東響のサントリー定期、再開! コンサートのない日常は非日常だったことを痛感! 愛する東響よ、頑張れ!@サントリーホール 2020.6.26
久しぶりに再開したサントリーホールに行くと、エントランスはスタッフの方が大勢いて、ものものしい感じ。まずは手のアルコール消毒を促されます。次いで、平積みになっているプログラムを自分自身で手に取ります。チケットは半券を自分で切って、箱に投入。これでやっとホールに入場します。
自分の席にいくと、左右の隣席と前後の席は空席。ホール全体がこの状況。要するに定員の半数の席になっているということです。開演になるころにはその状態でほぼ全体が埋まっていて、それほど、空席が目立つ感じではありません。いつもよりゆったりという感じで、これならいつもこれでいいかなって思います。オーケストラの経営がこれでは立ち行かないことはもちろんですけどね。
オーケストラは管楽器奏者以外はみんなマスク着用。指揮者もそしてピアノの田部京子もマスク着用。聴いているこちらもマスク着用していると息苦しくなりますが、実際に演奏するかたは酸欠状態にならないのか、心配ですが、やはり、そこはプロ。何事もなかったように音楽を奏でていきます。
最初はベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲。東響はブランクを感じさせない素晴らしいアンサンブル。弦楽器パートはさすがにいつもの最高のレベルではありませんでしたが、十分、満足しました。女性奏者が中心の木管パートが今日の白眉でした。主部のリズミカルな部分の演奏が見事でした。
次はベートーヴェンのピアノ協奏曲 第3番。田部京子のベートーヴェンは古典主義の様式感にのっとりつつも、美音と切れの良いタッチ、それにいつもの詩情にあふれた素晴らしい演奏でした。第1楽章はスケール感よりも繊細で粒立ちのよいタッチが印象的な演奏です。東響のアンサンブルともバランスよく、まろやかな響きで、古典主義の王道をいくような音楽です。第2楽章のピアノのソロが始まると、その美しい響きに聴き惚れるのみです。まさに田部京子の独壇場。抒情に満ちた音楽は天国的です。第3楽章はロンドの軽やかな音楽が続きますが、終盤に至り、高潮していきます。圧倒的なコーダで音楽を閉じます。
3か月振りのコンサートがこの田部京子と東響という最高のコンビで聴けたことにただただ感謝したくなるような素晴らしい演奏でした。完全に満足しました。これ以上の音楽は聴けません。来月に聴く筈だった田部京子のリサイタルは残念ながら、中止になりましたが、代わりにこんなものが聴けるとはね。
休憩後、メンデルスゾーンの交響曲 第3番「スコットランド」。東響の弦楽器パートもだんだん、本領を発揮して、響きが研ぎ澄まされていきます。哀愁に満ちた旋律美の底にメンデルスゾーンの古典回帰とも思える端正な音楽が潜んでいることを明確に表現するような演奏です。つまり、表面的な美しさは表出していますが、メンデルスゾーンの音楽はそれだけではなく、どこか、古典的な哀しみにあふれていることもあわせて表現するような深い演奏です。ここでも木管パートの素晴らしさが際立ちます。とりわけ、クラリネットは最高! この曲を聴き終えて、saraiはメンデルスゾーンの最高傑作であると断じたい気持ちになりました。メンデルスゾーンの再評価が進む中、素晴らしい演奏に出会えました。
やはり、実演に優る音楽はありませんね。音楽の世界も我々の下に戻ってくれつつあることを喜びたい気持ちでいっぱいです。
もちろん、2日後の川崎定期にも駆けつけますよ。同じプログラムですが、それがいいんです。
今日のプログラムは以下です。
指揮:飯守泰次郎
ピアノ:田部京子
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃
ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」序曲 Op.43
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 Op.37
《アンコール》 メンデルスゾーン:無言歌集 第2集から「ベネツィアの小舟」
《休憩》
メンデルスゾーン:交響曲 第3番 イ短調 op.56「スコットランド」
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲は以下のCDを聴きました。
レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィル 1968年11月 ウィーン、ムジークフェライン大ホール ライヴ録音
2曲目のベートーヴェンのピアノ協奏曲 第3番は以下のCDを聴きました。
内田光子、サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィル 2010年2月10日 ベルリン、フィルハーモニール ライヴ録音
アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウィーン交響楽団 1979年、TV放送のために催された特別公開演奏会でのライヴ録音
内田光子はクルト・ザンデルリンクとの力演も記憶に残りますが、このCDもその強靭でかつ繊細なスタイルの演奏で見事な演奏です。ミケランジェリとジュリーニはもう何も言うことのない歴史に残る名演です。
3曲目のメンデルスゾーンの交響曲 第3番「スコットランド」は以下のCDを聴きました。
オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団 1960年1月22,25,27,28日、ロンドン、アビー・ロード・スタジオ セッション録音
クレンペラーということで荘重な演奏を予想していたら、なんとなんと瑞々しくて軽やかな演奏。メンデルスゾーンの本質を突く素晴らしい演奏です。巨匠の凄さを再認識しました。決定盤のひとつでしょう。
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