チェコ音楽の魂:フルシャ+東京都響@サントリーホール 2010.12.14
また、実質、saraiの今年最後のコンサートでもあります。無論、大晦日のジルヴェスターコンサートはありますが・・・
指揮者は新たに都響のプリンシパル・ゲスト・コンダクターに就任した29歳の俊英ヤクブ・フルシャ、チェコ人の指揮者です。
今夜のプログラムはこのチェコ人指揮者にふさわしくチェコ音楽三昧です。
ドヴォルザーク:序曲《フス教徒》Op.67
スメタナ:交響詩《ブラニーク》
マルティヌー:リディツェへの追悼
《休憩》
ヤナーチェク:グラゴル・ミサ
グラゴル・ミサの演奏は以下のとおり、声楽ソロは本場のチェコ、スロヴァキアから歌手です。
ソプラノ:アドリアナ・コフートコヴァー
アルト:ヤナ・シーコロヴァー
テノール:リハルト・サメク
バス:マルティン・グーバル
オルガン:小林英之
合唱:晋友会合唱団
合唱指揮:清水敬一
まず、指揮者登場。ちょっと見ると、シューベルトみたい。感じのよさそうな青年です。
盛大な拍手を受け、まずドヴォルザークです。
いやあ、なかなか熱い曲、熱い演奏です。チェコを愛する思いが込められています。分かっていながら、こちらもうるっときます。音楽を超えて、人の思いが伝わってくる演奏です。熱いだけではなく、きっちりと美しい演奏です。余程、リハーサルをみっちりとやったのでしょう。初めて聴くとはとても思えないほど、saraiものめりこんでしまう演奏でした。フィナーレでは熱い感動がありました。
次はスメタナの有名な《わが祖国》からの終曲です。先程のドヴォルザークと共通のフス教徒の賛美歌が主題になっています。これも思いの熱い演奏です。静かな部分も多いのですが、それだけに盛り上がりもすさまじい。冷静さと熱さの同居する素晴らしい演奏です。これもフィナーレでは思わず熱い感動を覚えます。
続いてマルティヌーです。この曲はナチスに大虐殺されたチェコのリディツェの村への追悼の曲です。基本的には激しい思いを静かな抒情に満ちた音楽に押し込めたという感じの曲で聴く側もそれなりの思いで向かい合わないといけない気持ちになります。ピカソのゲルニカ同様、やり場のない戦争への怒り・悲しみで頭がいっぱいになります。名曲です。そして、よい演奏です。静かな感動を覚えます。無調的な響きがなんともこの主題にあっています。
これで前半が終了ですが、今年一番の都響の演奏ではなかったでしょうか。選曲もよいし、演奏の質が最高です。チェコのオーケストラと比べてみないと分かりませんが、チェコ音楽の本質に迫ったと思われます。
そして、この演奏をなし遂げた若手の指揮者フルシャの並々ならぬ音楽性には驚きを禁じ得ません。今後、注目していかなければいけない音楽家がまた一人増えました。
休憩後はヤナーチェクのミサ曲です。ヤナーチェクの音楽はなかなかとっつきにくい印象があります。これは例え、管弦楽のみの曲でも、曲にチェコ語のイントネーションがはいっているからという話があります。素直な美しいメロディー(自分で予想する)からは離れやすいからです。逆にそこに何か新しい独自なものも見いだせるということもあるわけですが・・・
ともあれ、今日のミサ曲は声楽曲でテキストもグラゴル文字(古代教会スラヴ語)によっているので、まさにヤナーチェクの独特の語法による音楽です。
実際にそうなのですが、こちらがそう身構えているせいか、意外にスタンダードな曲にも聴こえて、普通に聴けます。
流石にソロ歌手たちは見事な歌唱です。オーケストラもフルシャの統率のもと、繊細な響きを聴かせます。まさにヤナーチェクの世界です。ひとつ注文をつけると合唱の響きがもうひとつ。合唱も本場の合唱団ならパーフェクトだったでしょう。
ところで次のヨーロッパ旅行ではパリでヤナーチェクのオペラを見ます。今後、ヤナーチェクの音楽に触れる機会も増えそうで、その先駆けでよい曲・よい演奏が思わぬところで聴けて感謝です。
前述したように、今年の都響の演奏会では、インバルやクレーもよかったものの今夜が最高のコンサートでした。新星フルシャに大注目しましょう!!
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!

- 関連記事
-
- 今年の音楽総決算:ピアノ・室内楽編
- チェコ音楽の魂:フルシャ+東京都響@サントリーホール 2010.12.14
- 爽快!小川典子ピアノ・リサイタル@トッパンホール 2010.12.9