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超名演!ヒラリー・ハーン、そして、ブルックナーははたして?@サントリーホール 2012.6.7

今日はサントリーホールで先日の横浜みなとみらいホールとまったく同じプログラムのコンサートを聴きました。先日のコンサートの事はここです。

今日のプログラムはアンコール以外は同じ内容で以下のとおりです。

  ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
  指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
  管弦楽:フランクフルト放送交響楽団

  メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
   《アンコール》バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 BWV1003よりグラーヴェ、アレグロ

《休憩》

  ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調
   《アンコール》なし!!

みなとみらいホールでのヒラリーのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲はsaraiの生涯最高の素晴らしい演奏でした。はたして、今日はそれ以上の演奏ってできるものでしょうか。第1楽章の第1主題は前回同様、素晴らしい響きとめりはりのある表現で最高です。展開部の中間を過ぎて、かなりテンポを落として、十分な表情を付けながら、魅惑的な演奏をくりひろげます。これはたまりません。こんなメンデルスゾーンは聴いたことがない!物凄い演奏です。いったん、テンポアップし、また、テンポダウン。実に抒情的なロマンチシズムに魅了されます。何という演奏でしょう。すぐにカデンツァにはいり、ヒラリーのヴァイオリンの素晴らしい響きにうっとりするだけです。そして、第1楽章のフィナーレ、高揚感に満ちたヴァイオリンの演奏が冴え渡ります。もう夢中になって聴き入るのみです。ヴァイオリンパートが終わり、これがオペラだったら、大声援のところです。今日はパーヴォもうまく伴奏を付けて、ぴったり息が合っています。そのまま、第2楽章にはいります。少し早目のテンポで抒情的な主題が弾かれますが、今日は響きが素晴らしいです。中間部からはぐっと感情を込めて、美しいメロディーが歌われます。また、最初の主題に戻りますが、今度はずっとスローに静謐でデリケートな表現です。抑えた音量でもsaraiの胸に抒情が迫ってきます。この楽章の構成が素晴らしいです。考え抜かれたようにも思えますし、即興的に弾いていたようにも思えます。実に自在な演奏でした。
第3楽章はまさにヴィルトゥオーソ的な演奏です。緻密で大胆な演奏です。パーフェクトというだけでは表現が足りません。完璧な技術をベースに気魄あふれる演奏です。そうなんです。今日のヒラリーには気魄があります。これまでのようなクールさをかなぐり捨てたような気魄が感じられます。胸が熱くなり、大変な緊張感を味わいました。緊張感で胃がしめつけられるほどです。演奏する姿は若く美しい女性ですが、その表現する音楽たるや、過去の巨匠たちの名演を忘れさせるものです。物凄い高みまで上り詰めて、フィナーレ。
これほどのメンデルスゾーンが聴けるとは思ってもみませんでした。新鮮で抒情にあふれ、それでいて気概に満ちた超名演奏です。このまま、ライブ録音でCD化してもらいたいほどです。今回のヒラリーの来日演奏はこれでオシマイ・・・。満足したけれども、また、しばらく聴けないのが残念です。でも、次はいつ何を聴かせてくれるか、楽しみです。

おっと、まだ、アンコールがあります。ホールからの大拍手に応えて、今日は彼女の日本語が聴けました。「バッハのグラーヴェです。」 また、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタの素晴らしい響き。前回のアンコールと合わせて、これで第2番のほとんどを聴いてしまいました。アンコールとは言え、これはもうミニリサイタルです。で、もう1曲。前回も聴いたアレグロです。ヒラリーの透き通った声で「バッハのアレグロです。」 前回以上の精度の高い演奏で、気魄に満ちています。これも超名演奏です。もう、これで十分満喫させてもらいました。

