フェスタサマーミューザKAWASAKI2022 閉幕! 原田慶太楼&東京交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2022.8.11
今年のフィナーレコンサートのテーマはシェークスピアと映画音楽だそうです。前半はハリウッドの映画音楽に大きな功績を残したコルンゴルトの作品二つ。組曲「から騒ぎ」はコルンゴルトの若い頃、まだ、アメリカに渡るずっと前の作品です。室内オーケストラとハーモニウム(フリーリードを用いて足で空気を送って発音するタイプのオルガン)という珍しい楽器で演奏される軽い作品です。
続くコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲は後期ロマン派の濃厚な作品です。第1楽章はヴァイオリンの響きに濃密さがあまり感じられなくて、ちょっと残念。第2楽章は岡本誠司のヴァイオリンがしみじみとした抒情を湛えた見事な演奏で魅了させられます。第3楽章はヴァイオリンもオーケストラも素晴らしい響きで音楽を堪能します。岡本誠司はこの曲を弾くのが初めてだそうで、今後、弾きこなしてくれるのを期待しましょう。
後半は武満徹とプロコフィエフ。いずれも素晴らしい演奏でした。
まず、武満徹は3つの映画音楽。東響の弦楽奏者たちだけが登場して、素晴らしい響きの演奏を聴かせてくれました。3曲ともその素晴らしいサウンドに魅了されました。美しい音楽でありながら、底流に哀しみを湛えた武満の渾身の映画音楽です。こういう武満の音楽もあるのね。原田慶太楼の指揮も最高でした。
最後はプロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲から7曲の抜粋です。うーん、抜粋した曲の構成もよく考え抜かれた見事なものです。原田慶太楼のセンスの卓抜さが光ります。演奏は先ほどの弦楽オーケストラに管楽器、打楽器が加わって、東響の素晴らしいアンサンブルが耳を楽しませてくれます。曲よし、演奏よし。2曲目の少女ジュリエットの愛らしさに惹き付けられていると、3曲目のモンタギュー家とキャピュレット家の有名なメロディーが炸裂します。素晴らしい演奏に圧倒されます。最後はジュリエットの死でしっとりと曲を閉じます。原田慶太楼と東響は最高の仕事をしてくれました。フェスタサマーミューザKAWASAKI2022の閉幕にふさわしい演奏でした。ただ、最後は盛り上げたかったのか、アンコールの「朝の踊り」をサービスしてくれました。お気持ちは分かりますが、saraiとしては別にアンコールはいらなかったかな。どうせなら、もう一度、モンタギュー家とキャピュレット家の堂々とした演奏を聴かせてもらったほうがよかったかも・・・。
これで今年のフェスタサマーミューザKAWASAKI2022はお終い。saraiはノット&東響とアラン・ギルバート&都響とこのコンサートの3つを聴きました。もう、来年の企画が始動するのでしょう。楽しみです。
今日のプログラムは以下です。
指揮:原田慶太楼
ヴァイオリン:岡本誠司
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷 晃
コルンゴルト:組曲「から騒ぎ」Op.11から
序曲
花嫁の部屋の乙女
ドグベリーとヴァージェス
間奏曲:庭の情景
仮面舞踏会(ホーンパイプ)
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.35
《アンコール》クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース
《休憩》
武満徹:3つの映画音楽
第1曲映画「ホゼー・トレス」から「訓練と休息の音楽」
第2曲映画「黒い雨」から「葬送の音楽」
第3曲映画「他人の顔」から「ワルツ」
プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲から
情景
少女ジュリエット
モンタギュー家とキャピュレット家
仮面
ロメオとジュリエット
タイボルトの死
ジュリエットの死
《アンコール》
プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」組曲から「朝の踊り」(第3組曲)
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のコルンゴルトの組曲「から騒ぎ」を予習したCDは以下です。
マルク・アルブレヒト指揮ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団 2010年3月、ストラスブール、パレ・ド・ラ・ミュジック セッション録音
ギル・シャハム、アンドレ・プレヴィン 1993年12月 ニューヨーク、アメリカ文芸アカデミー セッション録音
序曲のみ、アルブレヒト指揮ストラスブール・フィルで聴きました。残りはシャハムのヴァイオリン独奏、プレヴィンのピアノ伴奏で聴きました。シャハムのヴァイオリンの美しいこと!
2曲目のコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲を予習したCDは以下です。
アンネ=ゾフィー・ムター、アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団 2003年10月 ロンドン セッション録音
ムターの実に妖艶とも言える演奏です。これにはまったら、ほかは聴けません。
3曲目の武満徹の3つの映画音楽を予習したCDは以下です。
ジョン・クーリッジ・アダムズ指揮ロンドン・シンフォニエッタ 1997年 セッション録音
美しい演奏です。武満徹・自撰 映画音楽集というアルバムに含まれています。
4曲目のプロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲を予習したCDは以下です。
クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1996年4月、ベルリン、フィルハーモニー セッション録音
これは文句なしに素晴らしい演奏。アバドの手で全曲と3つの組曲から20曲を抜粋した、いわば、アバド版組曲。sarai的には、これが決定盤と言っていいでしょう。
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