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ネメット70歳記念《チャルダッシュの女王》@ウィーン・フォルクスオーパー 2012.4.21

ほぼ1年ぶりでフォルクスオーパーのオペレッタ《チャルダッシュの女王》を見ることになりました。昨年聴いたときの感想はここです。今回の旅では、1年前に聴いたばかりだし、聴かないつもりでしたが、お友達のsteppkeさんから、ネメットさんの70歳記念公演(フォルクスオーパー出演30年記念)で、ネメットさんのフェリ・バチは今回で最後の舞台になりそうだという情報をいただき、あわてて、チケットを購入しました。ネメットさんのフェリ・バチといえば、ちょうど10年前に初めてフォルクスオーパーでオペレッタを聴いたときの《チャルダッシュの女王》で大変、楽しい体験をさせてくれたことを思い出します。ヨイ・ママンのリフレインを日本語でやってくれたときのことは今でもまざまざとよみがえってきます。あれでオペレッタの楽しさを知ったんです。saraiのオペレッタへの道を開いてくれた恩人とも言える人の記念すべき公演を聴き逃すわけにはいきません。

今日のキャストは以下です。

カールマン:オペレッタ《チャルダッシュの女王》 
 指揮:ルドルフ・ビーブル
 演出:ロベルト・ヘルツル
 アンヒルテ(侯爵夫人):マリア・ハッペル
 アナスタシア(スタージ):エリザベート・シュヴァルツ
 シルヴァ・ヴァレスク:アネリー・ペーボ
 レオポルト・マリア侯爵:ペーター・マティック
 エドウィン・ロナルド:トーマス・シグヴァルト
 オイゲン・フォン・ローンスドルフ陸軍中尉:マルクス・コフラー
 ボーニ:ロマン・マーティン
 フェリ・バチ:サンダー・ネメット
 シギ・グロス:ニコラウス・ハッグ

演出は1年前と同じです。派手なバレエが多く、踊り手のレベルも見事なものです。また、舞台のセットは何度見ても素晴らしく美しいです。アールヌーボー調でミュシャの絵もどきの大きな絵が目をひきます。

序曲が華やかに響き、開演です。ビーブルさんのつぼをしっかり押さえた指揮で見事な演奏です。第1幕の冒頭、舞台の大階段からシルヴァ役のペーボが華やかに登場、とても大柄でスタイルがよく、役柄にあっています。声は高域がしっかりと出ており、及第点です。中低域の声があまり出ていないので、すこし聴きとりにくい感じ。演技・踊りはしっかりとこなしています。シルヴァ役としては前回聴いたシェプフと同じくらいで立派な出来と言えます。ボーニ役のマーティンはとにかく声がよく通り、歌もうまく、とても満足な出来です。もちろん、演技も踊りにもうーんとうなされます。足りないと言えば、カッコよさくらいですね。フェリ・バチ役の注目のネメットはもう存在感だけでも華があります。お歳ですが、スタイルもよく、踊りも十分こなしています。せりふの声はさすがに少し声量が落ちている感じですが、saraiはドイツ語が分からないので、特に問題なし。歌はメリハリをきかせて、ここぞというところでは頑張って歌ってくれていました。まだまだ、やれそうな感じなので、これでフェリ役がおしまいなのは残念です。エドウィン役はシグヴァルト、声も演技もまあまあというところでしょう。第1幕はバレエの華やかな踊りに乗って進行します。また、カールマンの哀愁のあるメロディーの数々すべてがとても素晴らしい。一緒に口ずさみたくなってしまいます。前回はなかったリフレインまでがあり、聴衆は手拍子で乗りまくりになります。舞台の中心にはネメットが立ち、全体をとりしきり、しまった舞台を形作ります。あっという間に第1幕は大拍手のなか、終了。

休憩後、第2幕から第3幕まで休憩なしに一気に舞台は進みます。舞台の転換の見事さには前回同様でてきぱきと物語は進行していきます。2幕目では、スタージ役のシュヴァルツが登場。白いドレスに身を包み、立ち姿の美しさに目を惹かれます。歌声も綺麗で、踊りもうまく、演技もなかなかのものです。前回、とても評判になったスタージ役のゲッツには溌剌さで少し及びませんが、十分、満足できる歌手です。
第2幕も哀愁のメロディーが続き、saraiは聴き惚れてしまいます。ビーヴルさんの指揮による部分が大きいと感じます。前回は、このフォルクスオーパーの大きさでは鳴らし過ぎも感じましたが、今回はうまくオーケストラをメリハリをきかせて鳴らし、鳴らし過ぎに感じる部分もなく、それでいて、十分なダイナミックレンジで幅の大きな演奏を聴かせてくれました。ネメットのお祝いということで、オーケストラのメンバーも力がはいっているのでしょう。最後はシルヴァが身を引く悲しいシーンで幕切れです。