休憩後ははっきり言って、全然、期待していないブルックナーの第8番です。前回はがっかりでした。お蔭でチェリビダッケの素晴らしいライブCDを2枚も聴いて、気持ちはすっきりしています。
第1楽章です。うっ・・・、何か違うぞ。オーケストラの響きが美しい。ブルックナーの美しい響きです。どうしたんでしょう。同じオーケストラには思えません。美しい響きが続き、ホルンも無難な演奏。満足の第1楽章です。
第2楽章。やはり、パーヴォのテンポは前回同様速過ぎます。テンポが速いのは構いませんが、オーケストラが十分にこなせなくて、響きが崩れます。ブルックナーは響きが一番大切です。それはチェリビダッケが教えてくれました。中間部はテンポもゆったりとして、とても美しい演奏です。最初の入りのテンポ速過ぎがもったいなかったです。気になったのでおよその演奏時間を計ってみましたが、13分ほどです。とても速いテンポですが、シューリヒトの名演もそれくらいでしたから、ありえない速さではないようです。でも、シューリヒトが振ったのはウィーン・フィルです。ウィーン・フィルなら演奏可能な速さだったんでしょう。でも、入りの速さを別にすれば、この楽章も美しい響きが散りばめられていました。
さて、こうなると期待したくなる第3楽章。前回はだれたような演奏で眠気を催しました。今日は特に後半の美しい響きに圧倒されました。眠気などとんでもないような素晴らしい演奏です。これも時間を計ったら27分ほどで、ゆっくりめの演奏でした。
最後はブルックナー最後の終楽章。第9番は未完で第3楽章までしかありませんからね。これまた、美しい響きに満ちた素晴らしい演奏。この日、最高の演奏でした。まさに終わりよければすべてよしという感じです。これも前半の2楽章、そして、天国のような第3楽章が素晴らしかったからだからこそ言えることです。因みに第4楽章は少し速めの24分ほどでした。残念なのは第4楽章も入りが速過ぎて、響きが濁ったことです。これはパーヴォのブルックナー演奏の今後の課題です。チェリビダッケが手兵とういうべきミュンヘン・フィルを鍛え上げたように、速い演奏でも演奏可能なオーケストラを鍛え上げるか、響き優先で曲の構成を見直すか、長い時間をかけて、模索してもらいたいと思います。saraiはその成果を聴くことはないでしょうけどね。

いずれにせよ、素晴らしいブルックナーでした。昨年の大震災の直前に聴いたリッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のブルックナーに優るとも劣らずという感じでした。そのときの記事はここです。

ところで謎は何故、同じオーケストラ、同じ指揮者、同じ曲がこんなに変身をとげたかです。ひとつはsaraiの耳がおかしいという仮説があります。しかし、ネット上のいくつかの感想を読むと基本的にsaraiと同じく横浜のブルックナーはよくなかったという声が大半です。で、オーケストラの来日スケジュールを調べてみました。来日直後は札幌で、翌日は松戸で非公開コンサート、そして、翌日が横浜みなとみらいホールのコンサート。ヨーロッパからの移動と日本国内の移動、そして、時差ぼけのさめやらぬ中での公演だったのかもしれません。saraiだって、ヨーロッパの旅から戻った直後のコンサートは頭ぼけぼけです。もちろん、オーケストラはプロ集団ですが、やはり人の子。ホルンが寝ぼけた音を出していたのもうなづけます。また、演奏曲目が最悪だったですね。長大なブルックナーの第8番。7番とか9番なら、まだよかったかもしれません。
事実、横浜の翌日の名古屋の愛知芸術劇場の公演ではマーラーの第5番を見事に演奏し、ホルンも好演だったようです。Masaさんのブログをご覧ください。ここです。
昨日のサントリーホールのマーラーの第5番も素晴らしい演奏だったようです。ハルくんさんのブログをご覧ください。ここです。
サントリーホールに腰を落ち着け、マーラーの勢いのまま、ブルックナーの素晴らしい演奏に突入したんですね。

ここで教訓:ヨーロッパのオーケストラの来日公演は来日直後のコンサートはなるべく避けよ!

