英国の音楽尽し!東京都交響楽団@東京芸術劇場 2014.11.4
今日演奏されるヴォーン・ウィリアムズのノーフォーク狂詩曲第2番を予習しようとして、手持ちのCDのヴォーン・ウィリアムズ全集を探しても、第1番しかありません。おかしいと思って調べたら、第2番と第3番は作曲家自身が破棄した幻の作品なので、全集にも収録されているわけがありません。しかし、第2番は最近、復活されて、CD化もされているようです。その唯一のCDがヒコックス指揮のロンドン交響楽団のもの。ネットからダウンロードして聴いてみました。やはり、ノーフォーク地方の民謡を主題にした作品で、長閑な曲でした。そんなに無理して復活させなくても、第1番で十分だったのではと思わなくもありません。
ディーリアスのヴァイオリン協奏曲は、やはり、今まで聴いたことがありません。チェロ協奏曲はもちろん、聴いていますけどね。予習したCDでこの曲を初めて聴きましたが、とても素晴らしい演奏でした。
タスミン・リトル(ヴァイオリン)、A.デイヴィス&BBC響
ウォルトンの交響曲第1番は初め、次のCDを聴きましたが、さすがハイティンクらしい堂に入った演奏。
ハイティンク&フィルハーモニア管
別のCDも聴いてみました。
プレヴィン&ロンドン響 併録(ウォルトン:ヴィオラ協奏曲(ヴィオラはバシュメット))
これが大当たり! こういうのを隠れた名盤とでも言うのでしょう。あまりの素晴らしさに度肝を抜かれました。内面に秘めたエネルギーに満ちた演奏に大変、感動を覚えました。このウォルトンの作品の本質を抉り出すような演奏です。プレヴィンの評価もsarai的には、うなぎのぼり。それにこのCDはRCAから出されたものですが、プレヴィンのRCAものは実際はDECCAの録音チームの手によるものだとかで、素晴らしい音質で曲のダイナミズムを余すところなく伝えてくれます。《プレヴィン:RCAイヤーズ》というシリーズの1枚です。以下のリンクからHMVオンラインで購入できます。sarai絶対のお勧めです。
交響曲第1番、ヴィオラ協奏曲 バシュメット(ヴィオラ)プレヴィン&ロンドン交響楽団
というわけで、この隠れ名盤を聴き、にわかにウォルトンの交響曲第1番を聴くのが楽しみになってきました。果たして、マーティン・ブラビンズ指揮の東京都交響楽団はプレヴィン&ロンドン響の演奏にどれほど肉薄できるでしょうか。
今日のプログラムは以下です。
指揮:マーティン・ブラビンズ
ヴァイオリン:クロエ・ハンスリップ
管弦楽:東京都交響楽団
ヴォーン・ウィリアムズ:ノーフォーク狂詩曲第2番ニ短調
ディーリアス:ヴァイオリン協奏曲
《アンコール》プラキディス:2つのきりぎりすの踊り ヴァイオリン独奏のための
《休憩》
ウォルトン:交響曲第1番変ロ短調
まず、前半はヴォーン・ウィリアムズのノーフォーク狂詩曲第2番からです。これは英国外での初演になります。初演っていいですね。曲はチェロの独奏で静かに始まります。初演とは思えないほど、見事に整ったアンサンブルです。いかにも英国を思わせる木の温もりを思わせる響きが聴こえてきます。特にヴィオラの演奏が素晴らしい。とても素晴らしい演奏に聴き入ってしまいました。静謐な部分の演奏が特に見事でした。ヒコックス&ロンドン交響楽団のCDも凌駕するかと思える演奏に感銘を受けました。
前半の最後はディーリアスのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリンのハンスリップは若手の女性ですが、ザハール・ブロンの指導を受けているとのことで、堅実な演奏を聴かせてくれました。及第点の演奏ですが、さらにヴァイオリンの響きに磨きをかけると演奏の質が上がると感じました。うっとりとヴァイオリンの響きに酔いしれるというところまではいかなかったのが残念です。アンコール曲はラトヴィアの作曲家プラキディスの民族音楽的な要素を現代音楽風にまとめた、ちょっと難しそうな曲。まったく知らない作品で虚を突かれました。面白くは聴かせてもらいました。
休憩後は、いよいよ、期待していたウォルトンの交響曲第1番。ウォルトンの内面から湧き出てくるエネルギーがどれほど体感できるかと固唾を飲んで、聴いていましたが、第1楽章は不発。プレヴィンがこの作品について、「あまりにも多くの音符が詰まっているようにみえる。弦楽パートは非道なほどだ。しかし、すべての16分音符が交響曲のサウンドを作るのに必要なのだ。」(CDのライナーノートより引用)と述べ、ロンドン交響楽団のすべての能力を引き出した結果、素晴らしい演奏が実現されましたが、今日の都響の演奏は都響の能力を最大限発揮したとは思えない演奏で、第1楽章は音符の多さにアンサンブルの響きが整わないままに終わってしまいました。それでも、第2楽章以降は立て直し、ほぼパーフェクトな演奏だっただけに第1楽章の演奏が悔やまれます。それだけ、難しい曲だったのでしょう。第3楽章の味わい深い演奏、第4楽章のダイナミックな演奏は素晴らしかったので、気持ちよく聴き終えることはできました。いやはや、残念な演奏でした。もっとも、プレヴィンの演奏と比べると、ハードルが高過ぎて、どの演奏も不満に思えるのかもしれません。
ともあれ、マーティン・ブラビンズの作りだす英国音楽の世界はなかなか聴きもの。今後とも期待したいところです。
今日のコンサートのおかげで隠れ名盤を知ることができたのが一番の成果だったのかな。
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