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クリストフ・プレガルディエン、シューベルト三大歌曲集を歌う《美しき水車小屋の娘》 青春の残滓を熱唱 リートの森@トッパンホール 2022.10.3

クリストフ・プレガルディエンの歌うシューベルトの三大歌曲集の2夜目は《美しき水車小屋の娘》。
若い頃には、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのLPレコードを擦り切れるほど聴いたことを思い出します。楽譜を買って、なかでも気に入った曲は自分でも口ずさんでいました。でも、今日になって、クリストフ・プレガルディエンの歌唱を聴いていると、いかに自分が浅い聴き方、音楽の捉え方をしていたか、痛感しました。青春時代に恋愛をした人は誰でもこの曲の何か、甘酸っぱいような美しい感傷を感じることができるでしょうが、もっと深い人生の挫折感や絶望までを今日、初めて聴き取れました。この作品も根っこは《冬の旅》の暗い絶望とつながっているのですね。予習で聴いたクリストフ・プレガルディエンのCDの歌唱は普通のものに思えました。今から15年前の録音ですが、彼はこの15年間で実に深い歌唱に熟成したようです。どの曲も細部まで磨き上げられた完璧とも思える歌唱に驚愕して聴き入りました。

今日は休憩なしで全曲、通しで歌われます。前半は若者が水車小屋の娘に恋焦がれていく様を歌っていきます。青春のロマンですが、底流には何か暗い予感が渦巻いています。そこをクリストフ・プレガルディエンは微妙なニュアンスで歌い上げていきます。強い声と美しい高音を織り交ぜての熱唱です。そして、後半の恋敵の狩人に水車小屋の娘を奪われて、絶望に至るところに差し掛かります。音楽が深遠に落ちていきます。シューベルトの何と言う才能でしょう。音楽でここまで人生の深遠が語り尽くせるのでしょうか。
第16曲以降の5曲は涙なしには聴けません。第16曲 好きな色 はクリストフ・プレガルディエンが急に歌っている途中でピアノに歩み寄り、ミヒャエル・ゲースに目くばせして、救いを求め、ミヒャエル・ゲースが声を出して歌います。歌詞が混乱したようです。よく状況は分かりませんが、歌はちゃんと歌っていて、むしろ、音楽的精度は上がったように思えます。この二人の相棒的な音楽協業の結果、どうしようもないくらいの深い絶望感が表現され、saraiは途轍もなく感動し、涙を禁じ得ません。この曲は3節から成りますが、3節目の深い絶望と哀感はどこまでも深く暗い穴に落ちていくようです。それでいて何と美しい歌なのでしょう。シューベルトが書いた物凄い歌をクリストフ・プレガルディエンが何かに取り憑かれたように歌い尽くします。次の第17曲 いやな色 もさらに絶望感が増します。そして、第18曲 しぼめる花。傑作中の傑作です。美しく哀しい歌をクリストフ・プレガルディエンは語るように歌います。何と素晴らしいことか。第19曲 粉ひきと小川。若者は絶望して、小川に身を投げます。ここはそんなに劇的ではなく、そっと思いやるような調子で歌われます。哀しく絶望的な終わりです。最後の第20曲 小川の子守歌。これは哀しい運命の若者を慰撫するような音楽。バッハ的に言えば、コラールですね。優しい子守歌を聴いていて、深く深く感動しました。

こんな素晴らしい美しき水車小屋の娘を聴いたことがありません。明後日の冬の旅はどこまで深く暗い歌唱になるんでしょう。


今日のプログラムは以下です。

  テノール:クリストフ・プレガルディエン
  ピアノ:ミヒャエル・ゲース

  シューベルト:美しき水車小屋の娘 D795
   第1曲 さすらい Das Wandern
   第2曲 どこへ? Wohin?
   第3曲 止まれ! Halt!
   第4曲 小川への感謝の言葉 Danksagung an den Bach
   第5曲 仕事じまいの集いで Am Feierabend
   第6曲 知りたがり屋 Der Neugierige
   第7曲 もどかしさ Ungeduld
   第8曲 朝の挨拶 Morgengruß
   第9曲 粉ひきの花 Des Müllers Blumen
   第10曲 涙の雨! Tränenregen
   第11曲 僕のもの Mein!
   第12曲 休み Pause
   第13曲 リュートの緑色のリボン Mit dem grünen Lautenbande
   第14曲 狩人 Der Jäger
   第15曲 嫉妬と誇り Eifersucht und Stolz
   第16曲 好きな色 Die liebe Farbe
   第17曲 いやな色 Die böse Farbe
   第18曲 しぼめる花 Trockne Blumen
   第19曲 粉ひきと小川 Der Müller und der Bach
   第20曲 小川の子守歌 Des Baches Wiegenlied

   《休憩》なし

   《アンコール》

  シューベルト:白鳥の歌 D957より 第1曲 愛の言づて
  シューベルト:それらがここにいたことは D775
  シューベルト:憩いのない恋 D138
  シューベルト:さすらい人の夜の歌2 D768


最後に予習について、まとめておきます。

シューベルトの美しき水車小屋の娘を予習したCDは以下です。

  クリストフ・プレガルディエン、ミヒャエル・ゲース 2007年10月6-8日、ベルギー、モル、ギャラクシー・スタジオ セッション録音

この曲はやはり、テノールがいいですね。最近の録音ではこれが一番でしょう。



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ジャンル : 音楽

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