素晴らしいカンタータ、ただ、聴き惚れるだけ:鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2022.9.25
カンタータに先だって、鈴木優人のオルガン独奏。これが素晴らしい。旋律線がきっちり浮き上がって、実に明確な音楽を形成しています。コラールの静謐さもフーガのゆったりした動きも見事な演奏でした。
前半は比較的短い第47番《誰であれ高ぶるものは低くせられ》。冒頭合唱では、まず、弦楽、オーボエ、通奏低音の器楽演奏がきっちりとはまり、素晴らしい響きを奏でます。そして、BCJの合唱の素晴らしいこと、この上なし。続く第2曲は若松夏美の安定したヴァイオリンソロの響きに魅了され、ソプラノの松井亜希が驚くほど闊達な歌唱を聴かせてくれます。松井亜希のこのところ、絶好調とも言っていい歌唱が続いています。第3曲のバスのレシタティーボに続き、第4曲は若松夏美のヴァイオリン、三宮正満のオーボエ、そして、通奏低音が見事に合奏し、バスがアリアを歌います。最後はコラールできっちりとしめます。やはり、BCJのコラールは最高に美しい! カンタータを聴く喜びはこの最後のコラールを聴くことに尽きます。胸にほのぼのとした慰めを感じます。
後半は2曲のカンタータ。まず、カンタータ第8番《愛する御神よ、いつ我は死なん》です。若松夏美と高田あずみのヴァイオリン・コンチェルタート、鶴田洋子のフラウト・トラヴェルソ、それに2本のオーボエ・ダモーレがピツィカートを奏でる弦楽、チェロと素晴らしい合奏を聴かせてくれる中、冒頭のコラール合唱が響きわたります。何とも妙なる響きです。第2曲は若松夏美のヴァイオリン・コンチェルタートの素晴らしい響きに乗って、テノールの吉田志門が哀調のあるアリアを歌います。第3曲のアルトのレシタティーボに続き、第4曲は鶴田洋子のフラウト・トラヴェルソの素晴らしい響きに乗って、バスのアリア。今日の鶴田洋子のフラウト・トラヴェルソは見事です。どうして、菅きよみが吹かないのかと実は危惧していましたが、優るとも劣らずという演奏に満足しました。第4曲は再び、ソプラノの松井亜希の見事な歌唱によるレシタティーボ。最後は壮麗なコラール合唱でしめ。
次はカンタータ第130番《主なる神よ、我ら皆あなたを讃えます》です。大天使ミカエルの祝日(9月29日)のためのカンタータです。そのため、トランペット3本、ティンパニ、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ3本を含む華やかな楽器編成です。今日のメインにふさわしいですね。冒頭合唱はトランペットが活躍し、華やかに始まります。第2曲のアルトのレシタティーボに続き、第3曲はトランペット3本とティンパニを伴って、バスがアリアを歌い、大天使ミカエルが戦う様を軍楽的に奏でます。第4曲のテノールとソプラノのレシタティーボに続き、第5曲は絶好調の鶴田洋子のフラウト・トラヴェルソとテノールの吉田志門のアリア。とても素晴らしいです。最後は素晴らしいコラール合唱で〆。トランペットやティンパニも加わり、華やかさもありました。
今日は地味なカンタータ尽くしと思っていたら、BCJのさすがの実力で素晴らしいコンサートになりました。鈴木ファミリー(鈴木父子とそれぞれの嫁)がその中核であったことは間違いありません。
今日のプログラムは以下です。
秋のカンタータ〜大天使ミカエルの祝日〜
指揮:鈴木雅明
ソプラノ:松井亜希
アルト:青木洋也
テノール:吉田志門
バス:ドミニク・ヴェルナー
オルガン独奏:鈴木優人
合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン
J. S. バッハ:
おお主なる神よ、汝の神なる御言葉 BWV 757
プレリュードとフーガ ハ長調 BWV 545
カンタータ第47番《誰であれ高ぶるものは低くせられ》BWV 47
《休憩》
カンタータ第8番《愛する御神よ、いつ我は死なん》 BWV 8
カンタータ第130番《主なる神よ、我ら皆あなたを讃えます》BWV 130
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目の《おお主なる神よ、汝の神なる御言葉》 BWV 757は以下のCDを聴きました。
クリストファー・ヘリック 1999年4月13日-14日、聖ミカエル教区教会、 カイステン、アールガウ州, スイス セッション録音
クリストファー・ヘリックによるバッハのオルガン全集からの演奏を聴きました。よい演奏です。
2曲目のプレリュードとフーガ ハ長調 BWV 545は以下のCDを聴きました。
ヘルムート・ヴァルヒャ 1969年9月、ストラスブール、フランス セッション録音
バッハのオルガン曲と言えば、やはり、ヴァルヒャ。文句ない演奏です。これもオルガン全集からの演奏です。
3曲目のカンタータ第47番は以下のCDを聴きました。
鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン 2010年6月、神戸松蔭女子学院大学チャペル セッション録音
ハナ・ブラシコヴァ(S) ロビン・ブレイズ(C-T) 水越啓(T) ペーター・コーイ(Bs)
我が国の団体による貴重なカンタータ全集からの一枚です。演奏も最高水準です。
4曲目のカンタータ第8番は以下のCDを聴きました。
鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン 2005年4月、神戸松蔭女子学院大学チャペル セッション録音
野々下由香里(S) ロビン・ブレイズ(C-T) ゲルト・テュルク(T) ペーター・コーイ(Bs)
我が国の団体による貴重なカンタータ全集からの一枚です。演奏も最高水準です。
5曲目のカンタータ第130番は以下のCDを聴きました。
鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン 2004年5月、神戸松蔭女子学院大学チャペル セッション録音
野々下由香里(S) ロビン・ブレイズ(C-T) ヤン・コボウ(T) ドミニク・ヴェルナー(Bs)
我が国の団体による貴重なカンタータ全集からの一枚です。演奏も最高水準です。
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