FC2ブログ
 
  

シューベルトに感動!庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタル@サントリーホール 2012.10.30

10月後半のこの1週間ほどに聴いた3回のコンサートはいずれも強い感銘を受けたものばかりで、いずれも“当たり”のコンサートでした。もちろん、そういうコンサートを選択したのですから、当たり前と言えば、当たり前ですが、当たりくじばかり連続で引くのは滅多にないことです。このところ、ご機嫌のsaraiです。
 10月22日(月) インバル指揮東京都交響楽団 ブラームス交響曲第2番、第4番
 10月26日(金) ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデン 《トリスタンとイゾルデ、ブルックナー交響曲第7番
 10月27日(土) インバル指揮東京都交響楽団 マーラー交響曲第3番

そして、今日の庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタルも大変感銘を受けたリサイタルでなんと4回連続当たりくじでした。 
今日のリサイタルはほぼ10日ほど前に横浜みなとみらいホールで聴いたリサイタルとほぼ同内容です。違いといえば、ホールがサントリーホールに変わったこととと、最後のメインの曲目がシューマンのソナタからシューベルトの幻想曲に変わったことです。しかし、受けた感銘の度合いはまったく違います。席の場所はほとんど同じですが、サントリーホールではヴァイオリンの響きがよく聴こえ、実に集中して聴くことができました。そして、シューベルトの幻想曲の演奏はとても素晴らしいもので、深い感動に浸りました。シューベルトの後期のピアノ曲の素晴らしい演奏に接して、感動するのと、同じ感覚といえば、お分かり頂けるでしょうか。幻想曲もシューベルト晩年の名曲で深い音楽性に満ちていますが、庄司紗矢香のヴァイオリンはそれを余すところなく、完璧に演奏しました。今まで、庄司紗矢香のヴァイオリンを長い間、聴いてきましたが、今日のシューベルトは間違いなく、最高に素晴らしい演奏でした。ずっと、庄司紗矢香の成長の過程を見守るという足長おじさんのような気持ちでいましたが、それも今日で最後にします。こんな素晴らしいヴァイオリニストになった庄司紗矢香の成長を見守るというのは不遜で失礼にあたるでしょう。これから始まる絶頂期の名演の数々を鑑賞させてもらうことにします。

今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  ピアノ:ジャンルカ・カシオーリ

  ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
  ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第10番ト長調Op.96

《休憩》

  ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
  シューベルト:幻想曲ハ長調D.934

   《アンコール》
バッハ:音楽の捧げ物より
    ストラヴィンスキー:ペトルーシュカより

最初はヤナーチェクのソナタです。今日のリサイタルで唯一、不満のあったのがこのソナタの第1楽章です。あまりに流麗で美し過ぎる演奏なんです。この楽章は少しぎこちなく、抑えた演奏をしてもらいたかったんです。孤独でコミュニティにとけ込めない哀しさを表現してもらいたいというのがsaraiの意見です。高いレベルの勝手な要求です。
第2楽章は途中から始まるノスタルジックな綺麗なメロディーの美しい響きに満足しました。孤独で愛に飢えた人が子供時代の何者にもとらわれなかった幸福な頃の回想にふけるという切なさがよく表出されていました。
第3楽章はまあまあというところでしょうか。どうしてよいか分からない自分を無理に奮い立たせて、明るく振る舞ってみせますが、それが奇妙な行動に見えてしまうというちぐはぐさがそこそこに表現できていました。もっと思い切った鋭い演奏もよかったかなという感じです。
第4楽章は特に後半からフィナーレまでは実に秀逸な演奏でした。孤独な魂が愛を求めますが、哀しみが増すばかり。どこにも救いのないやるせなさのまま、曲は閉じます。深い感銘を受けた演奏でした。それに感情のこもった熱い表現にほろっときました。
それにしても、低音から高音まで均一性のある美しい響きで、この音楽的に難しい曲を演奏したのは凄いことです。

次はベートーヴェンのソナタです。力みのない素直な表現での演奏でした。ヤナーチェクのソナタとは一転して、実に端正な表現です。ピアノのカシオーリも丁寧なタッチで、庄司紗矢香のヴァイオリンの響きとうまくマッチしています。テンポの微妙な変化で、2人の息がぴったりで、室内楽の喜びを感じ取ることができました。インテンポで演奏する部分でのきちっとしたベートーヴェンらしさが模範的なベートーヴェン演奏を感じさせられました。
第2楽章の抒情あふれる美しい演奏が爽やかです。第4楽章の素朴な主題の表現が印象的で演奏の終わった後でも、そのメロディーが頭のなかで響き続けていました。
抑え気味のしみじみとした演奏で、室内楽の楽しさを感じました。こういうベートーヴェンもいいですね。