指揮者や人気ソリストは世界を飛び回っていますから、まさか時差ぼけ演奏はないでしょう。

色々、考えさせられたブルックナーでした。ところでパーヴォは今日はアンコールはやりませんでした。それは正解でしょう。あれだけの演奏の後にブラームスのハンガリー舞曲やシベリウスの悲しきワルツは興ざめですからね。納得です。パーヴォのコンサートでアンコールがなかったのは初めてです。彼もさすがに疲れただろうし、それ以上に、よい演奏ができて満足だったんでしょう。

あくまでもヒラリーのヴァイオリンを聴きにいったコンサートでしたが、期待は2倍も3倍も応えてくれて、とても嬉しい感動のコンサートでした。


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この記事へのコメント

1, Masaさん 2012/06/08 09:07
おはようございます。
まず、ブログの紹介をしていただいて感謝を申しあげます(礼)。

そうですか!!良かったですか! なんか、私もあの横浜公演のブルックナーは本来のヤルヴィ、そしてフランクフルト放送響の力ではないのでは・・・と思っていたんですけど、やはりそうだったんですね。
確かに来日直後の公演は避けるべし・・・これ教訓ですかね(笑)
プロだって人間ですから・・
素晴らしいブルックナーの後にはアンコールは必要ないですよね。それにも共感です。あーすばらしいブルックナー、私も聴きたかったです。
長くなってすいませんが、シャイーのライプツィヒは私も行くはずでした。しかし、3月1日に急病で入院してしまい行けなかったんですよね。残念。
私の中で今一押しのブルックナー指揮者は、ブロムシュテットかも知れません。記憶に残っている名演は、チェコフィルの8番ですね。あと、N響との7番も名演でした。

2, ハルくんさん 2012/06/08 23:42
こんにちは。

記事中での拙ブログの紹介をどうもありがとうございます。
サントリーでは、ブルックナーも素晴らしかったようで良かったですね。
マーラーのほうも期待以上の素晴らしさでした。パーヴォの譜読みの深さと表現力は驚くほどです。Cクライバー以上じゃないかと思いました。
もちろん、だからといってレパートリーの全てを好きになるわけではありませんけれども。

ブルックナーはティーレマンが期待できますね。Rシュトラウスやワーグナーが良い指揮者は、まずブルックナーも良い演奏をしますから。

3, saraiさん 2012/06/08 23:49
Masaさん、こんばんは、saraiです。

フランクフルト放送響はなかなかよかったです。特に気合のはいった低弦セクションの響きが印象的でした。やはり、ドイツのオーケストラは実力がありますね。
シャイーのゲヴァントハウスは残念でしたね。期待以上のブルックナーだったんです。でも、健康第一です。
ブロムシュテットですか。彼はゲヴァントハウスとのベートーヴェンの第7番しか聴いていませんが、派手さはないものの粛々とした演奏に好感を持った記憶があります。今度はバンベルク響との来日ですが、パスしました。
今、saraiが一番期待しているのは何といってもティーレマンです。ブルックナーの第7番、楽しみですね。

4, saraiさん 2012/06/09 00:03
ハルくんさん、こんばんは、saraiです。

いやはや、パーヴォの評価、物凄く高いですね。クライバー以上とは凄いですね。ただ、指揮が絵になるのはクライバーですね。音楽と関係はないですねどね。パーヴォのマーラーはそんなに凄いんですね。パーヴォのブルックナーは残念ながら、チェリビダッケやヨッフムを超えるものではないと思います。やはり、ティーレマンが期待大です。ウィーンの音楽通のかたのご意見ではティーレマンはワーグナーとブルックナーはいいけど、ベートーヴェンやシューマンはやり過ぎでだめってことでした。私は彼のシューマンの第4番に感動しましたけどね。聴きどころでの彼の推進力は凄いとしか言いようがありません。

5, ハルくんさん 2012/06/09 15:59
saraiさん、こんにちは。

絵になるのはクライバーですが、楽譜の読みと表現力ではパーヴォは飛び抜けていますよ。アンコールのハンガリア舞曲などは他の誰にも絶対に出来ない演奏でした。
マーラーはバーンスタインやテンシュテットのスタイルのほうが好きなのですが、あれだけ面白く聴かされるともう降参です。

ティーレマンですが、ベートーヴェンの全集は非常に素晴らしいと思っていますよ。ブラームスはちょっとどうかなとは思いますが。

6, saraiさん 2012/06/09 23:46
ハルくんさん、こんばんは、saraiです。

パーヴォのマーラー、そんなにいいのなら一度は聴いてみましょう。

ティーレマンのベートーヴェンの全集、まだ未聴ですが、入手済です。ゆっくり、聴いてみます。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       ヒラリー・ハーン,

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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
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06/18 12:46 sarai

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