音の奔流の渦に溺れる ムーティ&ウィーン・フィルの圧巻のメンデルスゾーン《イタリア》@サントリーホール 2021.11.8
最近、ずっと在京オケばかり聴いて、その素晴らしさに満足していましたが、ウィーン・フィルはやはり、レベルが違うことに愕然としました。
アンコール・・・ムーティが聴衆の方に振り向きざま、一言、Verdi La Forza del Destino。いやはや、そのかっこよいこと、しびれました。そして、あの名曲です。これでは、まるでシュターツオーパーでヴェルディを聴いているようなものです。忽然と30年前の記憶が蘇ります。2回目のウィーン。1992年5月2日、シュターツオーパー。初めて、実演で《運命の力》を聴きました。冒頭、何故か、序曲なしでオペラが始まります。えっと思っていると、途中で、序曲が始まります。序曲が終わった後の大歓声。今でも忘れられません。因みにその翌日は《エレクトラ》。ヘッツェルとキュッヒルのダブルコンマスで素晴らしい演奏でした。ヘッツェルはその年の7月、ザンクト・ギルゲンのハイキング中に滑落事故で亡くなりました。そういうことが脳裏をよぎりながら、オペラさながらの『運命の力』序曲に聴き入っていました。それにしてもムーティはヴェルディが似合います。そう言えば、2000年のミラノ・スカラ座の引っ越し公演で《運命の力》を聴かせてくれたのはこのムーティでした。あれもグレギーナとリチートラが素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。うーん、オペラが聴きたくなる! それもウィーンのシュターツオーパーで!
前半、シューベルトの交響曲第4番。後で思い返すと、ウィーン・フィルの響きは本来のものではなく、少し荒れたアンサンブル。そのときは力強いと思ったんですけどね。第2楽章の冒頭の主題は4つの即興曲D935、Op.142の第2曲の主題を想起させるような懐かしい音楽で、それはそれで楽しめましたが、柔らかく優美なウィーン・フィルの響きではありませんでした。
ストラヴィンスキーのディヴェルティメント~バレエ音楽『妖精の接吻』による交響組曲~は実に手際のよい完璧な演奏。個々のメンバーの実力が発揮された素晴らしい演奏でした。ただ、これがウィーン・フィルの響きかと言うと、その特徴はそんなに感じませんでした。もっとも、それは後半のメンデルスゾーンを聴いたからで、そのときはその凄い演奏に圧倒されていたんです。ウィーン・フィルの実力はどこまでのものか、分かりません。
ムーティ&ウィーン・フィルを聴くのは3年ぶりでした。ザルツブルク音楽祭で聴いたシューマンの交響曲第2番はとても素晴らしい演奏で、そのときから、ムーティを再認識したんです。今年、80歳になったムーティはこれから巨匠の道を歩んでいきそうな勢いです。次の公演でのモーツァルトとシューベルトが楽しみです。
今日のプログラムは以下のとおりです。
指揮:リッカルド・ムーティ
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:フォルクハルト・シュトイデ
シューベルト:交響曲第4番 ハ短調 D. 417「悲劇的」
ストラヴィンスキー:ディヴェルティメント~バレエ音楽『妖精の接吻』による交響組曲~
《休憩》
メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 Op.90「イタリア」
《アンコール》
ヴェルディ:歌劇『運命の力』序曲
最後に予習について、まとめておきます。
シューベルトの交響曲第4番を予習したCDは以下です。
リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1987年2月 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音
ムーティ指揮ウィーン・フィルのシューベルト交響曲全集からの一枚です。ウィーン・フィルの響きが素晴らしいです。この頃、コンマスはゲルハルト・ヘッツェルでしたね。そう言えば、ヘッツェルの不慮の死の前、ヘッツェルがコンマスとして最後に演奏したコンサートで指揮したのがムーティでした。1992年6月21日のウィーン・フィル創立150年記念~ウィーン音楽祭終幕コンサートでのベートーヴェンの交響曲第3番 「英雄」だったのかな。
ストラヴィンスキーのディヴェルティメントを予習したCDは以下です。
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団 1997年4月27日 ライヴ録音(ラジオ用録音)
ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団アンソロジー第6集1990-2000からの1枚です。コンセルトヘボウ管弦楽団の素晴らしいアンサンブルが聴けます。
メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」を予習したCDは以下です。
ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1967年5月25日 セッション録音
これは素晴らしい演奏です。これでトスカニーニからの呪縛が解けそうです。もちろん、ステレオ録音ですから、音質もいいしね。何と言っても鉄壁のアンサンブルです。第4楽章のサルタレロなどは申し分のない演奏を聴かせてくれます。セルは何を聴いても素晴らしい。当時、その素晴らしさに気づいていなかった自分を恥じるばかりです。1970年の最後の来日時は当時、学生だったsaraiは聴こうと思えば聴けた筈ですが、その真価が分かっていなかったのですから、情けない。
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!
- 関連記事
-
- 煌めき立つ天才シューベルトのザ・グレイト ムーティ&ウィーン・フィル@サントリーホール 2021.11.12
- 音の奔流の渦に溺れる ムーティ&ウィーン・フィルの圧巻のメンデルスゾーン《イタリア》@サントリーホール 2021.11.8
- 鈴木優人、名曲、シューベルトの交響曲第9番を好演 ジャン・チャクムルの順調な成長にも感銘 読売日本交響楽団@サントリーホール 2021.10.29