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超感動!!中村恵理、薄幸の女の墓碑銘を絶唱 《椿姫》@新国立劇場 2022.3.16

新国立劇場でも素晴らしいオペラ公演を聴いてきましたが、今日のオペラが最高です。また、《椿姫》は《薔薇の騎士》、《フィガロの結婚》と並んで最もよく聴いてきたオペラですが、今日の公演は今まで聴いた公演でもウィーン国立歌劇場でネトレプコがヴィオレッタを歌った素晴らしい公演に並び立つような素晴らしいものでした。もちろん、《椿姫》はヴィオレッタ役の出来がすべてを決めると言っても過言でありませんが、中村恵理の凄かったこと! 潤いのある透明な響きの歌唱の見事さだけでなく、その音楽的な表現力が群を抜くものでした。第3幕は涙なしには聴けませんでした。いやはや、何とも感動的なオペラでした。もう、第1幕を聴いているときから、これはもう一度聴かないといけないと思いました。そう思わなければ、聴き終わるときに圧倒的な喪失感に襲われるという不安で聴き続けることができなかったからです。もう、どんな席のチケットでもいいから入手しましょう。ということで安心して、聴き続けることができました。

冒頭、どの女性がヴィオレッタかを視認することができません。ヴィオレッタが歌い始めても、中村恵理がヴィオレッタを歌っているという確信が持てません。彼女の声は数日前にも聴いたし、何と言ってもsaraiは彼女のファンなので、かなり聴き込んでいるにもかかわらず、どうにも、彼女の声だという確信が持てません。その姿も中村恵理だという確信も持てません。もう一度、キャスト表を確認したくなりますが、ごそごそ音をたてるわけにもいきません。何故、こういう事態に陥ったかというと、ヴィオレッタの歌唱がどうにもsaraiの知っている中村恵理の歌唱に思えないんです。いい意味で素晴らしい声です。不安定な状態で聴き続けます。乾杯の歌を聴いても、よく分かりません。第1幕終盤の長大なアリアを聴いても分かりません。しかし、何とも澄み切った響きの歌唱で素晴らしいことには間違いありません。終いにはこれが中村恵理であっても、急な代役であったとしても、素晴らしい歌唱であることには違いがないのであるから、誰が歌っているかということは些末なことに思えます。前述の、この公演をもう一度聴きたいというのはこの時点であり、もし、これが中村恵理であるならば、どうしてももう一度聴きたいし、そうでなかったら、是非、中村恵理のヴィオレッタを聴きたいという微妙な心情だったんです。それにしても、《ああ、そはかの人か~花から花へ》の歌唱は絶品です。こんなにピュアーな声の歌唱は聴いたことがありません。かのネトレプコさえも、このような澄み切った声ではありませんでした。ピュアーでありながら、コロラトゥーラ・ソプラノとしても完璧な歌唱です。ああ、そうですね。今までの中村恵理はプッチーニのリリックなソプラノの歌唱だったので、こういうコロラトゥーラ・ソプラノの歌唱は聴いたことがなくて、それでずいぶん、印象が違っているのかもしれません。
休憩なしに第2幕に入ります。冒頭の【アルフレード】役のマッテオ・デソーレのアリア。一途な好青年を思わせる素晴らしい歌唱です。アルフレードにぴったりのテノールです。カリスマ的でないのがかえって好印象です。アルフレードの父ジェルモンが登場して、ヴィオレッタと対峙すると、一気に緊張感が高まります。まるでトスカの第2幕のスカルピアとトスカの対峙するシーンのようです。いずれも男性社会の象徴のような恰幅のいい男が弱き性の女性を徹底的に痛めつけるという唾棄すべきシーンが繰り広げられます。男性の一員であるsaraiですら、正視できません。オペラというフィクションであることは分かっていても、どうにもこのシーンは苦手です。ジェルモンが押し出しのよいバリトンで歌えば歌うほど、反吐を吐きそうになってしまいます。まあ、こういう真に迫るような音楽を書いたヴェルディが素晴らしいのでしょうが・・・。嫌いな歌の象徴が《プロヴァンスの海と陸》。もっとも、皮肉なことに【ジェルモン】役のゲジム・ミシュケタの歌唱は立派過ぎるほどです。痛めつけられるヴィオレッタの可憐な歌唱はとっても素晴らしい。どうにもやりきれない第2幕第1場は深い感銘を残しつつ、終わります。
急いで、キャスト表をチェックして、ヴィオレッタが中村恵理であったことを確認して、納得と驚きを禁じ得ません。それではと、ボックスオフィスに赴いて、残る2回の公演の残席状況をチェックします。さすがに中央前方のブロックは売り切れです。前方の左右ブロックの席は若干空いているようです。うーん、即、購入というわけにはいきませんね。

