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音の奔流の渦に溺れる ムーティ&ウィーン・フィルの圧巻のメンデルスゾーン《イタリア》@サントリーホール 2021.11.8

ウィーン・フィルは日本人にとって、特別なオーケストラなのですね。コロナ禍の中、敢然と昨年に続き、来日して、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。プログラムは2種類。どちらを聴こうか迷いましたが、結局、意志薄弱でどちらも聴きたくなり、どっちも聴くことにしました。多分、一つだけ聴くことにしたら、今日のコンサートは聴かなかったでしょう。聴いてよかった! こんなメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」は一生、聴けなかったでしょう。大好きなウィーン・フィルの柔らかで美しい響きが最高で、パーフェクトな演奏に身も心も音楽と一体になりました。これ以上の聴き方はないほどの贅沢な時間でした。最前列中央に陣取り、我が家のリスニングルームにウィーン・フィルを招いたかのような緊張とリラックスがないまぜになったような最高の音楽を聴けました。今日のウィーン・フィルもいつものようにスロースターターで尻上がりに調子を上げて、最後のプログラムのメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」に至り、ああ、これがウィーン・フィルの音だと再認識できる状態になりました。まさに忘我の境地でその素晴らしい音楽に身を委ねました。とりわけ、第3楽章の美しさといったら、この曲はこんな音楽だったのかと初めて、その本質を理解できるような素晴らしさ。実はこれまで、第3楽章だけが苦手だったんです。そして、第4楽章はその激しさではなく、精緻な音楽表現にあっけをとられました。ウィーン風の音楽表現は弱音の美しさに尽きます。フォルテの響きはピアノの響きを引きたてるためにあるのだと思い知らされました。
最近、ずっと在京オケばかり聴いて、その素晴らしさに満足していましたが、ウィーン・フィルはやはり、レベルが違うことに愕然としました。

アンコール・・・ムーティが聴衆の方に振り向きざま、一言、Verdi La Forza del Destino。いやはや、そのかっこよいこと、しびれました。そして、あの名曲です。これでは、まるでシュターツオーパーでヴェルディを聴いているようなものです。忽然と30年前の記憶が蘇ります。2回目のウィーン。1992年5月2日、シュターツオーパー。初めて、実演で《運命の力》を聴きました。冒頭、何故か、序曲なしでオペラが始まります。えっと思っていると、途中で、序曲が始まります。序曲が終わった後の大歓声。今でも忘れられません。因みにその翌日は《エレクトラ》。ヘッツェルとキュッヒルのダブルコンマスで素晴らしい演奏でした。ヘッツェルはその年の7月、ザンクト・ギルゲンのハイキング中に滑落事故で亡くなりました。そういうことが脳裏をよぎりながら、オペラさながらの『運命の力』序曲に聴き入っていました。それにしてもムーティはヴェルディが似合います。そう言えば、2000年のミラノ・スカラ座の引っ越し公演で《運命の力》を聴かせてくれたのはこのムーティでした。あれもグレギーナとリチートラが素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。うーん、オペラが聴きたくなる! それもウィーンのシュターツオーパーで!

前半、シューベルトの交響曲第4番。後で思い返すと、ウィーン・フィルの響きは本来のものではなく、少し荒れたアンサンブル。そのときは力強いと思ったんですけどね。第2楽章の冒頭の主題は4つの即興曲D935、Op.142の第2曲の主題を想起させるような懐かしい音楽で、それはそれで楽しめましたが、柔らかく優美なウィーン・フィルの響きではありませんでした。

ストラヴィンスキーのディヴェルティメント~バレエ音楽『妖精の接吻』による交響組曲~は実に手際のよい完璧な演奏。個々のメンバーの実力が発揮された素晴らしい演奏でした。ただ、これがウィーン・フィルの響きかと言うと、その特徴はそんなに感じませんでした。もっとも、それは後半のメンデルスゾーンを聴いたからで、そのときはその凄い演奏に圧倒されていたんです。ウィーン・フィルの実力はどこまでのものか、分かりません。

ムーティ&ウィーン・フィルを聴くのは3年ぶりでした。ザルツブルク音楽祭で聴いたシューマンの交響曲第2番はとても素晴らしい演奏で、そのときから、ムーティを再認識したんです。今年、80歳になったムーティはこれから巨匠の道を歩んでいきそうな勢いです。次の公演でのモーツァルトとシューベルトが楽しみです。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:リッカルド・ムーティ
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:フォルクハルト・シュトイデ

  シューベルト:交響曲第4番 ハ短調 D. 417「悲劇的」
  ストラヴィンスキー:ディヴェルティメント~バレエ音楽『妖精の接吻』による交響組曲~

   《休憩》

  メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 Op.90「イタリア」

   《アンコール》
    ヴェルディ:歌劇『運命の力』序曲


最後に予習について、まとめておきます。

シューベルトの交響曲第4番を予習したCDは以下です。

  リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1987年2月 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音

ムーティ指揮ウィーン・フィルのシューベルト交響曲全集からの一枚です。ウィーン・フィルの響きが素晴らしいです。この頃、コンマスはゲルハルト・ヘッツェルでしたね。そう言えば、ヘッツェルの不慮の死の前、ヘッツェルがコンマスとして最後に演奏したコンサートで指揮したのがムーティでした。1992年6月21日のウィーン・フィル創立150年記念~ウィーン音楽祭終幕コンサートでのベートーヴェンの交響曲第3番 「英雄」だったのかな。


ストラヴィンスキーのディヴェルティメントを予習したCDは以下です。

  ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団 1997年4月27日 ライヴ録音(ラジオ用録音)

ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団アンソロジー第6集1990-2000からの1枚です。コンセルトヘボウ管弦楽団の素晴らしいアンサンブルが聴けます。


メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」を予習したCDは以下です。

  ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1967年5月25日 セッション録音

これは素晴らしい演奏です。これでトスカニーニからの呪縛が解けそうです。もちろん、ステレオ録音ですから、音質もいいしね。何と言っても鉄壁のアンサンブルです。第4楽章のサルタレロなどは申し分のない演奏を聴かせてくれます。セルは何を聴いても素晴らしい。当時、その素晴らしさに気づいていなかった自分を恥じるばかりです。1970年の最後の来日時は当時、学生だったsaraiは聴こうと思えば聴けた筈ですが、その真価が分かっていなかったのですから、情けない。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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尻上がりに素晴らしくなりました!
あの弦の響きにもうハマるのですよ!
あと2公演ありますが、もう既に同じプログラムを2回演奏しているので、ますます良くなるか、ちょっとダレてマンネリになるか(彼らならあるあるです)どうなるでしょうか?楽しみですね。
それにしてもSaraiさんのコンサート鑑賞記録というか印象記述と言うかが、大変失礼ながら私の感想にも重なっています。
私などは、はぁー、弦がいい音だった、堪能した、音楽を楽しんだ、さすがウィーンフィル、としか書けませんけどね。

No title

えりちゃさん、コメントありがとうございます。
最終公演に行きますが、ムーティ&ウィーン・フィルは渾身の力で凄い演奏を聴かせてくれますよ。特にシューベルトは有終の美を飾ることでしょう。すべて、希望的観測ですが・・・。
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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
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これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
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07/08 18:59 sarai

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ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

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06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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