河村尚子、これぞラフマニノフ! with 読売日本交響楽団@東京芸術劇場コンサートホール 2020.10.25
でも、今度はショパンじゃなくて、プロコフィエフの戦争ソナタが聴きたいよ ⇒ 河村尚子様
今日のコンサートはグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲で始まりました。80歳の御年とは思えない小林研一郎の元気良い指揮で派手な演奏。さすがに読響のアンサンブルは最高です。それに今日は小森谷巧と長原幸太のダブルコンマスと気合がはいっています。後で知りましたが、小林研一郎は代役だったんですね。本来は何とロトだったんです。コロナがなければ、ウィーンで聴けた筈のロト・・・。うーん、でも我が国が誇る至宝、小林研一郎が代役ですから、何も問題ありません。
後半はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。小林研一郎はどんな「英雄」を聴かせてくれるんでしょう。まず、冒頭のジャン、ジャン。素晴らしい響きです。その後は何と美しいアンサンブルの響きが続きます。雄渾さとか勢いとかは完全封印。小林研一郎の手もほとんど動きません。テンポは中庸でほぼインテンポ。読響の美しいアンサンブルの響きが静かに流れていきます。この曲は作曲当時、革新的な作品として登場しましたが、今日は古典美に満ちた作品として演奏されます。小林研一郎は齢80にして、この境地に至ったのでしょうか。でも、枯れた演奏ではなく、この曲を静謐に室内オーケストラのようにあえて演奏しているようです。むしろ、80歳にして、思い切って、こういう演奏にチャレンジしたかのようです。そのまま、第2楽章に入ります。どうやら、彼はこの第2楽章を中心に据えた演奏を試みているようです。どっしりとした葬送行進曲ではなく、深い抒情味に満ちたベートーヴェンの精神世界を表現しています。うーん、こんな演奏もあるのね。読響の美しいアンサンブルなくしては成立しない音楽表現です。若い指揮者がこんな演奏をしたら、何を言われるか、分かりませんが、80歳の巨匠ゆえに許される音楽表現です。まあ、第2楽章までは納得できました。第3楽章、第4楽章も路線変更はなく、緩やかな音楽、室内オーケストラの箱庭的な表現が続きます。そういう響きできびきびとテンポアップすれば、最近はやりのオリジナル志向の音楽ですが、テンポはゆったりです。80歳の思い切った挑戦は面白かったのですが、音楽的にはあまり成功しなかったような気がします。やはり、この曲はフルトヴェングラー的なアプローチしかないでしょう。コバケン健在だけが印象付けられた演奏でした。
最後にマスクを着けたまま(今日の演奏者でマスクを着用していたのは指揮者の小林研一郎のみ!)、ご挨拶がありました。顔はマスクで隠されていますが、声を聴いて、小林研一郎だと確認できました。そして、アンコール曲が演奏されます。弦楽だけで飛びっきり美しいダニーボーイです。
今日のプログラムは以下です。
指揮:小林研一郎
ピアノ:河村尚子
管弦楽:読売日本交響楽団 コンサートマスター:小森谷巧
グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43
《アンコール》ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作
《休憩》
ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 Op.55「英雄」
《アンコール》
ダニーボーイ(アイルランド民謡)
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲は以下のCDを聴きました。
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 1981年11月29日 レニングラード・フィルハーモニック大ホール ライヴ録音
ムラヴィンスキーの鋼鉄のような指揮で鉄壁の演奏です。
2曲目のラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》は以下のCDを聴きました。
ヴァレンティナ・リシッツァ、マイケル・フランシス指揮 ロンドン交響楽団 2010年3月 ロンドン ライヴ録音
ヒラリー・ハーンの伴奏のような形で初めて聴いたときのリシッツァは正直、あまり感心しませんでしたが、今や、大きく成長しました。このラフマニノフの協奏曲全集も素晴らしい出来です。
3曲目のベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」は以下のLPを聴きました。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル 1950年6月20日 ベルリン ライヴ録音
先日購入したRIAS全集のLPレコードです。感想は不要でしょう。これ以上の演奏はフルトヴェングラーのほかの録音以外にはありません。
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