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ルツェルン散策:ローゼンガルト・コレクション~クレーの名作 1933年-1937年

2019年9月14日土曜日@ルツェルン/13回目

ルツェルンLuzernの街歩き中で、ローゼンガルト・コレクションSammlung Rosengartに立ち寄っています。現在、クレーの作品をピックアップして、ご紹介しているところです。ここまで、1913年から1932年までの作品を見てきました。
これから、1933年の作品から、順にsaraiが気に入った作品を見ていきます。なお、制作年の後ろの括弧の中の数字はその年の作品番号です。

《文書(ドキュメント)》。1933年(283)、クレー54歳頃の作品です。クレーはバウハウスを辞した後、デュッセルドルフの美術アカデミーに2年在職しただけで、この1933年にナチスの弾圧で辞めされられます。クレーはそれでもドイツに残る方策を模索します。これはその頃の作品です。クレーは見通しのたたない未来に絶望せずに、芸術創造活動を続けます。この作品は1928年から1929年にかけてのエジプト旅行を振り返ったものですね。画面にはただ文書が描かれているのみです。文字はよく見えませんが、象形文字のような印象です。色合いなどの雰囲気が古代の文書を思わせます。不思議な作品です。

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《満月のいけにえ》。1933年(452)、クレー54歳頃の作品です。古代の陰惨な情景を描いたものです。この時期の時代状況、さらには自分自身の追い詰められた状況を抜きにしては語れない作品ですが、クレーは芸術家として、あくまでも芸術に昇華した作品を描きあげています。満月が逆説的に美しく光り輝いています。この年のクリスマス頃にクレーはスイスのベルンに逃れます。彼の銀行口座は凍結されて、亡命後も苦境は続きます。しかし、クレーは芸術家として、強く生きていきます。

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《山の村(秋の)》。1934年(209)、クレー55歳頃の作品です。スイス亡命直後の作品です。私的には苦しくても、クレーの芸術は高みを極め続けます。一点の迷いもない素晴らしい抽象作品です。暖色系のシックな色合いの中に秋を感じ、三つの黄色のフォルムが希望の光に見えて、とても印象的です。

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《町の中心 Ⅰ》。1935年(137)、クレー56歳頃の作品です。スイス亡命後、さすがのクレーも作品数が激減します。追い打ちをかけるようにこの年の夏、致命的な病気の徴候が現れます。免疫不全症の一種である皮膚硬化症です。この後は病魔やナチスの迫害と闘いながら、5年間、壮絶な創造活動を続けます。しかし、この作品はそういう外的要因を感じさせない落ち着いた雰囲気です。明るい暖色系の水彩で塗られたブロックを積み上げて、華やかな町の中心を描きあげています。

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《“Spiel-Musik”(バロック音楽の意味か?)のための楽器群》。1937年(123)、クレー58歳頃の作品です。病気の影響もあり、作品数が少なかったのですが、ようやく創作に着手します。その頃の貴重な一枚です。外的には、クレーの作品はナチスによって退廃芸術と見なされ、この1937年にミュンヘンの「退廃芸術展」に17点が展示されます。ドイツ国内の美術館でクレーの作品102点の没収も行われます。内的にも外的にも最悪の状態で描かれた、この作品の透徹した美しさはどうでしょう。白地に太い黒で描かれた象形文字らしきものの正体は楽器のようです。古楽器なのでしょう。どことなく、古代の雰囲気を漂わせて、上質の抒情が立ち上ります。

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《主に分岐》。1937年(154)、クレー58歳頃の作品です。病気や迫害に抗して、クレーが復調の兆しを見せ始めました。その頃の作品です。新たな創作への意欲がみえます。シンプルで力強い構図、パステルの落ち着いた色彩で新境地を模索するがごとくです。

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いよいよ、クレーの最後の3年間、奇跡の晩年の創作活動の時代に向かいます。ある意味、クレーの創作活動の頂点とも言えます。病んだ体で肉体が衰えるのに反比例して、クレーの精神は芸術的に冴えわたります。



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