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辻彩奈のオーラを発散するような香り高いチャイコフスキー、そして、シューリヒトの見事なブラームス 読売日本交響楽団@サントリーホール 2021.2.25

このところ、新鋭ヴァイオリニスト、辻彩奈の登場するコンサートが目白押しで俄かファンのsaraiとしては嬉しいところです。今日は遂にチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲という大演目なので、聴き逃がせません。慌ててチケットを何とかゲットして会場に駆けつけました。
辻彩奈はもう既に堂々たる姿でオーケストラの前に立ち、実に落ち着いた演奏を聴かせてくれます。有名曲のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲だからと言って、意気込むこともなく、自然体での演奏です。彼女の魅力は実におおらかでスケールの大きい演奏スタイルです。ささいな問題もありますが、それよりもオーラを放つ魅力のほうが優っています。チャイコフスキー的かと言われるとそうでもないような気がしますが、どんな曲を弾いても辻彩奈は自分のスタイルを貫いているところが魅力ではあります。若いのだから、それでいいでしょう。
第1楽章、真っ白な紙に爽やかな書を書き込むようにくせのない表現で音楽を表現していきます。聴いていて、気持ちの良い音楽が流れます。勢いのよいところではバリバリと弾き、それでいて、やり過ぎにはなりません。素直な音楽表現ですが、どことなくスケールの大きさを感じます。長いカデンツァも落ち着いた印象で見事なソロを弾き切ります。コーダでは大変な盛り上がりでこの楽章を締めくくります。圧巻の演奏に誰か、禁断の拍手でも出るような気がしますが、ここは上品なサントリーホールですから、そんなことは起こり得ません。
第2楽章、弱音器を付けて、抒情的なメロディーを奏でていきます。終盤に入り、木管と絡み合うあうパートの美しいことに胸がぞくぞくします。そのまま、美しい抒情を秘めて、この楽章を閉じて、そのまま、オーケストラは切れ目なしに次の楽章に入っていきます。
第3楽章、激しく高揚したヴァイオリンを聴かせてくれます。ここに至り、オーケストラの前に仁王立ちして、独壇場の雰囲気で辻彩奈が音楽を支配するかごとくです。天賦の才に恵まれたミューズがその力をすべて発揮して、オーケストラをインスパイアしながら、突き進みます。素晴らしいフィナーレでした。
素晴らしい演奏でしたが、辻彩奈はまだまだ、余力を残しています。さらに響きを磨き上げて、白熱の音楽を披露してくれる日がくるでしょう。さらなる精進を見届けましょう。

シューリヒト、こと松本宗利音は今回が読響に初登場。かなり、粗削りながら、よい音楽を聴かせてくれました。冒頭のウェーバーの歌劇「オベロン」序曲は読響の美しい弦楽アンサンブルを活かした演奏で真正のドイツ音楽の妙を味わわせてくれました。
後半のブラームスの交響曲第2番はブラームスらしいブラームスをたっぷり聴かせてくれました。日本人指揮者が日本のオーケストラを振って、ブラームスの真髄に迫るのは稀有なことです。彼はブラームスの音楽の何たるかをきっちりと把握しています。ヴェルター湖の明るい日差し、仄暗い情念、憧れに満ちたロマン、ゆるぎなく強烈な感情の爆発、すべてが表現されていました。第1楽章、第2楽章の冒頭の低弦をたっぷり歌わせる指揮も見事なものでした。全体に厚みのある低弦をベースに抑え気味の高弦を加えるバランス感のよさが印象的でした。魅力にあふれるブラームスをたっぷりと味わわせてもらいました。だてに“シューリヒト”の名前をもらっていませんね。ドイツ・オーストリア音楽の本流、ベートーヴェンやブルックナーもいつか聴かせてもらいましょう。

辻彩奈にシューリヒト、素晴らしいコンサートを堪能しました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:松本宗利音(シューリヒト)
  ヴァイオリン:辻彩奈
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:小森谷巧

  ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲
  チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35

   《休憩》

  ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 Op.73


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のウェーバーの歌劇「オベロン」序曲は以下のCDを聴きました。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1970年5月22日 東京文化会館大ホール ライヴ録音
 
もちろん、素晴らしい演奏です。ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団は大阪万博のために唯一の来日を果たしましたが、この後、セルは急逝しました。


2曲目のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は以下のCDを聴きました。

 アンネ・ゾフィー・ムター、アンドレ・プレヴィン指揮ウィーン・フィル 2003年9月、ムジークフェライン ライヴ録音
 
ムターの見事な演奏です。ただ、弱音器を付けた第2楽章の響きがちょっと変なのが残念です。


3曲目のブラームスの交響曲第2番は以下のCDを聴きました。

 ベルナルド・ハイティンク指揮ロンドン交響楽団 2003年5月17&18日、ロンドン、バービカン・センター ライヴ録音

ハイティンク指揮のロンドン交響楽団のブラームス交響曲全集はそれほど世評に高くはありませんが、saraiにとってはベストの演奏です。実演では第1番しか聴いていませんが、素晴らしい演奏でした。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       辻彩奈,

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07/08 15:53 じじい@

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久々のコメント、ありがとうございます。
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06/18 12:46 sarai

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