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東京都交響楽団定期演奏会@サントリーホール 2012.7.19

サントリーホールにいつも通り入館すると、入口のところに張り紙がしてあって、人だかりになっています。別に特別にお目当てのソリストが出演するわけではないので、誰かがキャンセルするとかのドキドキ・ハラハラ感はありませんが、一応チェックしてみましょう。
すると、今日予定していた指揮者の大植英次が本番2日前に頸椎症になり、約1週間の安静が必要になり、急遽出演が不可能になったとのことで、本人からのお詫びの言葉が張り出されていました。代わりの指揮者はこの楽団のレジデント・コンダクターの小泉和裕だそうです。前回、この指揮者の演奏は今一つだったので、嫌な感じです。それに欧米で活躍している大植英次は多分今まで聴いていなかったので、少し期待感もありました。また、本日予定されていた曲目の一部が変更になっていました。メイン曲目のチャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》はそのままです。しかし、指揮者の交代が2日前で今日の演奏曲はちゃんと練習できたんでしょうか? 不安です。

今日のプログラムは以下です。

  ベートーヴェン:「エグモント」序曲
  ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」より、《前奏曲と愛の死》

《休憩》

  チャイコフスキー:交響曲第6番《悲愴》

なお、前半は予定では
  R・シュトラウス:《ばらの騎士》組曲
でした。

最初の「エグモント」序曲はきっちりした演奏で厚みのある弦がこの曲にふさわしく響きました。悲劇的な雰囲気の良く出た荘重な演奏で、なかなかよかったです。それにこの曲は実に久しぶりに聴いて、懐かしかったのもプラスの材料でした。出だしとしてはよい滑り出しです。最近、この曲はこの指揮者との組み合わせで演奏する機会でもあったんでしょうか。仕上がりも万全でした。

続いて、楽劇「トリスタンとイゾルデ」の《前奏曲と愛の死》です。これは夢のような雰囲気でいかにもトリスタンらしく、なかなかよい演奏でした。惜しむらくはワーグナーのうねるような響きがもっと表現できればというところでしょうか。この曲も仕上がりも万全でした。

休憩後はチャイコフスキーの《悲愴》です。第1楽章の序奏が始まり、えっと驚きます。実に新鮮な響きです。というのも楽器パート間のアンサンブルが崩れ、ずれずれに聴こえてきます。お陰で楽器パートの旋律線がはっきりと分解されて聴こえます。実に面白い体験ですが、演奏としては練習不足にしか聴こえません。時間的に十分な練習ができなかったんでしょう。それでもさすがに第2主題の美しい旋律が弦楽器で演奏されるあたりからはアンサンブルがまとまってきました。強力な第1ヴァイオリンの主導で立ち直ったようです。中間あたりからは弦を中心に普通の《悲愴》の音楽が流れてきました。
第2楽章は弦、特に第1ヴァイオリンの美しい響きにうっとりします。
第3楽章はフィナーレに向けての決然とした行進曲を第1ヴァイオリンが中心になって、クリアーな弦のアンサンブルの響きをホールに満たします。なかなか素晴らしい演奏です。
第3楽章が終わると慣例通り、そのまま第4楽章にはいっていきます。saraiの感覚では、一呼吸入れないで、もっとすぐに第4楽章を開始してもらったほうがより緊迫感が出たのになあという感じ。《悲愴》と言えば、この第4楽章が文字通り、泣かせどころです。都響の素晴らしい弦楽器パートはこの曲にうってつけです。実に美しく、そして哀しく、弦の響きが胸に迫ります。そして、静かにフィナーレを迎えます。本当はもっと響きを抑えた演奏、聴こえるか、聴こえないくらいというのがいいんですが、まあ、及第点ですね。

全体としては練習不足のせいか、速いパッセージでアンサンブルが乱れる部分もありましたが、オーケストラの気持ちの乗った演奏でカバーしてくれたと思います。音楽は人間が介在する芸術なので、今回のようなアクシデントはどうしても避けられません。まあ、コンサート終了後のsaraiの気持ちとしては、それなりに満足できてよかったなあというところです。




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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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07/08 18:59 sarai

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07/08 15:53 じじい@

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久々のコメント、ありがとうございます。
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06/18 12:46 sarai

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コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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