木嶋真優、会心のチャイコフスキー 大植英次&東京交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2021.5.2
最初はその木嶋真優がチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を弾きます。冒頭、おっと驚きます。大胆にも少しポルタメントをかけた甘い響きの滑り出し。それがなかなか、ロマンティックな感じで様になっています。もちろん、以降はそういうポルタメントはありませんでした。ただ、音楽は冒頭の1フレーズが全体の印象を左右するので、好印象で前のめりで耳を傾けます。美しい響きできっちりと第1楽章をまとめあげます。素晴らしい演奏の部類に入るでしょう。テクニック、音の響き、音楽性、すべて、気持ちよく聴けました。第2楽章のカンツォネッタも美しい演奏でしたが、抒情性において、もうひとつ満足できません。もっとも第1楽章が素晴らし過ぎたから、その比較においてのことで、通常レベルでは問題のない演奏ではありました。圧巻だったのは第3楽章。思い切ったテンポの切り替えでスリリングな演奏です。超高速パートの完璧な演奏に舌を巻きます。終始、目まぐるしく緩急をつけて、素晴らしい演奏です。オーケストラは大植英次が熟達した指揮で木嶋真優のヴァイオリンにきっちり合わせます。そして、木管パートがヴァイオリンと素晴らしい掛け合いを聴かせてくれます。とりわけ、クラリネットのエマニュエル・ヌヴーの演奏力が群を抜いていました。
ともかく、初聴きの木嶋真優のヴァイオリンに大いに満足しました。これからも目を離せませんね。
休憩後、チャイコフスキーの交響曲 第4番。ともかく、東響の弦楽パートはもちろん、管楽パートの素晴らしさに感銘を覚えました。とりわけ、木管の首席奏者のトライアングル、オーボエの荒木奏美、フルートの相澤政宏、クラリネットのエマニュエル・ヌヴーの妙技に耳をそばだてました。ファゴットの福井蔵もなかなか。金管もあの運命のファンファーレを見事に熱演。しかし、大植英次の指揮は熟達しているものの、その音楽はもうひとつ、心に迫りませんでした。バーンスタインの助手をしていた経歴から、バーンスタインばりのチャイコフスキーを期待したのがいけなかったのかもしれません。バーンスタインのように燃えるような熱情、そして、深く、しみじみとした抒情を期待しましたが、まったく、スタイルが異なります。小林研一郎&日本フィルの演奏を聴いたばかりですが、オーケストラは圧倒的に東響が素晴らしく、指揮はつぼを抑えた小林研一郎に軍配を上げます。音楽はなかなか難しいものだし、指揮者の役割や個性がこんな重要なものだということを痛感しました。大植英次は欧米でも実績のある指揮者ですから、次の機会には期待したいものです。
今日のプログラムは以下のとおりでした。
指揮:大植英次
ヴァイオリン:木嶋真優
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
《休憩》
チャイコフスキー:交響曲 第4番 へ短調 Op.36
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を予習したCDは以下です。
リサ・バティアシュヴィリ、ダニエル・バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリン 2015年6月 セッション録音
バティアシュヴィリのチャイコフスキーは現代を代表する演奏のひとつと言えます。saraiはザルツブルク音楽祭で二人のコンビの演奏を聴いて、大変、感動しました。
2曲目のチャイコフスキーの交響曲 第4番を予習したCDは以下です。
レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック 1989年10月 ニューヨーク セッション録音
バーンスタインが亡くなるちょうど1年前の録音。スケールの大きな熱のこもった演奏ですが、それ以上に真の芸術家のみが到達できる音楽であることが実感できます。大変なレベルの音楽を聴くことができます。
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