小菅 優の素晴らしいテクニックで弾き分けたモーツァルトとメンデルスゾーンの初期のピアノ協奏曲 with 東京交響楽団:モーツァルト・マチネ 第50回@ミューザ川崎シンフォニーホール 2022.9.3
まずはモーツァルトがウィーンに定住した翌年に職業音楽家として、自身の予約演奏会のために作曲したピアノ協奏曲 第13番。モーツァルト、26歳から27歳にかけて、コンスタンツェと結婚した頃の作品です。この作品ではメロディーの美しさが光ります。東響は弦楽のみの演奏でそれは素晴らしい響きです。小菅 優は抑えた響きです。多分、ペダルを使っていないのでしょう。最初は正直、物足りない感じですが、音量は小さいものの次第に響きがよくなっていきます。小菅 優のテクニックはさすがで、特にトリルや音階のタッチが素晴らしいです。第1楽章の中盤から第2楽章にかけての演奏は聴き惚れました。モーツァルトの旋律が極めて美しいので、素直に演奏すれば、弾き映えしますが、小菅 優の表現力も見事です。第3楽章は勢いよく、そして、実に心地よく、音楽が進行していきますが、ここでsaraiの集中力はぷっつりと切れて、薄明の世界にはいります。すなわち、意識が消え去ります。気が付くと、美しいフィナーレ。やはり、朝のコンサートはsaraiには向きませんね。
続いて、休憩なしに次のメンデルスゾーンのピアノと弦楽のための協奏曲。13歳の天才少年がまるでモーツァルトの生まれ変わりのようになって書いた作品です。しかし、時代は既にロマン派になっており、先ほどのモーツァルトの作品と同じ編成の音楽とは言え、和声の厚みが異なります。東響の弦楽の響きもさらに美しくなり、小菅 優のピアノの響きも音量を増しています。ペダルを使っているのでしょう。第1楽章はとても美しい主題が弦楽でもピアノでも繰り返されて、素晴らしい音楽です。メンデルスゾーンは本当に早熟の天才だったのですね。緩徐楽章の第2楽章も美しい音楽が展開されます。しかし、またしても、第3楽章に入ると、saraiの集中力が切れて、意識が遠のきます。フィナーレが美しく響く頃にようやく音楽に復帰。小菅 優のテクニックが冴え渡った見事な演奏でした。
今日は半世紀ほど離れた時代の二人の天才作曲家の同じような構成の音楽を聴きましたが、小菅 優は時代の様式感を表出したピアノ演奏法で弾き分けていたことが印象的でした。いずれも彼女の素晴らしいテクニックに支えられた見事な音楽になっていました。
今日のプログラムは以下です。
ピアノ(弾き振り):小菅 優
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第13番 ハ長調 K.415(弦楽版)
メンデルスゾーン:ピアノと弦楽のための協奏曲 イ短調 MWV O2
《アンコール》なし
休憩なし
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のモーツァルト:ピアノ協奏曲 第13番を予習したCDは以下です。
クララ・ハスキル、ルドルフ・バウムガルトナー指揮ルツェルン祝祭管弦楽団 1960年5月5日-6日、ルツェルン ライヴ録音
クララ・ハスキル最晩年のステレオ録音。美しい音質で聴ける貴重な記録で、この曲では最高の素晴らしい演奏です。特に第2楽章が繊細な表現で見事な演奏です。
2曲目のメンデルスゾーンのピアノと弦楽のための協奏曲を予習したCDは以下です。
シプリアン・カツァリス、ヤーノシュ・ローラ指揮アムステルダム・フランツ・リスト室内管弦楽団 1984年2月 ウィーン、カジノ・ツェゲルニッツ セッション録音
カツァリスのピアノが美しい演奏です。
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