ベルヴェデーレ宮殿のオーストリア・ギャラリー:クリムト、シーレ、ラープ、マッシュ、フリードリヒ、ダヴィッド、ジェラール
ベルヴェデーレ宮殿Schloss Belvedereの上宮Oberes Belvedereのオーストリア・ギャラリーÖsterreichische Galerie Belvedereで絵画鑑賞中です。
素晴らしいクリムト、シーレの作品に魅了されています。
グスタフ・クリムトGustav Klimtの1917/1918年、55/56歳頃の作品、《ヨハンナ・シュタウデの肖像Johanna Staude》です。クリムトの遺作であり、最後に描かれた肖像画のひとつです。モデルのヨハンナ・シュタウデ(未亡人のヴィドリッカ)は当時、34歳であり、彼女は現代の天使とも呼ばれ、ともかく、現代的なファッション感覚を身に着けた最先端のモデルだったようです。ショートヘアでお洒落なドレスを着ています。そのドレスはウィーン工房Wiener Werkstätteによるものです。肖像画自体は以前のものと比べると、その穏やかでシンプルな構成が特徴的です。ただし、この肖像画は未完であり、唇が完成していません。その理由はクリムトによると、彼女がスタジオに来なくなったからだそうです。背景も単色で塗られていますが、装飾画的に描き直される可能性も考えられます。いずれにせよ、色んな意味でクリムトにしては一風変わった肖像画です。

エゴン・シーレEgon Schieleの1917年、27歳頃の作品、《抱擁Die Umarmung》です。シーレの晩年の傑作です。1917年と翌年の亡くなる1918年のシーレ作品はすべて傑作揃いで、saraiは大好きなものばかりです。これも素晴らしい作品で、男女の愛を描いたという事実を超えて、その画面を通して、人間の互いに思いやる優しい気持ちを永遠に結びつけるような究極の作品です。

ゲオルク・マーティン・イグナーツ・ラープGeorg Martin Ignaz Raabの1874年、53歳頃の作品、《皇帝フランツ・ヨーゼフ1世Kaiser Franz Joseph I.》と《皇后エリザベートKaiserin Elisabeth》です。王室の肖像画を多く手掛けたゲオルク・ラープによる皇帝夫妻です。もっとも二人の肖像画を並べただけで、別々の肖像画ですけどね。やはり、エリザベートの美しさが光りますね。

フランツ・フォン・マッシュFranz von Matschの1916年、55歳頃の作品、《死の床の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世Kaiser Franz Joseph I. auf dem Sterbebett》です。皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の死は実質的におよそ400年続いたハプスブルク帝国の終焉を示すものでもありました。

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒCaspar David Friedrichの1822/1823年、48/49歳頃の作品、《エルベサンドスタイン山の風景Felsenlandschaft im Elbsandsteingebirge》です。saraiはフリードリヒの絵画が好きでドイツの美術館ではまず、フリードリヒの作品を探します。ドイツ以外では、このウィーンの美術史美術館にフリードリヒの作品があることを知っていましたが、まさか、この美術館にもあることは知らず、今日、初めて、その存在を知りました。迂闊でした。ここにはフリードリヒの作品が6枚も所蔵されているようです。今回はこの1枚だけを見ることができました。エルベ川沿いのいわゆるザクセン・スイスのようですね。フリードリヒらしく、崇高な自然が描き出されているロマン派らしい絵画です。意外な邂逅で嬉しくなりました。

ジャック=ルイ・ダヴィッドJacques-Louis Davidの1801年、53歳頃の作品、《サン=ベルナール峠を越えるボナパルトBonaparte franchissant le Grand-Saint-Bernard》です。この有名なナポレオンの絵がここで見られるのは意外ですが、この絵は全部で5枚描かれ、ヴェルサイユ宮殿などに展示されています。この美術館にある絵は元々、ナポレオンの支配下だったミラノにあったものを後にミラノを支配下に収めたオーストリアが強引にウィーンに持ち去ったものです。本来なら、返還交渉が行われるところですが、フランス国内にも同じ絵があることで、あまり、問題になっていないようです。まあ、何とも勇ましい作品ですね。ダヴィッドの代表作とは言えませんが、こんなに有名な絵もそんなにありません。

フランソワ・ジェラールFrançois Pascal Simon Gérardの1801年、53歳頃の作品、《モリッツ・クリスティアン・フォン・フリース帝国伯と妻のマリア・テレジア・ヨゼファと息子モリッツMoritz Christian Reichsgraf von Fries mit seiner Frau Maria Theresia Josepha, geb. Prinzessin Hohenlohe-Waldenburg-Schillingsfürst, und dem Sohn Moritz》です。フランソワ・ジェラールはダヴィッドの弟子の新古典主義の画家です。ナポレオンの肖像を描いています。師のダヴィッドに代わって、レカミエ婦人の肖像も描いています。この肖像画もいかにもフランスの新古典主義らしい描き方の美しい絵画です。

これで急ぎ足の美術館鑑賞は終了。
世紀末芸術の傑作揃いで、圧巻の展示にまたまた感銘を受けました。なかでも、たっぷりと、クリムトとシーレを堪能しました。
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!

- 関連記事
-
- ウィーンと言えば、カフェ・ハイナー。夕食はホイリゲで。
- ベルヴェデーレ宮殿のオーストリア・ギャラリー:クリムト、シーレ、ラープ、マッシュ、フリードリヒ、ダヴィッド、ジェラール
- ベルヴェデーレ宮殿のオーストリア・ギャラリー:ココシュカ、シーレ、クリムト・・・とりわけ、シーレの最高傑作《家族》に感動!