あまりに素晴らし過ぎるシューマンのクライスレリアーナ、その詩情に満ちた演奏に絶句 田部京子ピアノ・リサイタル《シューベルト・プラス第7回》@浜離宮朝日ホール 2021.7.24
次のショパンのピアノ・ソナタ第2番「葬送」は第1楽章、第2楽章のダイナミックな演奏が素晴らしいのですが、やはり、田部京子らしくて、魅了されたのは第3楽章の中間部の抒情的なパートです。全般に素晴らしい演奏ではありましたが、曲自体がそれほど田部京子向きではないのが残念なところです。
今日はこんなものかなあと思っていたら、後半のシューマンのクライスレリアーナの凄かったこと! ピアノの響きも美しく、完璧とも思える演奏でした。昨年聴いた上原彩子の演奏も素晴らしかったのですが、あれはむらのある演奏でした。もっとも、それが魅力ではありました。今日の田部京子の演奏は魅力にあふれて、完璧でもありました。saraiの人生で最高のクライスレリアーナです。多分、これを超える演奏を聴くことはないでしょう。シューマンのピアノ曲で一番好きなクライスレリアーナの凄い演奏を聴いて、感無量です。迫力のあるパートも素晴らしかったのですが、やはり、シューマンの詩情に満ちた音楽をこのように演奏できるのは田部京子だけでしょう。いつもはこの曲は切れ込みの鋭い演奏に魅了されますが、抒情に満ちた詩情にこれほど魅了されたことはありません。シューベルトと同様、田部京子はシューマンの本質を描き出すことのできる稀有な天才ピアニストです。曲の詳細な演奏の感想を書きたいところですが、クライスレリアーナのような複雑な構造の作品は大づかみな印象しか、捉えることができません。それがシューマンの音楽の魅力だと思っています。これで田部京子のシューマンもこのクライスレリアーナで、これまでの幻想曲、交響的練習曲、謝肉祭など、主要な作品は聴かせてもらいました。もう満足です。あとはブラームスの後期作品、Op.116~Op.119が聴ければ満足です。既にOp,119は素晴らしい演奏を聴かせてもらいました。今年の暮れの次回のシューベルト・プラスでOp.118を聴かせてもえるようです。残りはOp.116とOp,117ですね。もちろん、シューベルトの最晩年のD.946の3つの即興曲(3つの小品)も残っています。シューベルト・プラスのシリーズも終盤にかかってきました。
そうそう、アンコールのトロイメライとショパンの夜想曲第20番もとびっきり、美しい演奏でした。最後はアヴェアリアで〆かと期待しましたけどね。
今日のプログラムは以下です。
田部京子ピアノ・リサイタル
《シューベルト・プラス第7回》
ピアノ:田部京子
シューベルト:ピアノ・ソナタ第4番イ短調D.537 Op.164
ショパン:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調「葬送」Op.35
《休憩》
シューマン:クライスレリアーナ Op.16
《アンコール》
シューマン:『子供の情景』Op.15 より 第7曲 トロイメライ(夢) (Träumerei)
ショパン:夜想曲第20番 嬰ハ短調 BI. 49「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ(Lento con gran espressione)」(遺作)
最後に予習について、まとめておきます。
シューベルトのピアノ・ソナタ第4番を予習したCDは以下です。
アルフレート・ブレンデル 1982年3月、ロンドン セッション録音
シューベルトのピアノ曲全集と言えば、やはり、ブレンデル。この曲も美しいピアノの響きが素晴らしいです。
ショパンのピアノ・ソナタ第2番「葬送」を予習したCDは以下です。
ウラディミール・ホロヴィッツ 1962年 セッション録音
まさに鉄壁の演奏。何もいうことはありません。
シューマンのクライスレリアーナを予習したCDは以下です。
ウラディミール・ホロヴィッツ 1985年 セッション録音
これも完璧な演奏。これにマルタ・アルゲリッチの録音があれば、ほかには何も必要ありません。ホロヴィッツの鉄壁な演奏とアルゲリッチの奔放な演奏が並び立ちます。
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