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ベートーヴェン・イヤーの最高の音楽、ミサ曲ハ長調:バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2020.11.28

後半に演奏されたベートーヴェンのミサ曲ハ長調は実は初聴きでしたが、その人間的な共感に満ちたミサ曲は隠れた傑作であることを実感しました。BCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)の演奏も最高に素晴らしく、大きな感銘を覚えました。ベートーヴェンはこの1曲しか残さなかったとしても、音楽史に残る大作曲家として名前を刻んだと確信しました。今後、この作品は演奏機会が増えて、再評価されることは間違いないでしょう。

冒頭のキリエの「キリエ・・・」という歌い出しの響きの見事さに魅了されて、あとはすっかりと感銘を覚え続けて、聴き惚れました。まずはBCJの合唱の素晴らしさに触れないといけないでしょう。コロナを意識した配置なのでしょうが、舞台の最後方にずらっと並んだ合唱団はBCJとしては大規模な合唱隊の人数です。部隊前方に配置したオーケストラを飛び越えて、合唱の圧倒的な響きがホールに満ちてきます。左右に大きく展開した合唱のステレオ効果も素晴らしいものです。特にバスパートとソプラノパートという低域と高域の響きの素晴らしさが群を抜いています。
4人の独唱者の歌唱も素晴らしく、ソロでの歌唱も4人の重唱も見事です。ソプラノの中江 早希とアルトの布施奈緒子の女声の素晴らしさにとりわけ、魅了されました。そして、独唱者たちと合唱の融合も素晴らしく、BCJの魅力は声楽にあると実感しました。
無論、名人たちの集団であるオーケストラも素晴らしかったことは言うまでもありませんが、今日に限っては声楽パートのサポートの役割を見事に担ったと感じました。時折、木管の鄙びた響きに心が震えることはありましたし、対向配置のヴァイオリンの響きにもたびたび耳を喜ばせてもらいました。
第1曲のキリエの清らかな音楽、それ以降の人間的な感情のストレートな発露は中期のベートーヴェンの素晴らしさを感じました。ユニゾンを中心とするシンプルな音楽構成はベートーヴェンの別な一面を聴いた思いです。苦渋に満ちたとも言える後期のベートーヴェンはもちろん最高ですが、直截的な中期のベートーヴェンの音楽も心に響きます。そういうベートーヴェンの素晴らしさを見事に表現した鈴木 雅明の指揮もそのシンプルさで光彩を放っていました。バッハ、ヘンデルなどのバロックでの彼の素晴らしさはもちろんですが、古典派以降の音楽でもその才能を発揮してくれそうです。次はシューベルトあたりを聴いてみたくなりました。

そうそう、前半の交響曲第5番はオリジナル派の鄙びた響きでしたが、テンポもスタンダードで好もしい演奏でした。同時期に作曲されたミサ曲ハ長調とは相性のよい選曲ですね。交響曲第5番のアン・デア・ウィーン劇場での公開初演でもミサ曲ハ長調の抜粋が演奏されたそうで、その歴史も踏まえた選曲だったのでしょう。ただ、今日の主役はもちろん、ミサ曲ハ長調でした。アン・デア・ウィーン劇場で同時に初演された合唱幻想曲を選曲してくれたら、もっとよかったのですけどね。

いずれにせよ、コロナで滅茶滅茶になったベートーヴェンの生誕250周年でしたが、このミサ曲ハ長調を聴けたのは最高の収穫でした。
なお、最後に鈴木 雅明氏がマイクをとり、簡単にミサ曲ハ長調とハイドンとの関係をレクチャーし、アンコールでハイドンのミサ曲の一部を演奏してくれました。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木 雅明
  ソプラノ:中江 早希
  アルト:布施奈緒子
  テノール: 櫻田 亮
  バス:加耒 徹
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン (コンサートマスター:寺神戸 亮)


L. v. ベートーヴェン

 交響曲第5番 ハ短調 Op.67

 《休憩》

 ミサ曲 ハ長調 Op.86

 《アンコール》

 ハイドン:神の聖ヨハネのミサ・ブレヴィス(小オルガン・ミサ 変ロ長調) Hob.XXII:7 より 《アニュス・デイ》


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンの交響曲第5番は以下のCDで予習をしました。

  ジョン・エリオット・ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク 1994年3月 バルセロナ、カタルーニャ音楽堂 ライヴ録音

オリジナル演奏で聴いてみました。音の響きは豊かであまりオリジナル演奏を感じませんが、テンポがきびきびと早い演奏。やはり、saraiは古い人間ですから、違和感を覚えました。


2曲目のベートーヴェンのミサ曲 ハ長調は以下のCDで予習をしました。

  マイケル・ティルソン・トーマス指揮サンフランシスコ交響楽団、サンフランシスコ交響合唱団
   ジョエル・ハーヴェイ(ソプラノ)
   ケリー・オコナー(メゾ・ソプラノ)
   ウィリアム・バーデン(テノール)
   シェンヤン(バス・バリトン)
        2014年1月15日-18日 デイヴィス・シンフォニー・ホール、サンフランシスコ ライヴ録音

モダン演奏ですが、マイケル・ティルソン・トーマスの素晴らしい指揮で最高のベートーヴェンを堪能させてくれます。ソプラノのジョエル・ハーヴェイの美声に魅了されます。



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ジャンル : 音楽

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