《チャルダッシュの女王》@ウィーン・フォルクスオーパー 2011.4.13
明らかに目立つのはバレエが増え、踊り手のレベルも確かなものになっていました。また、特筆すべきは舞台のセットです。アールヌーボー調のとても華やかなセットでミュシャの絵と見紛うばかりのオシャレな大きな絵が目立ちます。ブダペスト、ウィーンの世紀末の感じがよく出ています。昨日の《こうもり》といい、素晴らしく派手な仕上がりのオペレッタになっています。まあ、派手過ぎともいえ、賛否両論もあるかも知れませんがオペレッタはこれくらいやったほうが楽しめるでしょう。もちろん、演出もこのショーアップ路線上にあり、もうやれるだけのことはやるという徹底ぶりです。
今日のキャストは以下でベストとも思えるメンバーです。
カールマン:オペレッタ《チャルダッシュの女王》
指揮:ルドルフ・ビーブル
演出:ロベルト・ヘルツル
アンヒルテ(侯爵夫人):マリア・ハッペル
アナスタシア(スタージ):アニータ・ゲッツ
シルヴァ・ヴァレスク:インゲボルク・シェプフ
レオポルト・マリア侯爵:ペーター・マティック
エドウィン・ロナルド:セバスティアン・ラインターラー
オイゲン・フォン・ローンスドルフ陸軍中尉:マーティン・ベルモーザー
ボーニ:ジェフリー・トレガンザ
フェリ・バチ:クルト・シュライブマイヤー
シギ・グロス:ニコラウス・ハッグ
序曲が華やかに響き、第1幕の冒頭、スクリーンの向こうに主要人物が登場、なかなかいい始まりですね。最初に舞台の大階段からシルヴァ役のシェプフが華やかに登場、絵になり、声も伸びています。中低域の声の響きがもうひとつですが高い声はよく響いており、演技・踊もうまく、シルヴァ役としてはこれまで聴いたなかでは一番の出来です。ボーニ役のトレガンザは身のこなしも演技も及第点で歌もまあまあです。役どころを心得ている感じですね。フェリ・バチ役のシュライブマイヤーは渋い演技で狂言回しを十分こなしていましたし、ヨイ・ママンもよく踊っていました。エドウィン役は好調なラインターラー、声も演技も素晴らしいですが、彼ならもっと歌えたと思う部分もありました。第1幕はこれらの登場人物が存分に役どころをこなし、カールマンの哀愁のあるメロディーに乗って、ときにはテンポの自在な変化でのりのりの舞台を作って、大拍手のなか、終了。
休憩後、街2幕から第3幕まで休憩なしに一気に舞台は進みます。そうそう、舞台の転換の見事さには脱帽です。幕の下り方、つりさげた大道具の上下の動き、すべてが素早く、きびきびした舞台進行になっており、密度の濃い舞台作りになっています。2幕目も相変わらず、バレエシーンが目立ち、世紀末の華やかさを演出しています。ここで出色だったのは、今評判のスタージ役のゲッツです。歌良し、踊り良し、演技良しで、さらに器量良し。これまでのスタージの印象を変えてしまい、主役を食ってしまいかねない勢いです。無論、saraiも一遍でファンになってしまいました。彼女で見てみたいオペレッタがいろいろ想像できます。今日の全登場人物でも最高でした。彼女とエドウィンの絡み、彼女とボーニとの絡み、いずれもなかなかの見ものでした。ヨイ・ママンも一緒に踊らせたいくらい(笑い)。
第2幕も哀愁とテンポ変化ののりが続きます。ビーヴルさんの指揮ぶりは無理がなく壺をおさえたもので流石です。時折、このフォルクスオーパーの大きさでは鳴らし過ぎもありましたが、これもオペレッタの醍醐味として許容しましょう。最後は少し悲しい人生哀歌模様で終了です。
すぐに引き続き、第3幕が始まります。また、アールヌーボー調のセットに目が奪われます。素晴らしいセットです。この幕は話が二転三転するセリフの多い幕です。まあ、それ以上に幕の初めのほうでのヨイ・ママンの素晴らしさがすべてでもあります。オペレッタ好きはみな心が躍る場面ですね。この日のヨイ・ママンも歌のテンポのノリの良さ、そして、3人の息の合った踊りは楽しさの極致です。リフレインは一度だけ。これだけが不満です。聴衆の受けを見ての臨機応変も欲しいですね。何せ一番の山場ですから。それから、もうひとつ残念だったのはリフレインが減ったせいか、日本語の歌詞がなくなったことです。サプライズで嬉しかったんですけどね。
フィナーレは嬉しいハッピーエンドがダイナミックにしめくくられ、とてもほろりとしてしまいます。このあたりがオペラとの最大の相違点ですね。誰も死なないしね。
大満足のオペレッタで、今回のウィーン訪問も幕。やはり、ウィーンはオペラもオペレッタもマーラーもすべてが素晴らしく、決して、裏切られることがありません。体が動き、感性に曇りが生じない限り、今後もウィーン詣では続きそうです。
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