上原彩子の熱いシューマン、秋山和慶の爽やかなシューマン 新日フィル・オール・シューマン・プログラム@すみだトリフォニーホール 2020.10.30
前半、まずは劇音楽『マンフレッド』の序曲です。新日フィルの美しい弦パートはシューマンのロマンに満ちた名作に向いた響きです。爽やかな演奏で魅了してくれました。
次いで、上原彩子が弾くピアノ協奏曲。冒頭、ちょっと力が入り過ぎた感がありますが、すぐに修正します。第1楽章、第2楽章はまあまあの出来でしょうか。彼女が真骨頂を発揮し始めたのは第3楽章の中盤からです。細かいパッセージを切れの良いタッチで見事に演奏し、次第に音楽が高潮していきます。ヴィルトゥオーソ的にスケールが大きく、力強い演奏で熱く燃え上がっていきます。高い集中力を発揮する演奏は彼女の持ち味です。フィナーレは熱いシューマンでした。まだまだ、課題は残すものの及第点のシューマンだったでしょう。
アンコールで弾いたトロイメライはとても丁寧に心を込めた演奏でしみじみと聴かせてもらいました。先日も《子供の情景》を聴いたばかりでしたが、今日は格別の演奏でした。
後半は交響曲第3番「ライン」。これは素晴らしい演奏でした。秋山和慶の若々しく爽やかな表現を志向する指揮で、新日フィルの弦楽パートの美しいアンサンブルが憧れに満ちたシューマンの名作を歌い上げます。とりわけ、第4楽章は素晴らしい演奏です。ケルンの大聖堂にインスピレーションを得て、シューマンが作曲したと言われますが、そういう重厚さよりも、哀愁に満ちた音楽が心を打ちます。シューマンが晩年に作り上げた音楽はその後の彼の悲劇を予感するものでもあります。狂気こそ感じられませんが、滅びの美しさを秘めた美しい音楽が魂を揺さぶります。最後の第5楽章はそれを振り払うように祝典的に勢いよく盛り上がり、シューマンの実質的に最後の交響曲をパーフェクトに演奏し切りました。これぞシューマンという素晴らしい演奏でした。
今日のプログラムは以下です。
指揮:秋山和慶
ピアノ:上原彩子
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:崔文洙
シューマン:劇音楽『マンフレッド』序曲 Op.115
シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54
《休憩》
シューマン:交響曲第3番 変ホ長調 Op.97「ライン」
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のシューマンの『マンフレッド』序曲は以下のCDを聴きました。
ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 1978年9月27-30日 ミュンヘン、ヘルクレスザール セッション録音
クーベリックのシューマンはいいですね。saraiに初めて、シューマンのオーケストラ作品のよさを教えてくれたのがクーベリック指揮バイエルン放送交響楽団です。
2曲目のシューマンのピアノ協奏曲は以下のCDを聴きました。
スヴャトスラフ・リヒテル、リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィル 1972年8月17日 ザルツブルク音楽祭、祝祭大劇場 ライヴ録音
期待して聴きましたが、期待以上の演奏ではありません。もちろん、水準以上の演奏だし、第3楽章は素晴らしいです。この曲は演奏が難しく、なかなか、これというものがありません。結局、古いリパッティやハスキルの演奏に行きつきます。
3曲目のシューマンの交響曲第3番「ライン」は以下のCDを聴きました。
ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮シュターツカペレ・ドレスデン 1972年9月1-12日 ドレスデン、ルカ教会 セッション録音
シュターツカペレ・ドレスデンらしい明快な響きの演奏。サヴァリッシュも手堅い指揮。
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