ファジル・サイ ピアノ・リサイタル@鎌倉芸術館 2012.7.7
ピアニストのファジル・サイは《春の祭典》のCDをリリースしたときから気になっていた人で(と言ってもCDは未聴)、遂に今回聴くことができます。今回はプログラムの構成も気に入りました。実に多彩な曲を選択しましたね。
今日のプログラムは以下です。
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.331(トルコ行進曲付き)
ストラヴィンスキー(ファジル・サイ編曲):バレエ音楽《ペトルーシュカ》より
《休憩》
ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》
《アンコール》
ファジル・サイ:バラード“SES”(声)
ファジル・サイ:ボドルム
ファジル・サイ:ヴァイオリン協奏曲 ハーレムの千一夜 第1楽章
ガーシュイン:サマータイムバリエーション(ファジル・サイ編)
実は最初にお断りしておかないといけませんが、最近何かと忙しく、少し睡眠不足気味でした。そのため、半分くらいは眠ってしまい、集中して聴けたのは1割程度です。ですから、これから書くことは的外れになっているかもしれません。特にファジル・サイのファンは聞き流してください。
ファジル・サイがステージに現れた印象ですが、あれっと思いました。CDのジャケットの写真ではカッコイイという感じでしたが、ステージに出てきた本人はでぶっとした感じの冴えない感じです。音楽とはもちろん関係ありません。
ピアノの前に座るか、座らないかというタイミングでモーツァルトのソナタを弾き始めました。あの有名な変奏曲の主題です。最初の1音を聴いただけで少し失望。sarai好みのクリアーなタッチではなく、繊細さを欠く弾き方です。リサイタルの最初では息を殺して聴き入りますが、その時点の演奏でsaraiのテンションが上がるか、下がるか決まってしまいます。今回はその後も、テンションは下がる一方。そんな悪い演奏ではありませんが、saraiの期待感とは大いに乖離しています。そういうわけで、一気に眠気が襲ってきて、あっと気が付くと第1楽章は終わりました。間をおかずというか、第1楽章の響きが残っているうちに第2楽章が始まりました。これは結構いい響きでしたが、靄のかかった意識で聴いていました。第3楽章はトルコ行進曲です。これは凄いスピードでの演奏です。この超特急の演奏でも構いませんが、それならそれでパーフェクトに弾きこなしてほしいところです。saraiはスローペースでの顕微鏡で微細に観察できるようは超絶的な演奏が好みですが、それはそれとして、ハイスピードの超絶演奏でも面白く聴けます。しかし、これはかなり荒っぽい演奏に聴こえます。これなら、普通の早さできちっと弾いてもらったほうがいいのになあと思ってしまいました。
次の《ペトルーシュカ》は普通の《ペトルーシュカからの3つの楽章》ではなく、ファジル・サイ自身の編曲とのことです。印象としては、そんなに違った曲には聴こえませんでした。何やら超絶技巧を盛り込んだ編曲になっているそうですが、音楽の質としては同程度に聴こえます。演奏はかなり力のはいった響きの大きなものです。オリジナルの曲を硬質な響きで演奏したほうがよさそうな気もしますが、よく考えてみれば、バレエの《ペトルーシュカ》の喧噪感を表現したかったのかもしれません。そういう意味ではバレエの雰囲気はよく出ているような気もしました。ただ、喧噪感だけでなく、どことないペーソスも表現してくれればもっとよかったとも思いました。いずれにせよ、この人の演奏は音楽というよりも音響を聴いている感じに思えてしまいます。それなら完璧な音響、ランランやヴォロドスのように弾いてほしいところです。もっともsaraiはそんな演奏は好みませんが・・・。
休憩後、《展覧会の絵》です。これはなかなかスケールの大きな素晴らしい演奏でした。キエフの大門あたりからの盛り上がりはさすがです。普通のテンポの演奏で響きに重点を置いたものでした。しかし、saraiの集中力が欠如していたためか、以前、キーシンで聴いたときのような興奮はありませんでした。キーシンの演奏も似た感じの演奏でしたが、もっと演奏に切れがあったような気がします。
最近、ポゴレリッチのコンサートを聴いて、その変わったスタイルの演奏に仰天して声も出ませんでしたが、違う意味で、このファジル・サイという人も相当の変わった人です。弾き方や仕草が尋常じゃありません。大きな声を出しながらピアノを弾くし、びっくりです。野人という感じですが、ピアノを離れれば、静かな印象です。ピアノ一台に向き合って自分を表現する作業って、きっと相当に厳しいことなんでしょう。普通の感性では難しいのかもしれません。
アンコールは最後のサマータイム以外はまったく知らない曲でしたが、本人の作曲した曲だったんですね。力の抜けた良い演奏で、タッチも美しい響きでした。本編の演奏でも、この調子で弾いてくれればよかったのにと余計な感想を持ちました。
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