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驚愕のモーツァルト、慟哭のショスタコーヴィチ、エベーヌ弦楽四重奏団の感動の演奏@紀尾井ホール 2022.6.17

今日から、フランスのカルテット、エベーヌ弦楽四重奏団の演奏を聴いています。実演で聴くのは初めてでしたが、もし、昨日の演奏だけを聴いていたら、彼らの実力を過小評価してしまうところでした。今日のモーツァルトは驚異的に精緻なアンサンブルで始まり、驚愕の高揚で締め括られました。さらに続くショスタコーヴィチの慟哭に満ちた演奏の緊張感の高さには音楽とは何なのかと考え込まされました。まさに世界最高レベルの演奏を目の当たりにした思いです。

まず、モーツァルトの弦楽四重奏曲第14番です。この曲は昨日聴いたハイドンの太陽四重奏曲(6曲セット)に続くロシア四重奏曲(6曲セット)に触発されたモーツァルトが全身全霊を傾けて作曲したハイドンセット6曲の冒頭を飾る作品です。天才モーツァルトが本気を出すとこんな凄いものが出来上がるのかと驚嘆するような作品です。とそう書きながら、実は今日のエベーヌ弦楽四重奏団の演奏を聴いて、本当にこの曲の凄さを実感したんです。ハイドンのロシア四重奏曲は1782年に出版されましたが、この曲はその1782年末に完成されました。ハイドンはロシア四重奏曲で古典派の弦楽四重奏曲の様式を完成させましたが、まさに天才モーツァルトを震撼させるほどの出来栄えでした。で、モーツァルトがすぐさま6曲から成るハイドンセットに取り掛かります。結局、天才の筆をもってしても全6曲完成までには3年を要し、1785年までかかりました。そして、その6曲をハイドンに献呈し、ハイドンセットなる名称が残りました。長い説明になりましたが、モーツァルトがいかに心血を注いだかを表現するためです。
第1楽章は半音階を用いた主題に基づいていますが、エベーヌ弦楽四重奏団の4人が各声部を実に精妙に演奏することでありえないようなアンサンブルが構築されていきます。モーツァルトがこんなに高い緊張感で演奏されるとは驚きです。その繊細な響きに深く引き込まれていきます。第2楽章はメヌエットですが、これも軽い音楽ではなく、エベーヌ弦楽四重奏団の精緻で繊細な演奏に魅了されるのみです。第3楽章のアンダンテも高い緊張感で聴き入ります。第1ヴァイオリンの得も言われぬ美しい小楽節に耳を奪われます。第4楽章に入る前、客席で動きがあり、しばし、楽章前に長い休みが入ります。これも意味のある休止となり、第4楽章はとてつもない音楽が展開されます。フーガが次々に展開されて、圧倒的です。交響曲第41番《ジュピター》の第4楽章の原型になったとも言われる楽章ですが、エベーヌ弦楽四重奏団の圧倒的とも言える演奏はあの素晴らしいジュピターの第4楽章以上の緊迫した音楽を作り上げます。ある意味、意外性のある楽章であり、まさにハイドンの精神を継承したとも言えます。まさにハイドンセットの真髄を教えられるような素晴らしい演奏でした。saraiはハイドン老と一緒にこの曲を聴き、聴き終えた後、二人でうなづき合うことを想像してしまいました。そこへモーツァルトがやってきて、僕の音楽はどうだいと得意げに語りかけます。うーん、凄い音楽です。一人で悦に入っているsaraiのもとに知り合いの識者がやってきて、あの第4楽章はやり過ぎだとsaraiをたしなめます。saraiがこういう記事を書くことを恐れたのかもしれません。作曲当時はピリオド楽器の演奏だったので、こういう演奏はあり得ないということです。それにこういう演奏を聴いた若い人が真似をするといけないということです。それはそうかもしれません。ただ、saraiは一介の素人。現代のこういう攻めたモーツァルトが好きです。

