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ジョナサン・ノットの見事な指揮で東京交響楽団がストラヴィンスキー、シェーンベルクを会心の演奏@東京オペラシティコンサートホール 2022.10.9

昨日もほぼ、同内容の演奏を聴きましたが、今日は昨日を大きく上回る演奏に大いに感銘を受けました。

まず、素晴らしかったのは、1曲目のストラヴィンスキーのダンス・コンチェルタンテ。舞台上に並ぶメンバーを見て、あっと驚きます。いつもは前面に弦楽器奏者が並びますが、右手の前面には管楽器奏者が並びます。最前列の中央には、オーボエの荒木奏美が座り、どこか恥ずかしそうな気配です。彼女の横はフルートの相澤政宏。管楽器奏者は首席奏者たちだけがずらっと並んでいます。基本、一つの管楽器は一人ずつです。弦楽器は中央から左方に並びます。ヴァイオリン6人、ヴィオラ4人、チェロ3人、コントラバス1人、トップ奏者たちです。東響の達人たちのみが室内オーケストラを構成しています。
演奏は何とも精度の高いもの。それをジョナサン・ノットが見事な指揮で捌きます。さすがにアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督として、現代音楽の経歴を積んだ実力が発揮されます。この曲はストラヴィンスキーの新古典主義の作品ですが、東響の小気味よい演奏は来るべきジョン・アダムズのモダンな音楽を連想させます。この新古典主義の多彩な響きがミニマリズムに変われば、もうジョン・アダムズの世界ですね。少人数とは言え、弦楽アンサンブルは素晴らしい響きです。管楽器は各奏者が次々にメロディーを見事な響きでつないでいきます。いやはや、素晴らしい精鋭メンバーの室内オーケストラが見事に機能しています。この室内オーケストラでほかの曲も聴いてみたいと思っているうちにこの曲が閉じます。

次はシェーンベルクの弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲。昨日も聴きましたが、昨日はこのヘンデルの合奏協奏曲作品6の第7番変ロ長調を編曲したものにしては、ヘンデルの透明な美しさがなくて、満足できませんでした。ただ、この作品はヘンデルの作品を自由に編曲、発展させているもので、単なる編曲ではありません。この作品はシェーンベルクがヘンデルの作品にインスピレーションを得て書いたシェーンベルクの世界と思って、聴き直すことにします。すると、今日の演奏は実に素晴らしく、ちゃんとヘンデルの音楽も聴こえてきて、その上にシェーンベルクの音楽も重なって聴こえてきます。弦楽四重奏が小さな弦楽アンサンブルになって、さらにバックの大きな弦楽アンサンブルと2重構造のような不可思議な音楽になっているところがシェーンベルクが創造した世界です。時折、不協和音も織り交ぜながら、ヘンデルの音楽を拡張して再創造したような、バロックともモダンとも思える複雑で精妙な世界に魅了されていきます。弦楽四重奏は専門の団体を起用せずに東響のメンバーをピックアップしたことも弦楽アンサンブルの2重構造を作る上で同質性を確保することに成功しているように感じます。それに弦楽四重奏を構成する4人の演奏の見事なこと。両サイドのヴァイオリンの見事な演奏に聴き惚れました。まあ、こういう複雑なシェーンベルクの音楽では、ジョナサン・ノットの知的で精密な指揮がとても素晴らしいです。これもアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督としての経歴を思い起こさずにはいられません。いずれにせよ、昨日の演奏とはまったくレベルが異なるように感じましたが、それはsaraiの聴き手としての問題だったのでしょうか。

休憩後、後半はモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲です。普通はピアノ協奏曲第10番とも呼ばれています。これも昨日も聴いた曲です。気のせいか、出だしから、今日は東響のアンサンブルが冴え渡り、素晴らしいモーツァルトの音楽を奏でていきます。あまりに素晴らし過ぎて、このまま、ピアノなしの演奏を聴いていたいと思うほどです。モーツァルトを指揮するときのジョナサン・ノットはちょっとお尻を突き出して、敏捷にタクトを振る様がまるでモーツァルト自身であるように感じてしまいます。無論、モーツァルトの指揮などは現代の誰も見たことはないわけで、これは単なる錯覚、思い込みですが、それほど、ぴったりとはまっています。
そうこう思っているうちにピアノ・デュオのPiano duo Sakamoto(坂本彩・坂本リサ)の二人の演奏が始まります。何故か、今日はピアノのタッチがよく聴き取れて、実に歯切れのよいピュアーなタッチであることが分かります。もしかして、ノンペダルなのかと思って観察すると、ちゃんとペダルを踏んでいます。よほど、ペダルの踏み方が適切なようで、モーツァルトに最適な切れのあるピュアーな響きで、なおかつ、ホールによく響き渡る音量も確保しています。二人の息もぴったりで音の方向性が分からなければ、どちらが弾いているか、分からないほどです。saraiの席は最前列中央なので、左右の聴き分けはできるんです。実に見事なピアノで失礼ながら、お二人で活動しているのがもったいないくらいです。ソロでモーツァルトのピアノ協奏曲を弾いてもsaraiは十分に満足できるようなレベルの演奏です。特に第1楽章と第3楽章はピアノも素晴らしく、オーケストラも素晴らしく、モーツァルトの世界を堪能しました。

今日はジョナサン・ノットの素晴らしさを再認識しました。今月、来月、再来月と立て続けにジョナサン・ノットと東響のコンサートが続くので、ワクワクします。とりわけ、R.シュトラウスの楽劇《サロメ》は今年のエポックメーキングな演奏になりそうな予感がします。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット(東京交響楽団 音楽監督)
  ピアノ・デュオ:Piano duo Sakamoto(坂本彩・坂本リサ)
  弦楽四重奏
   第1ヴァイオリン:小林壱成(東京交響楽団コンサートマスター)
   第2ヴァイオリン:服部亜矢子(東京交響楽団首席第2ヴァイオリン奏者)
   ヴィオラ:武生直子(東京交響楽団首席ヴィオラ奏者)
   チェロ:伊藤文嗣(東京交響楽団ソロ首席チェロ奏者)
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃

  ストラヴィンスキー:ダンス・コンチェルタンテ
  シェーンベルク:弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲 変ロ長調(ヘンデルop.6-7による)

  《休憩》

  モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲 変ホ長調 K.365(316a)

  《アンコール》なし



最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のストラヴィンスキーのダンス・コンチェルタンテを予習したCDは以下です。

 ロバート・クラフト指揮20世紀クラシック・アンサンブル 1999年 ニューヨーク州立大学パーチェイス校 セッション録音

シェーンベルク、ヴェーベルン、恩師ストラヴィンスキーのスペシャリストとして名高いロバート・クラフトによる演奏です。


2曲目のシェーンベルクの弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲を予習したCDは以下です。

 フレッド・シェリー四重奏団、ロバート・クラフト指揮20世紀クラシック・アンサンブル 2002年10月 セッション録音

ロバート・クラフトはシェーンベルクでもさすがの指揮です。


3曲目のモーツァルトの2台のピアノのための協奏曲を予習したCDは以下です。

 マレイ・ペライア、ラドゥ・ルプー、イギリス室内管弦楽団 1988年 セッション録音

2人のピアノが美しい演奏です。



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       ジョナサン・ノット,

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aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai

DCHは私も毎週末、楽しみに聞いています。
・スーパースターには、ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲルトの名も挙げたいところです。
・清水直子さん後半のみ登場、D

03/01 19:22 aokazuya

金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai
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