すぐに引き続き、アールヌーボー調のセットの第3幕が始まります。この幕にはいると少しそわそわしてきます。いよいよ、楽しみにしているヨイ・ママンが近づいてくるからです。登場人物も入れ替わりながら、徐々にヨイ・ママンの3人に絞られていきます。さあ、いよいよです。まずはネメットが歌い始めます。十分に声が響いてきます。この場面が見たくて集まった聴衆がほとんどでしょう。まさに千両役者。踊りも素晴らしい。聴いているsaraiも興奮します。歌はシルヴァ、ボーニに歌い継がれて、最後のダンスの見事さ。万上の拍手です。もちろん、ネメットに対しての賛辞です。まずはハンガリー語(マジャール語)でのリフレインです。ホール全体が熱気に包まれます。名歌手、1世1代の素晴らしい歌と踊り。シルヴァとボーニも素晴らしいサポートです。まだリフレインは続きます。お待ちかね、日本語と英語でのヨイ・ママン、聴いているsaraiは感動に包まれ、嬉しくもあり、悲しくもあるという不思議な感情にとらわれて、もうボロボロになって聴いていました。これで聴きおさめかと思っていたら、まあ、今日の聴衆の凄いこと。ここでホールに聴衆全員が万雷の拍手でスタンディングオベーションを始め、延々と止めません。もちろん、saraiもその一員です。オペラでも滅多に幕の途中でこんなことになることはありません。ステージ上のネメットも困ってどうしたらいいのか分からない様子。後で聞いた話では、客席から見ていた総裁のロベルト・マイヤーがもう1度リフレインをやるようにステージに指示を出したそうです。素晴らしい判断です。最後のリフレインはまたマジャール語でした。素晴らしいヨイ・ママンでした。聴衆もこれで満足して、3回にわたるリフレインが終了。ネメットの素晴らしい晴れ舞台でした。
フィナーレのハッピーエンドで、またほろりとして、終幕。カーテンコールは延々と続き、ネメットさんの祝賀式典もありました。

大満足のネメットさんのフェリ・バチで、今回のウィーン訪問も幕。このままで終われないのは、日本からここへ駆け付けたオペレッタ好きの面々です。今晩はウィーン国立歌劇場でガランチャの《ばらの騎士》もやっていましたが、それを振って、フォルクスオーパーに集まったんです。それにふさわしい出来でした。近くのカフェ・ワイマールで祝杯を上げるために予約までしてあります。大いに盛り上がって、ウィーン最後の夜が更けていきました。もう、ウィーン抜きの人生はありません。



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この記事へのコメント

1, えりちゃさん 2012/04/27 21:02
sarai様、奥様、こんにちは。
ウィーンでご一緒させて頂いた大阪のオバハンこと、えりちゃです。
その節はお話出来て楽しかったです、ありがとうございました。
素晴らしいコンサートでしたね。あの地鳴りのするような弦の音、すごかったです。身体にしみ込みましたね。
ヨイ・ママンもハイマシ・ペーターも聞きたかった!!皆様、さすが情報通でいらっしゃる。
すごいブログやなあ、と読んで感心しました。私ならたった一言、”よかった”、”楽しかった”、で終わるのに、かくも詳細かつ丁寧に書いてあると、オノレの語彙の無さ、貧弱な表現力をただただ恥じるばかり。
また今後共、よろしくお願いします。

2, saraiさん 2012/04/28 02:54
えりちゃさん、無理やりのコメント、ありがとうございます。ずっとお待ちしていました。

ティーレマン+ウィーン・フィル凄かったですね! 一緒にお話しできて、楽しかったです。3回目の《ばらの騎士》はガランチャがよかったそうですね。楽しめたことでしょう。

音楽のブログでもありますが、中心は旅ブログです。これから、今、終えたばかりの旅の詳細編を書き始めますので、是非、ご愛読の上、コメントと人気ランキングの投票をお願いしますね(笑)。

ところで配偶者がEメールアドレスを教えてほしいそうで、mail欄にアドレスを記入してもらえませんか。一般公開はしないようにしますので。

3, Steppkeさん 2012/04/28 15:25
sarai さん、奥様、こんにちは。
悪い道に引き込んだ Steppke です。何とか1週間を乗り切りました。
(ちょっと長いので、分けてコメントします)

