9分の2のコンサート:パク・ヘユン・ヴァイオリンリサイタル@紀尾井ホール 2011.7.27
パク・ヘユンは韓国の若手ヴァイオリニスト。彼女は多分、20歳になるか、ならないくらいの若さ。昨年、サー・ロジャー・ノリントン指揮のシュトゥットガルト放送交響楽団とブラームスのヴァイオリン協奏曲を共演したのを聴いて、一発でその魅力に参りました。それはここでも報告済。そのときの公演が多分、日本初公演だったと思います。それ以来、ずっと彼女の演奏を聴きたくて待ち続けていました。やっと、今日、それが実現します。ちなみに今後はNHK交響楽団や東京交響楽団の演奏会にも登場するとのことです。これから、世界のメジャーな存在になるのではと予想しています。それくらい、期待している逸材です。
今日は早めに紀尾井ホールの最寄り駅のJR四ツ谷駅に到着。駅付近を散策し、ネットで評判の高い洋食エリーゼで早めの夕食。メンチカツ定食、ハンバーグ定食を食べましたが、リーズナブルな価格で満足な味です。開店の5時過ぎには、もう満席だったのでビックリ!
表通りのサンマルクカフェで時間調節をして、紀尾井ホールへ。
受付で古い日付(3月16日)のチケットを今日のチケットに交換して、入場。
すると、配偶者がエッと言って、壁の掲示を指さします。何でしょう。
おおっ! パク・ヘユンが体調不良のため、予定していたワックスマンの《カルメン幻想曲》を弾かず、ピアニストが代わりに独奏曲を弾くということです。なんだか、とても心配です。ちゃんとした演奏が可能でしょうか?
とりあえず、席に着き、演奏を待ちます。今日のプログラムは以下です。
ヴァイオリン:パク・ヘユン
ピアノ:マリアンナ・シリニャン
リスト:ソナタ風幻想曲「ダンテ」を読んで ~巡礼の年第2年「イタリア」S.161(ピアノ独奏:変更曲目)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調Op.30-2
《休憩》
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調Op.18
ラヴェル:ツィガーヌ
《アンコール》
バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調BWV1003よりアンダンテ
1曲目のリスト、これはピアノ独奏。低音域の力感あふれる演奏ですが、叙情的な部分での繊細な響きが聴こえてきません。この対比の妙がリストの美点なので、今一つの演奏です。また、美しいクリアーなタッチというのが理想ですが、それもまだまだ。パワーのあるピアニストだけに弱音の美しさを身につけてもらいたいものです。演奏自体はまあまあでしょうか。
次はベートーヴェンですが、パク・ヘユンのヴァイオリンは期待というよりも心配です。だって、体調不良なんだそうですからね。
案の定、いかにも生彩を欠いた演奏です。そもそも、譜面台を立てて、演奏するのがおかしな感じ。室内楽ですから、もちろん、譜面台を立てて、いいのですが、若手のパク・ヘユンが満を持してのリサイタルで、ベートーヴェンのソナタを譜面台を立てて演奏するとは夢にも思いませんでした。決して、弾き込みが不足していたわけではなかったでしょうが、自信満々の演奏とはほど遠い。よっぽど体調が悪いか、精神的に思わしくない状態に思えます。ほんの1年前、聴かせてくれた素晴らしいブラームスの協奏曲を弾いた人とは別人のようです。演奏自体は一応整っていましたが、音の響き、情感すべて、不満足です。前回、初恋にも似た感情で気持ちを入れ込んだ彼女ですから、是非、立ち直った演奏を聴かせてほしいと思います。次回のリサイタルでは素晴らしい演奏を聴かせてくれることを願います。
休憩後のR.シュトラウスは事前にもっとも期待していた曲です。きっと感動させてくれるだろうと楽しみにしていました。第2楽章の前半はその片鱗は聴けました。とても美しい演奏でうっとりしますが、それでも彼女ならもっと美しい響きを奏でられるのではとも思います。前半のベートーヴェンよりもかなりよい演奏ではありましたが、期待からはほど遠い内容です。
最後のツィガーヌは前半の独奏部分を乗り切れるか、心配していましたが、何とここで譜面台を撤去。独奏部分はかなり踏み込んだ演奏ではありました。それまでに比べると、自己表現を出した演奏です。もっとも、saraiは彼女にはさらに高いレベルの演奏を期待していました。
アンコールのバッハの無伴奏ですが、先週、ツィンマーマンの素晴らしい演奏を聴いたばかり。曲は別ですが、とても満足のいく演奏ではありません。
まったく思いが外れて、残念な演奏を聴くことになりました。若い演奏家として、一つ目の精神的な壁にぶつかっているような気もします。聴衆の我々はいつも音楽を気楽な立場で聴いていますが、演奏する立場は大変でしょう。たった一人で日々、練習・練習で、際限のない上をめざし、その結果をリサイタルでsaraiのような期待過剰の聴衆に聴かせるわけです。その精神的プレッシャーたるや、想像できないほどです。
それでも、saraiは言いたい。壁を乗り越えて、芸術家として、無限の未来を目指してほしい。あの1年前のブラームスが弾ける人はどこにもいないのだから、パク・ヘユンは世界のトッププレーヤーに絶対なれる筈だと確信しています。これからも過剰に期待し続けて、見守り続けます。また、あのときのブラームスのような溌剌として、美しい響きで情感にあふれた演奏が聴きたい!
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!

- 関連記事
-
- レイフ・オヴェ・アンスネス・ピアノ・リサイタル@東京オペラシティ 2011.9.22
- 9分の2のコンサート:パク・ヘユン・ヴァイオリンリサイタル@紀尾井ホール 2011.7.27
- ツィンマーマン入魂のベルク:アラン・ギルバート+東京都響@サントリーホール 2011.7.18