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超個性のピアニスト:ポゴレリッチ@サントリーホール 2014.12.14

新しいブログサイトFC2での新記事の第2弾は昨日の夜のコンサートの感想です。
お昼のコンサートではフォーレ・カルテットの素晴らしい室内楽を満喫し、意気揚々と電車を乗り継いで、六本木一丁目へ。ちょうど、よい時間に到着。

今年最後のコンサートはやっぱりサントリーホール。今年もずい分通いました。これが今年ちょうど20回目のサントリーホールのコンサートです。

ホール内に入ると、やっぱり、ステージ上では開演前だというのにポゴレリッチが普段着姿で毛糸の帽子をかぶって、ピアノをポロンポロン弾いています。ただ、前回のように意味不明の曲ではなく、今日のプログラムにあるブラームスのパガニーニ変奏曲の練習をしているようです。同じフレーズを執拗に弾いたりしています。時折、視線を客席の上にさまよわせます。やはり、この人は変わっています。奇人と言ってもいいかもしれません。開演10分前になって前回同様、女性スタッフが呼びにきました。彼女と二声、三声交わして、未練たっぷりの様子でピアノを見やって、ステージ上を去りました。いやあ、この人変わっています。まわりのスタッフは付き合うのが大変でしょうね。

さて、本番。えらく素早くステージ衣装に着替えて登場。ばか丁寧なお辞儀で聴衆に挨拶。どの動作も常人とは違っています。

最初はリストの《ダンテを読んで(ソナタ風幻想曲)》です。最近、アヴデーエワの素晴らしい演奏で聴いたばかりの曲です。アヴデーエワの新鮮で煌めくような演奏とはまったく異なる演奏ですが、それはそれで胸にズシーンと響くような演奏です。凄くスローなテンポで分析的で、一音一音のしっかりした響きを積み上げていく構築的な演奏です。感動とかいうのとは別次元の演奏ですが、それなりに説得力はある演奏です。最後の和音をバーンと響かせて、音の城を築き上げたような感じです。ただ、音の響きが消え去ると、音の城は幻想と化してしまいます。まあ、所詮、音楽というものはそんなものでしょう。

続くシューマンの《幻想曲》も同じアプローチです。ただ、このシューマンの傑作は抒情的なロマンに満ちた曲なので、一音一音、バラバラの響きで演奏されると貴重なメロディーラインが崩れてしまいます。もちろん、そのメロディーラインは聴く者の頭の中で再構成すればよいのかも知れませんが、これが途轍もない大変な作業。大変な緊張を強いられながらの鑑賞で疲れ果てました。これはsaraiには、とても受け入れ難い演奏です。これって、一体、シューマンと言えるのか、疑問に感じます。ピアニストの個性は大事だとしても、基本的には、作曲家への敬意に満ちた演奏が必要なのではないでしょうか。ポゴレリッチには、彼なりの考え方があっての演奏でしょうが、聴く側にもそれなりの考え方がありますからね。

休憩後、ストラヴィンスキーの《「ペトルーシュカ」からの3楽章》です。これもスローなテンポではありますが、まあ、そんなに遅い印象もありません。かなり、ポゴレリッチ・マジックにはまったんでしょうか。多彩な音色の響きに満ちた演奏で、これが一番、フツーに聴けました(笑い)。以前聴いたファジル・サイの演奏などは足元にも及ばない演奏なのが、ポゴレリッチの凄いところ。やはり、ピアニストとしての才能は桁外れです。

最後はブラームスの《パガニーニの主題による変奏曲》です。これも凄い超絶技巧を駆使する曲。今日はシューマンを除いて、超絶技巧曲のオンパレード。普通はこんな凄い曲ばかりを弾くと疲れそうですが、タフなポゴレリッチは何ともなさそうです。このブラームスも気魄のこもった演奏。ただ、普通の超絶技巧ではなく、ポゴレリッチ流の音の強い響きを積み重ねていく弾き方ですから、きっと、余計に大変でしょう。この曲もブラームスのロマン性よりもピアニスティックな響きを重視した演奏ですが、ブラームスのピアノ曲もこの曲に限っては、それでもそんなに違和感はありません。晩年のブラームスの作品ならば、こんな弾き方は御免蒙りたいところですが、この曲は外面的な効果も狙った作品なので、なかなか迫力のある演奏になっています。
 
演奏が終わった後も、彼の行動は意表を突くものです。椅子から立ち上がり、聴衆の拍手に応える前に作業があるようです。まず、自分の座っていた椅子をピアノの下に押し込んで片付けます。もう弾かないぞという意思表示なんでしょう。超絶曲を3曲も弾いて、さすがに疲れたんでしょうし、普通の人の倍近い時間をかけたスローテンポの演奏で終了時刻も遅くなっていますから、アンコールはもう結構ですよ、はい。ところが彼の作業はまだ終わりません。譜面めくりの若い男性が座っていた椅子もピアノの下に押し込もうとしています。譜面めくりの若い男性が慌てて手伝おうとしてました。saraiは思わず声を上げずに笑ってしまいました。
また、馬鹿丁寧なお辞儀が続き、最後まで奇人ぶりを発揮したポゴレリッチでした。

今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:イーヴォ・ポゴレリッチ

  
リスト: 巡礼の年第2年「イタリア」から
     ダンテを読んで(ソナタ風幻想曲)
シューマン: 幻想曲 ハ長調 op.17

   《休憩》

ストラヴィンスキー: 「ペトルーシュカ」からの3楽章
ブラームス: パガニーニの主題による変奏曲 op.35

ポゴレリッチの演奏は凄いと言えば凄いのですが、閉口してしまったのも事実です。どんな曲も彼流のやりかたで押し通すので、ある意味、一本調子。作曲家の個性が死んでしまっているようにも感じます。ポゴレリッチの熱烈なファンも多いようですが、saraiは、彼の演奏を聴くのは十分堪能したので、もういいかなと思いました。一度は聴いておくべきピアニストではありますけどね。来年、アファナシエフを初めて聴きますが、同じ、スローで分析的、かつ、抽象的なピアニズムは同一の傾向です。さて、どうなることやら。

これで今年のコンサートはお終いにするつもりでしたが、とてもこれでは終われない・・・実は翌日もコンサートに出かけることにしました。それは次回、報告します。


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