Németh さん、素晴らしかったですね。あの公演に立ち会えて、本当に幸福でした。
私の記憶の為にも、細かな点を幾つか。

第1幕の途中、O jag dem Glück nicht nach auf meilenfernen Wegen(遠くへ行っても幸せは見つからない)の前、大きな拍手が起こって1回目のスタンディングオベーションで劇が止まりましたが、Németh さんの Feri bácsi が「Es lebe die Jugend!(若さに乾杯!)」と言ったからでした。16日の公演ではそんなことはなかったので、やはり21日は特別でした。

4, Steppkeさん 2012/04/28 15:26
Jaj mamám(ヤイ、ママーン) の3回目のアンコール(これも16日には無し)は、最初はハンガリー語でしたが、リフレインの部分はロシア語でした。(私もロシア語は分かりませんが、Németh さんが歌う前にそう言ったので)

Németh さんも、終演後の式典で、目に涙を浮かべておられましたね。
Volksoper の女性スタッフからも花束が贈られましたが、一緒にアルバムも渡されました。Németh さんの Volksoper での活躍の写真が貼ってあるそうです。(私も欲しい..) 最後の数ページは、これからの活躍の為に空いていると言っていました。

これからも Németh さんの舞台に接することはできそうですが、老け役でしょうし、あれだけの役柄・名演とはなかなかいかないでしょうね。

5, えりちゃさん 2012/04/28 19:24
Sarai様、奥様、
またしてもコメントさせて頂きますね。
Steppkeさんのコメントを読んで、またまた感心!全部聞き取れているんですね!ひょっとしてテキストも全部、頭に入っている(@@)???!Volksoperに行くと、聞き取れないせいか、笑いのツボが分からなくて、寂しい時があります。
チャールダッシュの女王は、それこそまだ私が初々しいお姉さんの頃(遠い目)、20数年前の来日公演で聞いて、好きになりました。フムフム、今回がそんなオタカラ公演だったとは。
sarai様のブロクを精読して(!!!)、以後、聞き逃さないようにしますね。

6, saraiさん 2012/04/28 23:26
Steppkeさん、saraiです。

実に詳細なフォロー、ありがとうございました。本文よりも詳しかったりして・・・(笑)。さすがにオペレッタの先達・師匠です!

同じネメットさんが出演した公演でも、この日は特別だったんですね。
ヨイ・ママンの最後のリフレインはロシア語だったとは驚きです。

ネメットさんの目に涙は6列目のsaraiの席からは判然としませんでしたが、かぶりつきの中央に陣取ったSteppkeさんだからこそ、観察可能だったようです。
それにしても、Steppkeさんのお人柄からはそんなにオペレッタに熱くなるのは想像しがたいと配偶者と話していました。

ガランチャのオクタヴィアンもsaraiとは別の見方のようですから、同様にコメントをいただけると幸いです。

7, saraiさん 2012/04/28 23:39
えりちゃさん、saraiです。再度のコメントありがとうございます。

Steppkeさんへのお尋ねの件はご本人からコメントいただくとして、saraiの場合はドイツ語がほとんど聴きとれていないので、笑いのツボが分からない場合も多いですが、お芝居よりも音楽中心で楽しんでいるので、そんなに気になりません。

それよりもえりちゃさんはオペレッタ、フォルクスオーパーについて、saraiよりもずい分、先輩だったんですね。凄い! saraiはまだ、オペレッタ歴、たった10年で、何かとSteppkeさんたちにご指導・情報提供いただいています。当ブログでも、そういう情報も発信できるでしょう。ご精読いただければ嬉しいです。

8, Steppkeさん 2012/05/05 01:44
えりちゃさん、こんばんは。Steppke です。
楽友協会では、失礼しました。

私も、ほとんど聞き取れていません。
Die Csárdásfürstin は、1985年の来日時から何度も舞台に接していますし、東京文化会館でのライブCD(私はその場に居ました)も繰返し聴いたので、台詞も含めて事前に頭に入っています。なので、ちょっとした違いが分かっただけです。

Volksoper での笑いのツボは、半分も分かりません。
19日には Die Fledermaus に行きましたが、第3幕の Frosch(Gerhard Ernst さん)は時事ネタとか入るし、定番の冗談を除くとお手上げです。
しかし、ドイツ人でも分からないとか聞いていますし、地元の人でないと無理と最初から諦めています。

9, Steppkeさん 2012/05/05 01:46

そう言えば、3月に Baden で Viktoria und ihr Husar(ヴィクトリアと軽騎兵)に行った際、皆が笑い転げているのに独り笑えないでいると、隣の席のオバサマが外国人には駄目でしょうねとか話しかけて来ました。

それでも、オペレッタは、曲がきれいで親しみやすいし、面白いし(他人が笑い転げているだけでも楽しくなります)、やめられません。
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ジャンル : 音楽

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