モーツァルトの演奏に驚愕していると、次のショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番でそれ以上の体験をします。この曲は第2次世界大戦の犠牲者に捧げられた曲です。終始、真摯に激しい慟哭も交えて、エベーヌ弦楽四重奏団の渾身の演奏が続きます。ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲には珍しく、皮肉めいたジョークや新古典主義的な軽みもなく、切羽詰まったような音楽が続きます。当時、作曲家自身が精神的に追い詰められていたこともこの曲に反映されて、泣きながら作曲したという話も残っています。これほどの緊張感の演奏も記憶にありません。saraiもこの演奏に切羽詰まってしまいました。5楽章が休みなく続く構成になっており、変形ながら、アーチ構造的でもあります。バルトークを思い出しますが、バルトークのような前衛手法は用いていません。しかし、精神的にはバルトークと同様の極限状況を感じされられます。この曲はバルトークと一緒に聴きたいところです。ショスタコーヴィチの交響曲第7番《レニングラード》を酷評したバルトークの死後にこの弦楽四重奏曲は書かれました。ショスタコーヴィチも心のどこかで自分を酷評したバルトークのことを意識していて、バルトークの5楽章構成のアーチ構造を用いたのかもしれません。バルトークはこの《レニングラード》のアンチテーゼのような作品を聴いて、きっと納得して、saraiに目くばせするでしょう。この演奏を聴いて、saraiはエベーヌ弦楽四重奏団が世界最高のカルテットのひとつであることを納得しました。

前半の演奏が凄かったので、後半のジャズプログラムはアンコールのようなものです。最後のピアソラは素晴らしい演奏でした。これはジャズというより、クラシックかもね。ジャズに疎いsaraiはマイルス・デイヴィスのマイルストーン以外は聴いたことのない曲ばかりでした。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:エベーヌ弦楽四重奏団 Quatuor Ébène
   ピエール・コロンベ(第1ヴァイオリン)Pierre Colombet, violin
   ガブリエル・ル・マガデュール(第2ヴァイオリン)Gabriel Le Magadure, violin
   マリー・シレム(ヴィオラ)Marie Chilemme, viola
   ラファエル・メルラン(チェロ)Raphaël Merlin, cello

   モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番ト長調 K.387
   ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番ハ短調 Op.110

   《休憩》

   ジャズ選曲集
    1.トゥーツ・シールマンス:ブルーゼットToots Thielemans:Bluesette
    2.チャールズ・ミンガス:フォーバス知事の寓話Charles Mingus : Fables of Faubus
    3.マイルス・デイヴィス:マイルストーンMiles Davis : Milestones
    4.ケニー・カークランド:ディエンダKenny Kirkland:Dienda
    5.ピー・ウィー・エリス:ザ・チキンPee Wee Ellis:The Chicken
    6.セロニアス・モンク:ラウンド・ミッドナイトThelonious Monk : 'Round Midnight
    7.ウェイン・ショーター:アナ・マリアWayne Shorter : Ana Maria
    8.アストル・ピアソラ:リベルタンゴAstor Piazzolla : Libertango
   
   《アンコール》
    エデン・アーベ:ネイチャー・ボーイEden Ahbez : Nature Boy


最後に予習について触れておきます。

1曲目のモーツァルトの弦楽四重奏曲第14番は以下のCDを聴きました。

 アマデウス四重奏団 1963年6月 ハノーファー、ベートーヴェンザール セッション録音

アマデウス四重奏団のモーツァルト、聴くべき価値のある演奏です。


2曲目のショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番は以下のCDを聴きました。

 エマーソン四重奏団 1998年7月 アスペン音楽祭 ライヴ録音
 
エマーソン四重奏団のショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲全集を順次聴いているところです。この第8番もクリアーで鋭いというこのカルテットの美点が光る演奏です。来年に迫る解散が残念です。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ミケランジェロさん、saraiです。

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最終公演に行きますが、ムーティ&ウィーン・フィルは渾身の力で凄い演奏を聴かせてくれますよ。特にシューベルトは有終の

11/09 22:13 sarai

尻上がりに素晴らしくなりました!
あの弦の響きにもうハマるのですよ!
あと2公演ありますが、もう既に同じプログラムを2回演奏しているので、ますます良くなるか、ち

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気になってたずねても 
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写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

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