現かと思いきや、幽玄たる夜の歌です。庄司紗矢香は己の心の中に入り込んで、その魂の声を探るような雰囲気ですが、その心を我々聴衆にも開いてくれます。ショスタコーヴィチのこの音楽がこれほどの深さを持って奏でられたことがあるでしょうか。彼女とともに深い感動を味わいます。第2楽章は一変して、激しい突っ込みの音楽ですが、単なる心地よい音楽ではなく、そこにはある種の感動があります。強い気持ちで邁進していく音楽に途轍もない感動を覚えて、涙が滲みます。音楽的に頂点を形作ったのは第3楽章です。オーケストラの宗教的なコラール風のフレーズに続いて、庄司紗矢香のヴァイオリンが奏でるのは祈りの音楽です。どこか哀しみのある祈りは一体、何に対するものでしょう。祈りであり、哀歌でもあります。その音楽が高潮していくと、祈りをも超越したスケールの大きな魂の高揚に至ります。ショスタコーヴィチはこんなに凄い音楽を書いていたことに初めて気づかされます。そして、この楽章は長いカデンツァでしめくくられます。ショスタコーヴィチの魂の声、庄司紗矢香の魂の声、saraiの魂も共鳴します。バッハの無伴奏、バルトークの無伴奏にも匹敵する無明の音楽ですが、この音楽にはわずかな色が感じられます。庄司紗矢香の完璧なヴァイオリン独奏はカデンツァ終盤で頂点に上り詰めて、そのまま、第4楽章に突入します。再び、何かと戦うように突進が始まります。凄まじい気魄で庄司紗矢香のヴァイオリンは突き進みます。大変な感動の中、圧巻のフィナーレ。
これほどの感動、そして、緊張感の高い音楽を聴いたのは、生涯でも数度の経験です。もはや庄司紗矢香は世界の音楽界の頂点に君臨すると言っても過言ではないでしょう。彼女のヴァイオリンは長く聴き続けていますが、これほどの逸材に上り詰めるとは想像もできませんでした。天才が血の滲むような努力の末の結果でしょう。彼女のこういう姿を生きているうちに聴くことができて、満足感と幸福感に酔い痴れています。

それにしても、庄司紗矢香はいつもよりもふっくらした顔で、これまでの可愛らしさをかなぐり捨てた、物凄い形相でヴァイオリンを奏でました。ある意味、かってのチョン・キョンファを思い出します。見かけの美しさは悪魔にでも売って、すべてを音楽に捧げ尽くすといった究極の演奏家の姿です。彼女はこれから、どれほどの音楽的な高みを目指すのでしょう。空恐ろしいほどの予感に目が眩む思いです。

と、ここまでは帰りの電車の中で書きました。究極の演奏が心に留まっているうちにその高揚感を書き綴っておきたかったからです。少々、表現が上滑り気味ですが、ご容赦ください。

今年でフィルハーモニア管弦楽団の音楽監督を完了するサロネンについても少し触れておきましょう。凄過ぎる庄司紗矢香のヴァイオリンにふさわしい指揮をサロネンは披露してくれました。オーケストラを抑え気味に庄司紗矢香のヴァイオリンを引き立てながらも、ショスタコーヴィチのオーケストラパートも申し分のないドライブで見事な指揮でした。さすがです。

1曲目のシベリウスはまるで交響曲の第1楽章を聴いたような素晴らしい演奏。サロネンのシベリウスはいつも最高です。

プログラム後半のストラヴィンスキーのバレエ音楽『火の鳥』は組曲版ではなく、1910年原典版で全曲が演奏されました。さすがに長いし、バレエももちろん、ありませんが、サロネンの指揮は素晴らしく、フィルハーモニア管弦楽団の能力以上のものを引き出していました。特に後半にかけての迫力ある演奏は素晴らしいものがありました。言い古された表現ながら、色彩感あふれる演奏とはこのような演奏を表現するものでしょう。客席にいたバンダの演奏効果は見事でした。これでトゥッティのアンサンブルがピタッとはまっていれば完璧でしたが、まあ、そこまではね。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:エサ=ペッカ・サロネン
  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団

  シベリウス:交響詩『大洋の女神』Op. 73
  ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 Op. 77
   《アンコール》シベリウス:水滴

   《休憩》

  ストラヴィンスキー:バレエ音楽『火の鳥』全曲 1910年原典版

   《アンコール》
    ラヴェル:《マ・メール・ロワ》より、《妖精の園》


最後に予習について、まとめておきます。

シベリウスの交響詩『大洋の女神』を予習したCDは以下です。

  パーヴォ・ベルグルンド指揮ボーンマス交響楽団 1972年 セッション録音

シベリウスはやはり、ベルグルンドが最高です。新鮮で瑞々しい演奏です。


ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番を予習したCDは以下です。

  リサ・バティアシュヴィリ、エサ=ペッカ・サロネン指揮バイエルン放送交響楽団 2010年5月 ミュンヘン、ヘルクレスザール セッション録音
  ヒラリー・ハーン、マレク・ヤノフスキ指揮オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 2002年、オスロ セッション録音

バティアシュヴィリの美しい響きの演奏は完璧に思えました。しかし、22歳のヒラリー・ハーンの演奏を聴くと絶句します。そのクールな演奏はこの曲の真髄の迫るものに思えました。ヒラリーの青春の残像です。しかし、この2つの素晴らしい演奏に対して、今日の庄司紗矢香の演奏は遥かに凌駕するものでした。初演したオイストラフと比べてみたくなります。後で聴いてみましょう。


ストラヴィンスキーのバレエ音楽『火の鳥』を予習したCDは以下です。

  フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル 2010年10月2日,パリ,シテ・ド・ラ・ミュジーク、10月9日,ラン大聖堂 ライヴ録音

ピリオド楽器で演奏された驚きの録音ですが、今や、この演奏が決定盤と言っても差し支えないでしょう。素晴らしい演奏、響きです。



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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
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07/08 18:59 sarai

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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
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06/18 12:46 sarai

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コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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