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武満とメシアン、2人の天才を見事に表現した究極の室内楽 小菅優・金川真弓・ベネディクト・クレックナー・吉田誠@サントリーホール ブルーローズ(小ホール) 2021.6.15

今年のサントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンの白眉とも思えるコンサートを聴きました。

知的なアプローチをもとに、感性で訴えかける演奏をするときに魂を震わせる音楽の感動が生まれる。そう分かっていてもそんな演奏は滅多にありません。今日のコンサートは最初からステージ上の演奏者も熱心に詰め掛けた聴衆もピンと張り詰めた空気が漂っていました。2人の天才作曲家、武満とメシアンの傑作を名人たちがその技量の限りを尽くして、熱い魂の演奏を繰り広げました。物凄い演奏でした。

今日のコンサートをプロデュースしたのはピアニストの小菅優。彼女の知性と思いが結実した感のある演奏でした。テーマは「愛・希望・祈り」。戦争を知らない世代が現代の危険とも思える世界情勢の中で、音楽で何が実現できるかの問いを込めて、メシアンが第2次世界大戦時に捕虜収容所で作曲・初演した希代の名作『世の終わりのための四重奏曲』を中心としたプログラムに挑むというものです。我々、聴衆もほとんどが戦争を体験していない世代ですが、その音楽家たちの思いを受け止めてみましょう。

冒頭は4人が舞台に登場しますが、まずは、小菅優が極めて美しいタッチのピアノ・ソロで武満徹の『2つのメロディ』より 第1曲「アンダンテ」を奏でます。武満とは思えないようなメロディアスで優しい抒情に満ちた作品です。ほのぼのとした郷愁すら感じます。この短い曲を序奏のようにして、次の『カトレーンⅡ』に入っていきます。これはなかなか難解な曲です。よく分からないうちに曲の中途に差し掛かります。いったん、間があり、クラリネットのソロで単音で長いクレッシェンドがあります。ここで初めて、彼らが演奏する曲にsaraiの心がつながります。そして、ヴァイオリンとチェロの合奏が加わりますが、何故か、すべての音が心に直接、響いてきます。シンパシー、共感を覚えます。ピアノの優しい響きも心の襞にはいってきます。音楽が分かったのではなく、心に感じたんです。音の響きに魂が勝手に反応して深く感銘を覚えます。4人の演奏者の心の奥底からのメッセージがsaraiの心に伝わってくる感じです。共感は次第に深まっていき、曲を閉じるころには深い感動を覚えます。正直言って、武満の音楽をこんなに深い感銘を受けながら聴いたのは初めてです。やはり、武満は天才だったんですね。それを実感させてくれた4人の素晴らしい音楽へのアプローチでした。冒頭に書いた、知性と感性で音楽を描きあげて、魂を震わせる演奏でした。休憩中も何か、しびれるような感覚が続いていました。

休憩後は、メシアンが捕虜収容所で作曲・初演した希代の名作『世の終わりのための四重奏曲』です。8曲からなる大曲です。四重奏曲ではあるものの、曲によっては独奏曲や2重奏曲など、いろいろな組み合わせの楽曲に変化します。メシアンらしい哲学的、宗教的な瞑想が中心ですが、4人の演奏者の緊張感あふれる演奏は音楽を超えて、魂をむき出しでぶつけてくるような熱いメッセージです。これが室内楽の本質でしょうが、お互いの音を聴き合いながらも、それに自分の感性を乗せて、次のパッセージにつなげていくという連鎖反応的な音の連なりに、聴衆である自分もその演奏に参加しているような錯覚を覚えます。鳥の声も聴こえましたし、魂の瞑想も感じましたし、神への信仰の心も感じました。長大な音楽に魂が揺さぶられているうちに最後の8曲目の《イエスの不滅性への賛歌》、ヴァイオリンとピアノの2重奏曲に至ります。この静謐な音楽は魂のカタルシスです。この曲で魂を浄化するためにここまでの音楽が紡がれてきたのだということを悟ります。金川真弓のヴァイオリンがこれ以上、美しくは弾けないという風情で素晴らしい響きで歌い上げます。魂の賛歌であり、レクイエムでもあります。静謐な音楽はいつしか、天上に昇りつめて、我々を神の国に連れ去ります。あまりの感動に心が真っ白になります。音楽を聴いたというよりも、音楽を通じて、何か聖なる体験をしたという感覚です。普通の意味で拍手をするというものではありません。初演では捕虜収容所で400人の捕虜がこの稀有な音楽を耳にしたそうですが、限界状況の中で、この音楽は彼らの心にどう響いたのでしょう。想像で自分を重ね合わせてみると、ただ、沈黙して、涙するしかなかったでしょう。


今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:小菅優
  ヴァイオリン:金川真弓
  チェロ:ベネディクト・クレックナー
  クラリネット:吉田誠


   武満徹:『2つのメロディ』より 第1曲「アンダンテ」(ピアノ・ソロ)
   武満徹:『カトレーンⅡ』

    《休憩》

   メシアン:『世の終わりのための四重奏曲』

    《アンコール》
    なし


最後に予習について触れておきます。
1曲目の武満徹の『2つのメロディ』はてっきり、4重奏版があるものと思って、音源を探したので、ある筈もなく、予習できず(ピアノ・ソロ版の音源はあったのに・・・)。


2曲目の武満徹の『カトレーンⅡ』は以下のCDを聴きました。

 タッシ 1978年10月16-18日 ニューヨーク RCAスタジオA セッション録音

ちゃんと評価できませんが、何か素晴らしそうな演奏です。


3曲目のメシアンの『世の終わりのための四重奏曲』は以下のCDを聴きました。

  タッシ 1975年9月8,9日、千葉県柏市民会館、12月19日、ニューヨーク、RCAスタジオA セッション録音
  ミシェル・ベロフ(ピアノ)、エリック・グリュエンバーグ(ヴァイオリン)、ド・ペイエ(クラリネット)、ウィリアム・プリース(チェロ)
       1968年10月14-16日、 No. 1 スタジオ、アビーロード、ロンドン セッション録音

この曲を演奏するために結成されたタッシならでは見事な演奏。ミシェル・ベロフたちも音楽の本質に迫る名演。




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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       金川真弓,

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