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パウル・クレー・センター:クレーは苦悩を超えて天使的表現へ 1939年~

2019年9月13日金曜日@ルツェルン~バーゼル~ベルン/10回目

ベルンBern郊外のパウル・クレー・センターZentrum Paul Kleeを訪れ、クレーの作品を鑑賞しています。制作年順にご紹介しています。バウハウス時代、デュッセルドルフ時代、そして、スイス亡命後の苦難の時期、さらにクレーの最後の3年間、1938年、1939年、1940年の作品をご紹介しているところです。なお、年号の後ろのカッコ内の数字はクレーの作品に付けられた整理番号です。

クレーの最後の1年間、1939年の作品を引き続きご紹介します。天使シリーズなどの線画が中心です。


《過ぎ去ったこと、しかし、痕跡がないわけではない》。1939年(661)、クレー60歳頃の作品です。微妙なタイトルの線画です。多分、もう既に若い時代を過ぎ去った女性が描かれているんでしょう。しかし、まだ、若かりし頃の美しさの影を残していて、クレーは愛情を込めて、この女性を描いています。若き日の夢を宿した天使・・・saraiのタイトル案です。

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《そのバカ》。1939年(663)、クレー60歳頃の作品です。鈴の付いた頭巾をかぶった人物がおどけているのかな? タイトルは意味不明ですが、きっと自虐的なのだとすれば、この人物はクレー自身だということになりますね。きっとユーモアなんでしょう。

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《空腹の少女》。1939年(671)、クレー60歳頃の作品です。よく、小学生か、幼稚園児の描いた絵と評される作品ですね。大芸術家たるクレーが無垢の精神に立ち返って、自分の精妙な筆さばきのすべてを封印して挑んだ野心作です。素朴派の画家たちでさえ、ここまでの作品は描けないでしょう。ある意味、クレーがそのキャリアーの最終地点で辿り着いた頂とも思える作品なのでしょう。クレーはこれが描きたくて、これまでの画業でもだえ苦しんだとも言えます。空腹の少女がそのあまりの空腹さ故に自分の手を食べてしまおうとするという恐ろしい題材をあえて、稚拙極まりない画法で、非現実化したものですが、題材自体のシリアスさはゆるぎない事実です。この時代のヨーロッパを擬人化したとも思えますし、もっと、人間の内面に迫る意味でも捉えられます。こういう作品は鑑賞者の芸術への感性次第で駄作にも超傑作にもなりうるという恐ろしい芸術性を秘めています。

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《保護者に守られて》。1939年(830)、クレー60歳頃の作品です。赤ん坊が保護者(母親でしょうか)の懐に包まれて、安らかに眠っているようなシーンが実に愛情豊かに描かれた見事な作品です。守られて幸せな天使・・・そういうタイトルも付けたくなりますね。これはきっとクレー自身の願いであり、叫びなのでしょう。

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《負荷》。1939年(837)、クレー60歳頃の作品です。これは描かれている通りのシンプルな作品です。重圧に打ちひしがれている人間の苦悩をそっと優しく描いています。圧し潰された天使・・・それがsaraiのタイトル案です。

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《残念ながらかなり下向き》。1939年(846)、クレー60歳頃の作品です。不幸のどん底にいるような人間をペーソスを感じさせるような軽みで描いた作品です。そういう意味では、一つ前の作品《負荷》と同様ですね。クレー自身の苦悩を線画にすることで和らげるものなのでしょう。辛い境遇にある人間に寄り添うような作品が続きます。残念な天使・・・saraiのタイトル案です。

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《真剣な表情》。1939年(857)、クレー60歳頃の作品です。線画ではありませんが、そのシンプルさでは同様なものです。植物的に描かれた顔の表情の何とも言えない寂しさに心を打たれます。線画ではありませんが、天使シリーズに加えてもよさそうな逸品です。寂しい天使・・・それしかないでしょう。

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クレーの作品は苦悩を増していき、そして、その苦悩を打ち消すように天使的に昇華していきます。クレーは残された時間の中で芸術的な高みに駆け上がっていきます。



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