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パウル・クレー・センター:クレー晩年の芸術的完成へ 1938年~

2019年9月13日金曜日@ルツェルン~バーゼル~ベルン/8回目

ベルンBern郊外のパウル・クレー・センターZentrum Paul Kleeを訪れ、クレーの作品を鑑賞しています。制作年順にご紹介しています。バウハウス時代、デュッセルドルフ時代を経て、スイス亡命後の創作活動低迷期の作品をご紹介したところです。なお、年号の後ろのカッコ内の数字はクレーの作品に付けられた整理番号です。

これからはクレーの最後の3年間、1938年、1939年、1940年の作品をご紹介します。天使シリーズなどの線画が中心です。

《母と子》。1938年(140)、クレー59歳頃の作品です。ピカソ風に描かれた愛情あふれる母と子の姿です。クレーの心情はすっかりと落ち着いていることが窺えます。西欧絵画でこのテーマの場合は聖母子を意識している場合が多いですが、この作品は宗教的には思えません。ほぼ2色で描かれた色彩表現も見事ですし、線画風の構図も素晴らしい作品です。

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《顔:老婦人》。1938年(218)、クレー59歳頃の作品です。うーん、これはまるで日本昔話に出てくるようなお婆さんのように見えます。素直にそのままの姿を感じるだけでよさそうです。

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《限定された権利放棄》。1938年(372)、クレー59歳頃の作品です。いよいよ、線画シリーズの始まりです。もちろん、クレーは体力的にも、凝った色彩画を描くのは辛くなったのでしょう。それでも、こういう線画で自己の芸術の完成を目指したところは、見るものを熱くし、共感させるものがありますね。この絵はクレーのあきらめの境地でも描いたものでしょうか。しかし、すべての権利を放棄したわけではなく、限りある人生を精一杯生きるというふうにも思えます。苦しい中で気持ちの整理がついてきたと感じます。頑張れ!クレー!

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《引っ繰り返された》。1938年(376)、クレー59歳頃の作品です。この絵は単純に人がすってんころりんとひっくり返った様を描いたものでしょうが、あの北斎漫画を連想するのはsaraiだけでしょうか。

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《あなたは滴っています(ずぶ濡れです)!》。1938年(470)、クレー59歳頃の作品です。これは女の人が何か、獣にぱっくりと食われそうになり、獣の口からのよだれで滴っている様が描かれているようです(全然、違うかもしれない?)。パニックするシーンでありながら、何か、ユーモアも感じます。これも漫画の世界ですね。

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《人形劇》。1939年(19)、クレー60歳頃の作品です。クレーはかってより、しばしば、人形劇をテーマに取り上げてきました。かっては片面的に人形劇のパーツを色彩豊かに描きましたが、それを線画でごく単純化したモティーフとして描いています。力尽きたクレーの姿とも言えますが、あくなき追及を止めないクレーに涙を禁じ得ません。

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《勇敢な女性のための動物》。1939年(20)、クレー60歳頃の作品です。妙なタイトルで妙な絵です。全体としては勇敢な女性の姿ですが、ただ、顔の一部は猛獣の顔になっています。どう解釈すればよういのか・・・。女性の中に猛獣らしさを見たのか、女性に猛獣のような野性の強さを与えたかったのか・・・。分かりません。

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《沼地で》。1939年(36)、クレー60歳頃の作品です。沼地の様々な生態を一枚の絵に構成しています。本来ならば、線画でなく、色彩と精密な構図で描きたかったのでしょうが、シンプルな線画でどこまで表現できるか、模索していたのでしょう。この苦しい時代になっても挑戦を止めないクレーの画家としての真骨頂が見られます。

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クレーに残された時間はもう1年ほどになりますが、驚くほど多作になるクレーです。多くの線画が続々と登場します。いよいよ、天使も登場しますよ。



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教えて下さって嬉しいです
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