FC2ブログ
 
  

ユリアンナ・アヴデーエワ・ピアノ・リサイタル@東京オペラシティ 2011.11.5

今日はダブルヘッダーでコンサートを聴きます。
一つ目はユリアーナ・アヴデーエワのピアノ・リサイタルです。初台のオペラシティに急ぎます。ダブルということで久しぶりにsaraiの単独行動。配偶者に帰国早々ダブルは悪いので一人で聴きます。

このアヴデーエワのリサイタルに無理して行くのは、理由があります。昨年、彼女がショパンコンクール優勝直後の来日コンサートでのショパンの協奏曲を聴いて、たちまちその演奏に魅了されました。そのコンサートはテレビで聴いたのですが生で聴かなかったのを後悔させられるような素晴らしい演奏でした。そのとき、今度は必ず生で聴こうと心に誓いました。そして、今日ようやくその日が来ました。ですから、夜のコンサートの前に無理してこのリサイタルを入れたんです。
何と今日もNHKのTVカメラがはいっていたので、後日、このリサイタルの模様は放送されるようです。少なくとも今回はテレビ放送を聴いて、後悔することはありません。

今日のプログラムは以下です。前半はショパン、ラヴェル、プロコフィエフといった近世のピアノの系譜をたどるようなもの。後半はリストですが、その裏にはワーグナーが控えているという凝ったプログラム構成になっています。

ショパン:舟歌嬰ヘ長調op.60
ラヴェル:ソナチネ
プロコフィエフ:ピアノソナタ第2番ニ短調op.14

《休憩》

リスト: 悲しみのゴンドラ II/灰色の雲/調性のないバガテル/ハンガリー狂詩曲第17番ニ短調
ワーグナー/リスト編:歌劇「タンホイザー」序曲

  《アンコール》

 チャイコフスキー:瞑想曲op.72-5
 ショパン:マズルカニ長調op.33-2
 ショパン:ノクターンホ長調op.62-2

まずはショパン。彼女が椅子に腰かけるや否や、即演奏開始。さすがに上手い。響きが多彩で音の数が多く感じます。タッチは必ずしもsaraiの好みのクリアーなものではないのですが、音楽の質が高く、特にゆったりしたメロディアスなパートでの節回しのうまさには魅了されるのみです。これはショパンの協奏曲の第2楽章でも感じたことです。並大抵のピアニストではとてもこうは弾けません。舟歌も名曲ですが、バラードやスケルツォだったら、もっと痺れていたに違いません。きっと本人もそのことを承知の上での選曲だったような気がします。だって、1曲目で満足しきってしまうなんて、リサイタル全体が成立しなくなります。そう感じさせるほどメロディーの歌わせ方が尋常ではありません。本来、この舟歌の終わったところで怒涛の拍手喝采になるべきところですが、聴衆の反応は意外に冷静です。どうなっているんだろう。

次はラヴェル。ますます、響きが多彩になり、色彩感のある音です。ラヴェルは弾き方によっては退屈な演奏になりますが、シンプルそうなソナティネも彼女の手にかかれば、千変万化の響きで複雑な曲になります。ただ、例えば、「夜のガスパール」だったらもっと凄いんじゃないかなとも思わせられます。これも滅多に聴けない素晴らしい演奏ですが、聴衆の反応はこれも冷静。不思議です。

前半最後はプロコフィエフ。ショパン、ラヴェルときてのプロコフィエフのせいか、ソナタも初期のもの。プロコフィエフと言えば、saraiは切れ味鋭いタッチでガンガン行くのが好みですが、彼女はやはり多彩な響きで煌めくような演奏です。これはこれで素晴らしい。第3楽章の迫力はそれはそれは響きまくって凄いし、リズムにもよく乗っています。これも惜しむらくは戦争ソナタでなかったこと。どんなに凄いか想像してしまいます。また、演奏直後、1男性の蛮声が飛んだことも残念です。せめてブラボーの一声は出せなかったのか。あるいは拍手だけで済まなかったのか。若干、興醒めでした。

このように前半のプログラムは巧みに彼女が描き切ったシナリオに思えます。彼女の音楽のカタログを聴かせる。十分に彼女の多彩な才能・音楽性を認知させる。そのうえで、もっと彼女に酔いしれる将来のリサイタルに期待させる。saraiはそのたくらみに乗りました。次のリサイタルも聴かせてもらいます。もっと凄い演奏が聴けるでしょう。

と、ここまで書いたところで本日2回目のコンサートを聴きました。ペライアのピアノ・リサイタルです。とても素晴らしくて、この後が書きにくくなりました。ペライアは別記事で書きますから、本稿ではアヴデーエワのリサイタルを続けましょう。

後半はリストのプログラム。まずはリスト後期の3曲です。幻想的というか、神秘主義的というか、内に重いものを秘めた曲です。リストの友人というか、娘婿というか、リヒャルト・ワーグナーが亡くなった前後に書かれた曲です。そのワーグナーの死がこれらの曲の気分に重なっているのでしょうか。偶然ですが、1週間前にウィーンで最後に聴いた、とても感動的だったプレートル+ウィーン・フィル演奏のブルックナーの交響曲第7番もちょうど第2楽章を作曲中にワーグナーの死の知らせが届き、ブルックナーは師匠・恩人ワーグナーの死を知り、号泣したと言われています。この1週間はワーグナーの死にまつわる音楽を聴くことになりました。
アヴデーエワの演奏はこれらのあまり演奏機会の少ない曲をとても深い響きでしみじみと聴かせてくれました。これで彼女のリストがどうだというのは難しいですが、魅了された演奏であったことは間違いありません。
そして、最後はこの1週間の閉じられなかった環、すなわち、ワーグナーを堪能させてくれました。リストのピアノ編曲とは言え、正真正銘ワーグナーの名曲《タンポイザー序曲》です。実に楽しめる演奏でした。豪快で色彩感のある演奏で、オーケストラ曲をピアノで弾くならこうでしょうって感じの演奏です。《展覧会の絵》みたいなものですね。もっとも、あれは逆でピアノ曲をオーケストラ曲に書き直したわけですが。

アンコールの1曲目はチャイコフスキー。美しい演奏でした。
後の2曲はショパンです。やはり、抜群に上手い。ショパンでリサイタルを始め、ショパンで終わる。このリサイタルも環が閉じられたわけです。

ショパンに内包されたラヴェル、プロコフィエフ、リストを聴き、このピアニストは既にショパンコンクールの優勝者という呪縛を乗り越え、これからの飛躍を開始しています。また、聴くべきピアニストが一人増えたようです。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       アヴデーエワ,

コメントの投稿

非公開コメント

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR