ポゴレリッチplaysショパン:ピアノ協奏曲@サントリーホール 2012.5.7
今日のプログラムは以下です。
ピアノ:イーヴォ・ポゴレリッチ
指揮:山下一史
管弦楽:シンフォニア・ヴァルソヴィアの弦楽器メンバー
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11(弦楽合奏版)
《休憩》
モーツァルト:ディベルティメント ニ長調 K.136
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 op.21(弦楽合奏版)
最初のピアノ協奏曲第1番を聴いたところで、はあ、困った・・・これは素人が簡単に感想を書けるような演奏じゃありません。ポゴレリッチの指先から流れてくる響きはとても豊かで磨き抜かれた艶のある美音です。しかし、その音楽は耳慣れたショパンの響きとはかなり普通の演奏とは違っています。
昔のことですが、ショパンコンクールでの審査でも審査員はその評価に困ったことでしょう。いいか、悪いか、理解が難しいですよね。アルゲリッチは「彼は天才よ!」って言ったそうですが、天才の彼女だから理解できたんでしょう。
少し、話がそれますが、saraiと配偶者がサントリーホールに入館し、席に着いたとき、ステージのピアノで誰か、音を出しています。調律の人でしょう。ただ、いつまでも静かに音を出しているので、不審に思って、よく見てみると、静謐な音楽を弾いているようにも思えます。よくよく見ると、配偶者もあれはもしかしてポゴレリッチじゃないのって言うし、確かにこんな音響を出せるのは只者ではありません。単なる音を適当に出しているのか、誰かの音楽を演奏しているのか、それとも即興演奏しているのか、永遠を感じさせる音の連鎖です。そうです、ポゴレリッチその人です。まだ、ステージ衣装を着ずにカジュアルな服装ですが、素晴らしい音楽を紡ぎ出しています。天才的なひらめきに満ちた演奏ですが、それにしても、このシテュエーションでピアノを弾くのは変わっていますよね。時折、客席のほうを窺うように顔を向けてきます。サービスなのか、アンコールの先出しなのか、それとも指慣らしなのか、分かりません。意外と客席の聴衆を観察しているのかも知れません。しばらくすると、係の女性が彼に声を掛けると、静かにステージを去りました。そろそろ、支度の時間でしょう。本物の調律も始まりました。調律師には悪いのですが、調律の音の非音楽性が耳につきます。さきほどのポゴレリッチの静かな音の美しかったことが思い出されます。
あえて、この話を長々と書いたのは、ポゴレリッチが如何に変わっていて、常人には理解を超えた天才かも知れないということを言いたかったからです。
ショパンの第1番の話に戻ると、ショパンらしいメロディーラインを避けて、骨格となる音だけを響かせ、残りの装飾音は小音量でデフォルメしているように思われます。それがよいのか、悪いのか、はたまた、好きか、嫌いか、早計には言えません。彼のような天才かも知れない人の演奏を一度聴いて、判断できるとは、自信家のsaraiでさえ、とても言えませんよ。まるで現代音楽を聴かされたような気分で理解不能でした。磨き抜かれたピアノの音響だけは凄いと思いました。
休憩後はモーツァルトの爽やかな演奏を挟んで、協奏曲の第2番です。これは古い演奏のCDが出ているので、あらかじめ聴いていました。そのせいか、あるいは、徐々に彼の演奏に馴染んできたのか、あるいはポゴレリッチが聴衆のレベルに合わせて、分かりやすく演奏したのか、いずれにせよ、それほどの違和感なく、聴ける演奏でした。これだったら、ショパンコンクールは軽く優勝できたでしょう。特に第2楽章のニュアンスに富んだ表現は聴き惚れました。ということで、彼の優しさからでしょうか、実に深く彫琢されたショパンの演奏、それも理解可能な演奏に接することができました。多分、色んな引き出しから、多彩な演奏を引っ張り出すことのできる人なんでしょう。ただ、それも推測に過ぎず、彼の演奏を生で何度も聴かないと理解は難しそうです。
saraiの素人評論家ぶりを嘲笑うような凄い音楽家の演奏でした。
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