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上原彩子はリストのロ短調ソナタでも魂の燃焼、デビュー20年の軌跡を実感@日経ホール 2022.5.11

天才、上原彩子のデビュー20周年記念のピアノリサイタル、2月のデビュー20周年記念のコンチェルト編に続くものです。あのラフマニノフとチャイコフスキーのコンチェルトは凄かった!! 今日の独奏はお得意のロシアものはムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」1曲に絞り、シューマンとリストというピアノの王道をいく作品を選んで勝負しました。その比類ない演奏を聴いて、彼女はこの20年間で如何にその才能に磨きをかけてきたか、しっかりと実感できました。彼女はこの間、もがき苦しみ、成長と挫折の過程を乗り越えてきたように思えます。saraiが15年間、聴き続けてきた率直な感想です。今日のシューマンとリスト、そして、アンコールで弾いたモーツァルトで彼女は鉄壁のピアニストに飛躍したことを確信しました。

さて、まずはシューマンです。最近聴いたクライスレリアーナが素晴らしかったので、期待して聴きます。幻想小曲集 Op.12はシューマンの他の作品に比べて、それほどコンサートでとりあげられない曲目ですが、あえて、記念リサイタルでこの曲を弾くのですから、相当の思いがあるのでしょう。第1曲の《夕べに》はそっと、そっと、思いを沈潜させて弾いていきます。夢見るシューマン・・・心惹かれる演奏です。その後の曲もシューマンらしく、曲想を大きく変えながら、見事に弾いていきます。シューマンの根幹にあるロマンをしっかりと表現して、無類の演奏です。シューマン好きのsaraiも納得の演奏。クライスレリアーナも素晴らしい演奏でしたが、さらにシューマンを磨き上げた演奏です。

次は大曲、リストのピアノ・ソナタ ロ短調。うーん、何とも素晴らしい演奏でした。これが聴衆の前で初めて弾いたとは信じられません(正確には広島で弾いたようですが・・・)。完璧なテクニックはもちろんですが、上原彩子らしい魂の燃焼を重ねた演奏には絶句するしかありません。重量感のある低音、輝きに満ちた高音。ピアノの響きの魅力をたっぷりと聴かせてくれた上に熱い音楽的高揚とくれば、これ以上のものはありません。凄まじいリストでした。

後半はお手の物のムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」。当たり前のように素晴らしい演奏。終曲の《キーウの大門》(キエフの大門ではありませんよ)の凄さには脱帽です。

アンコールのチャイコフスキーは心に沁み入る演奏。やはり、ロシアものは最高です。そして、鳴りやまぬ拍手に応えて、最後はモーツァルトのソナタ。素晴らしい演奏です。昔はあんなにモーツァルトが弾けなかったのに、今やモーツァルト弾きのような自在な演奏です。記念コンサートで一番得意のラフマニノフを封印したとは驚きでした。次は封印を解いて、ラフマニノフを聴かせてくださいね。


今日のプログラムは以下です。


 上原彩子デビュー20周年記念ピアノ・リサイタル

  ピアノ:上原彩子

  シューマン:幻想小曲集 Op.12
   1 夕べに、2 飛翔、3 なぜ、4 気まぐれ、5 夜に、6 寓話、7 夢のもつれ、8 歌の終わり

  リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S. 178 / R. 21

   《休憩》

  ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」

   《アンコール》
     チャイコフスキー:ロマンス へ短調 Op.5
     モーツァルト:ピアノソナタ ハ長調 K.330 から 第1楽章


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューマンの幻想小曲集を予習したCDは以下です。

 伊藤恵 シューマニアーナ1 1987年11月10-12日、鹿嶋勤労文化会館 セッション録音

伊藤恵のシューマン作品を網羅したシューマニアーナシリーズはほぼ20年かけて、全13枚のCDで完結しました。その冒頭を飾る記念碑的CDで、実に完成度の高い演奏を聴かせてくれます。


2曲目のリストのピアノ・ソナタ ロ短調を予習したCDは以下です。

 イリーナ・メジューエワ リスト作品集 2011年4月、6月、9月 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

メジューエワは唖然とするほど、繊細かつスケールの大きな演奏を聴かせてくれます。その響きの美しさは録音の素晴らしさも相俟って、凄い!


3曲目のムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」を予習したCDは以下です。

 イリーナ・メジューエワ りゅーとぴあライヴ2016 2016年12月3日、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館コンサートホール ライヴ録音

メジューエワらしいスケールの大きな力強さは並外れた演奏を聴かせてくれます。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       上原彩子,

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