30分の休憩後、第2幕第2場が始まります。中村恵理の澄み切った歌声がますます冴え渡ります。オペラはドラマティックに終焉に向かっていきます。
第3幕。とても美しい前奏曲が東響の素晴らしい弦楽セクションによって演奏されます。ヴィオレッタの哀しき運命を象徴しているんですね。第1幕の前奏曲と同様の抑えた表現で素晴らしい演奏。指揮のアンドリー・ユルケヴィチの手腕が光ります。コンサートマスターはグレブ・ニキティン。数日前にも定期演奏会で活躍していましたが、今日も見事な統率ぶりです。舞台は特異なものです。楕円に切り取られたような舞台の中央に古いピアノが置かれ、その上に死に瀕したヴィオレッタが横たわります。その背後はベールで覆われて、ヴィオレッタ以外の人物はベール越しにしか見えません。この第3幕はヴィオレッタ一人のためのものであり、彼女以外はすべて亡霊でしかありません。恋人のアルフレードさえも例外ではありません。音楽の内容を完璧に理解した演出に思えます。その演出に応えて、中村恵理は完璧なヴィオレッタを歌い切ります。人生で道を一度外した女(ヴィオレッタが高級娼婦であったこと)は決してこの世では救われないことを驚異的な音楽表現で歌います。その究極のリリックな歌唱に感動し、涙が滲みます。中村恵理、入魂のヴィオレッタに魅了されました。大変な日本人ソプラノが現れたものです。彼女が代役に決まったときに嬉しかったのですが、その期待以上の歌唱と演技でした。

帰宅後、配偶者を誘って、再度、この公演に足を運ぶことを決めて、そこそこの席のチケットを購入。もう一度、このオペラの公演のレポートを記事にします。ご期待ください。もっともこれ以上、書くことはないかな。


今日のキャストは以下です。

  ジュゼッペ・ヴェルディ 椿姫

【指 揮】アンドリー・ユルケヴィチ
  【演出・衣裳】ヴァンサン・ブサール
  【美 術】ヴァンサン・ルメール
  【照 明】グイド・レヴィ
  【ムーブメント・ディレクター】ヘルゲ・レトーニャ
  【再演演出】澤田康子
  【舞台監督】斉藤美穂


【ヴィオレッタ】中村恵理
  【アルフレード】マッテオ・デソーレ
  【ジェルモン】ゲジム・ミシュケタ
  【フローラ】加賀ひとみ
  【ガストン子爵】金山京介
  【ドゥフォール男爵】成田博之
  【ドビニー侯爵】与那城 敬
  【医師グランヴィル】久保田真澄
  【アンニーナ】森山京子
  【ジュゼッペ】中川誠宏
  【使者】千葉裕一
  【フローラの召使い】上野裕之
  【合唱指揮】三澤洋史
  【合 唱】新国立劇場合唱団
  【管弦楽】東京交響楽団

最後に予習についてですが、さすがに聴きませんでした。聴くとしたら、ザルツブルク音楽祭の衝撃だったネトレプコの公演でしょうが、これは何度も繰り返し視聴しました。



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ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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たかぼんさん、初めまして。saraiです。

嬉しいコメント、ありがとうございます。ブッシュ四重奏団は素晴らしいですよ。とりわけ、第14番は最高です。
もっとも、ブッシュ

09/17 02:04 sarai

とても素晴らしいお話をお聞かせ頂き感謝いたします。
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ブッシュ四重奏団は別なレコード(死

09/16 13:52 たかぼん

ミケランジェロさん、saraiです。

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06/23 23:50 sarai

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06/14 08:27 michelangelo

えりちゃさん、コメントありがとうございます。
最終公演に行きますが、ムーティ&ウィーン・フィルは渾身の力で凄い演奏を聴かせてくれますよ。特にシューベルトは有終の

11/09 22:13 sarai

尻上がりに素晴らしくなりました!
あの弦の響きにもうハマるのですよ!
あと2公演ありますが、もう既に同じプログラムを2回演奏しているので、ますます良くなるか、ち

11/09 10:56 えりちゃ

えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai
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