休憩後、ドビュッシーのソナタです。10日前のリサイタルでも素晴らしい演奏でしたが、この日はそれ以上だったかも知れません。ドビュッシー晩年の室内楽はどれも名曲で大好きですが、エスプリに満ちた演奏でうっとりと聴き惚れるのみです。このドビュッシーの作品の色々な要素が聴き取れたのも新しい発見です。東洋風な表現はバルトークのマジャール風の音楽を想起させます。無限旋律を思わせるところはフランクです。それらをドビュッシーの印象派の音楽でまとめあげているというモザイク的な音楽に聴こえました。丁寧にクリアーな演奏だったからこそ、細部までじっくりと楽しめたのだと思います。本当に完成度の高い演奏です。
休憩後の演奏はますます精度の高い演奏になってきています。

最後はこの日のメインのプログラムに据えたシューベルトの幻想曲です。この曲は序奏と3つの楽章とコーダが休みなく演奏されます。ロマン派らしい自由な形式のヴァイオリン・ソナタと言っていいでしょう。シューベルトの晩年の作品は本当に名作揃いですが、これもそのひとつです。演奏機会も少なく、CDのリリースも少ないので、隠れた名曲といえるかもしれません。庄司紗矢香はいい曲をプログラムに組み込みました。
演奏の中身にはいる前にちょっと予習したCDについて、触れておきます。何枚か聴きましたが、何といっても、アドルフ・ブッシュの演奏の素晴らしさは特筆すべきものです。1931年録音のSPからの復刻CDですが、素晴らしい音質で聴くことができます。デジタル技術の進歩に感謝します。アドルフ・ブッシュのヴァイオリンは少し甘いポルタメントのかかった昔風の演奏ですが、それはマイナスにはなりません。懐かしさのこみあげてくるようなシューベルトの演奏につながっているからです。ピアノのルドルフ・ゼルキンの演奏も実に美しく、非の打ち所のない真正のシューベルト演奏に仕上がっています。この年代はアドルフ・ブッシュの絶頂期だったようです。アドルフ・ブッシュはその後、ナチス政権に追われ、米国に移り住みます。そこでも数々の名演奏を残しています。前回のリサイタルのプログラムのメインだったシューマンのヴァイオリン・ソナタ第2番はこの時期に名演を残しています。庄司紗矢香の2回のリサイタルのメイン曲の名盤がいずれもアドルフ・ブッシュの演奏であるのは面白い偶然です。ということで、リサイタルの予習にシューベルトとシューマンを繰り返し、アドルフ・ブッシュの名盤で聴きました。これは是非、みなさんも一聴されることをお勧めします。シューベルトの幻想曲のCDは既に廃盤ですが、AMAZONから、相応の価格で中古CDを入手することができます。米国、日本から買えます。このCDはリマスタリングも良好でよい音質で聴くことができます。因みにシューマンはここから買えます。4枚組のCDです。このなかにも、シューベルトの幻想曲がありますが、米国でのライブ演奏のようです。これは未聴です。
アドルフ・ブッシュのCDにこだわったのは、そこに真正のシューベルト演奏があると感じたからです。
そして、今日の庄司紗矢香の演奏は演奏スタイルこそアドルフ・ブッシュとは異なりますが、やはり真正のシューベルトの魂が感じられました。序奏のゆったりした美しい響きはまるでソプラノ歌手のアリアを聴いている感じでうっとりします。第1楽章はシューベルトらしい美しいメロディーに胸を揺さぶられます。第2楽章はシューベルトの歌曲「私の挨拶を」を主題とした4つの変奏が繰り広げられ、この曲の白眉ともいっていい部分ですが、ヴァイオリンとピアノの美しい響きは真正のシューベルトです。第3楽章を経て、圧巻のコーダです。シューベルトの名作を目の前でライブで素晴らしい演奏・・・感動で胸が一杯です。アドルフ・ブッシュは素晴らしいですが、何といってもsaraiが生まれた頃に亡くなった人で今更、生の演奏は聴けません。同じ精神性での演奏が今生きている現在に聴けて、幸福感でいっぱいです。
いつの間にか、庄司紗矢香はこんなシューベルトが弾けるような高みにまで上ってきました。凄いことです。

素晴らしいリサイタルでした。アンコールも含めて、バッハ、ベートーヴェン、シューベルト、ドビュッシー、ヤナーチェク、ストラヴィンスキーをすべて高水準で演奏しました。もう成長過程を終え、稔りの時期にはいってきたようです。これからの庄司紗矢香はますます、saraiを楽しませてくれるでしょう。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       庄司紗矢香,

コメントの投稿

非公開コメント

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR